会社売却を売り手側の立場で解説します。納得できる売却を行いたいオーナー経営者様に必見の情報をまとめました。会社売却の方法・手続きの流れ・気になる相場の計算方法、株式譲渡と事業譲渡の場合の違いも分かりやすく解説します。
会社売却とは?
会社を第三者に売却することをいいます。会社売却には代表的な手法として、会社全体を売却する「株式譲渡」と、特定の事業のみを切り出して売却する「事業譲渡」があります。
「M&A」は合併・買収を意味しているため、買い手企業側の目線に立った言葉ですが、「会社売却」はM&Aを売り手の目線から見た言葉です。
会社売却の相場・企業価値算定
M&Aスキーム(方法・手法)による相場の違い
会社売却では、会社全体を売却する「株式譲渡」の方が、特定の事業のみを売却する「事業譲渡」よりも売却金額が相場の金額は高くなりやすい手法であるといえます。
株式譲渡は会社全体の株式を売却するので、売買対象は「会社」になります。一方で、事業譲渡は特定の「事業」のみを売買する取引になります。
事業が5つある会社であれば「株式譲渡」では5つの事業全てを含む会社全体が売買対象になりますが「事業譲渡」では1つの事業だけが売買対象となる場合もあります。
このようにM&Aによる売却高の相場は株式譲渡が高くなりやすい手法となります。
実際に売却価格を決めていくには価値算定を経て企業価値を評価していきます。
価値算定方法には様々な手法があり、計算方法が異なります。
推定売却価格の参考例(コストアプローチで算出した場合)
中小企業等の比較的規模が大きくないM&A取引では、コストアプローチという手法で簡易的に推定価値を算出する方法があります。将来の経済的収益を得るために必要なコストを、無形資産(のれん)の価値とする方法です。
実際の売却価格計算例
株式譲渡と事業譲渡の場合で算出方法が異なります。
株式譲渡の場合:純資産+(営業利益+役員報酬)*2(年)
例)純資産=2,000万円、営業利益=1,000万円、役員報酬800万の場合、
推定売却価格=5,600万円
事業譲渡の場合: 事業資産+事業利益*2 (年)
例)事業資産=2,000万円、事業利益1,000万円の場合、
推定売却価格=4,000万円
となります。他には以下の算出方法があります。
マーケットアプローチ
市場で取引されている、取引対象に似た無形財産(のれん)の取引金額を調査し、評価する方法です。
インカムアプローチ
対象となる無形資産(のれん)の将来のキャッシュフロを現在価値に割り引く方法です。
会社売却の方法・種類
会社売却にも様々なスキーム(方法・手法)が存在します。どのスキームを選択するかによって、オーナー経営者の手取り額や、かかる税金、手続きにかかる手間などが変わってきます。ここでは代表的な会社売却の方法を紹介します。
株式譲渡での会社売却
株式譲渡は会社売却の中でも最も代表的な手法です。
株式譲渡とは、売却会社の株主が主体となり、保有する株式を、第三者に売却する取引のことです。

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事業譲渡での会社売却
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会社売却にかかる税金とオーナー経営者の手取り額
売却企業の経営状態によってどのスキームが最適かは異なります。
「売却会社のオーナー経営者の手取り額」を基準に比較すると、原則的には売却会社のオーナー経営者にとっては「株式譲渡」が手取り額は増える可能性が高いと考えられます。
株式譲渡の売却額への税金
例えば、株式譲渡で会社を売却した場合、課税金は全体の約20%(所得税・住民税等)となります。株式売却価格 - 税金(約20%)がオーナー経営者の手取額となり、シンプルに金額のイメージができます。
事業譲渡の売却額への税金
一方で、事業譲渡の場合はまず売却対価が法人に入り、その時点で35%前後の法人実効税率がかかります。更に売却対価を法人から個人に移そうとすると、20%近くの配当課税等が課されます。
ただし、売却会社に多額の欠損金がある場合には、事業売却で得た所得とその損金を相殺させることで、課税所得を低減させて法人税率を低減させる等の節税が可能です。
また、事業譲渡で得た売却益を法人に残したいという場合は、相対的に事業譲渡を選択するメリットが高まります。
会社売却の手続き・流れ
ここでは会社売却でよく用いられる株式譲渡での一般的な手続きの流れを、売却側の立場で紹介します。
- 売却意思の発生
- 準備
- 相手先のソーシング・交渉
- 秘密保持契約の締結(NDA)
- 案件概要書(IMの提示)
- トップ面談
- 基本合意書の締結
- 買い手によるデュー・ディリジェンスの実施
- 売り手・買い手間の条件交渉
- 株式譲渡契約の締結
- 株式譲渡の実行(クロージング)
1. 売却意思の発生
売却側企業の中で売却意思が発生します。
主な理由は「後継者の不在」「事業の選択と集中」「不採算事業の精算」「負債の返済」等です。
2. 準備
今後必要になる資料を予め準備しておくことで、スムーズに交渉が進みます。
過去三期分の決算書があれば基本合意までの交渉がスムーズに進むでしょう。
3. 相手先のソーシング・交渉
売却先となる相手を探します。税理士や公認会計士などの専門家の他にも、地銀・信金等の金融機関、公的な窓口として全国に設置されている事業引き継ぎ支援センター、M&A仲介会社等があります。
最近では売り手側の手数料が無料のM&Aプラットフォームを利用するパターンも増えています。
4. 秘密保持契約の締結(NDA)
相手先が見つかった場合、交渉前に秘密保持契約を締結します。
交渉でやり取りする情報は、本来非公開の情報のため、相互に秘密保持の義務を負う契約を締結し、その後に交渉を開始します。
5. 企業概要書(IMの提示)
企業概要書(IM Information Memorandum)ではノンネームシートには記載されていない、よりハイレベルな企業情報を買い手側に伝えます。買い手側はこの情報を元に、意向表明書などで想定価格や基本条件を売り手側に打診します。そこでお互いに更に交渉を進める意思が確認できれば、トップ面談へと進みます。
6. トップ面談
トップ面談では、細かい条件面のすり合わせというよりも、お互いの企業文化や経営者同士の考え方を確認します。M&Aの流れの中でも経営者同士が顔を合わせる機会は意外と少なく、重要な機会となるため、お互いに気心を交わす重要な機会となります。
7. 基本合意書の締結
ここまでの流れで基本的な条件にお互いが合意できれば、基本合意書の締結となります。
今後、お互いに多額な費用や労力をかけて企業価値の詳細な確認に入ります。
それ以前に、基本的な条件である譲渡価格や、譲渡の意向を確認するために基本合意書が結ばれます。
この時点では、買い手企業が、売り手企業の詳細な情報は把握しきれていないため、基本合意書では法的な拘束力を持たないこと(売り手・買い手ともに法的な責務や賠償なく取引を中止できる)とされるのが一般的です。
8. 買い手によるデュー・ディリジェンスの実施
基本合意書が締結された後に、買い手側によるデュー・ディリジェンスが実施されます。
デュー・ディリジェンスでは、売り手側から会計・税務・法務・事業に関する情報開示があり、それらを精査し、実態を把握し、潜在リスク等を分析します。この分析を元にいくらで売却するか価値算定が行われます。
9. 売り手・買い手間の条件交渉
デュー・ディリジェンスの結果を元に、売り手と書いての間で、株式譲渡契約の締結に向けて条件交渉が行われます。デュー・ディリジェンスでこれまで開示されていなかったリスク等が判明すれば、ここで譲渡価格の値下げ要求が起きることもあります。
10. 株式譲渡契約の締結
条件交渉が全て完了し、両者間で合意に至れば、株式譲渡契約が締結されます。この契約は、基本合意書の締結とは違い、法的拘束力を持つ契約になります。
11. 株式譲渡の実行(クロージング)
株式譲渡契約が締結された後は、株式譲渡の実行(クロージング)に向けて、売り手・買い手それぞれの履行義務が課せられた事項を実施していきます。
デュー・ディリジェンスで判明したリスクを低減させるような行為や、買収資金の準備など、株式譲渡を実行するために行うべきことがあるため、実際の株式譲渡実行までに一定期間を設けるのが一般的です。クロージングを行うための準備や条件が全てクリアになれば、株式譲渡が実行され、売り手側に譲渡代金が支払われます。

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会社売却のメリット
会社を後継者に引き継ぐことができる
後継者不在で事業を継続することが困難な局面において、会社売却という戦略を取ることで外部から後継者を探し出すことができます。
株式譲渡の場合、法人名を残して会社を第三者に引き継ぐことができます。従業員の雇用や条件面も守ることができます。
創業者等の株主が売却利益を得られる
企業価値が第三者から評価を受けることができれば、その対価として売却利益を得ることができます。
会社を倒産から救える
会社に負債がある場合、株式譲渡であればその負債ごと譲り受けてもらうことができます。
事業譲渡の場合は、現金化できる部門のみを売却することで、負債の返済にあて、財務状況を健全にした後に、注力事業や新規事業に投資することができます。
個人保証を解除できる
経営者保証ガイドライン(中小企業庁が平成26年2月施行)を利用すれば、一定の条件下において、経営者が負担していた個人保証を解除することができます。
会社売却のデメリット
競業となるビジネスが一定期間できなくなる
M&A取引の中で競合となる事業をしないよう規定される場合があります。
事業譲渡の場合は、会社法21条で競業避止義務が明記されているため、一定区間内において、20年間は同一の事業を行ってはならない取り決めとなっています。
売却後も一定期間は事業に拘束される
とくに事業譲渡の場合、譲渡契約の実行は経営者同士の合意だけでは終わりません。
取引先や従業員など、事業に関わる全ての契約を、売却先の会社が新たに契約し直さなければなりません。こういった関係者との調整には創業者の協力が必要不可欠となります。そのため、事業譲渡が決定したものの、その事業にかかわる契約が多ければ多いほど、手続きが完了するまでに数年間かかる場合もあります。
また、株式譲渡であっても売却会社の事業がスムーズに引き継げるよう、会社に一定期間残ることを明記するケースがあります。
会社を売却した後の寂しさ
オーナー経営者がある程度の規模の会社をイグジット(売却)した後、寂しさを感じるという声があります。とくに売却した経営者が会社に残らない場合この傾向が顕著に現れます。こういった寂しさや、人生のやりがいが無くなってしまうという経営者は少なくありません。そのために、売却利益を元に何をやるのかを並行して考えておくと、スムーズに次の人生のステップへ進めるでしょう。
会社売却の成功事例
インターネットだからこそ実現したスピードマッチング。最初のメッセージから1ヶ月でM&Aが実現
- 譲渡企業:有限会社スニタトレーディング 様
- 譲り受け企業:株式会社ゴーゴーカレーグループ 様
株式会社ライフ・コーポレーション様は、愛知県にて主に施設常駐警備事業を展開し、多くの顧客に高品質のサービスを提供している会社です。
しかし、後継者不足などの理由による事業承継の課題は同社にとって大きくなっていました。
そのような中で今回、ビズリーチ・サクシードを通じ、同じ愛知県に拠点を置く人材サービス企業、株式会社日輪様とのM&A成約に至った経緯と、今後の事業展望などを伺いました。

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譲渡企業は、ビズリーチ・サクシードに、会社や事業の概要を匿名で登録でき、譲り受け企業は、その情報を検索して閲覧できます。
これにより、譲渡企業は経営の選択肢の一つとして事業承継M&Aを早期から検討できるため、経営者の選択肢が広がります。
譲渡企業は、登録から案件成約時まで、本プラットフォームの利用料は完全無料です。そのため、コストを気にせず、企業や事業の譲渡を安心して検討できます。
また、譲渡企業から相談を受けたM&A仲介会社や金融機関等も、同様に本プラットフォームを無料で利用できます。
譲り受け企業は興味をもった譲渡企業へ直接アプローチできるため、譲渡企業にとっては、潜在的な資本提携先の存在や、自社の市場価値を把握するきっかけになります。
2017年11月下旬にサービスを開始し、2020年8月現在、全国の譲渡案件は累計6,300件以上(公開中2,600件以上)登録され、累計譲り受け企業は5,600社以上です。事業承継M&Aプラットフォームにおいて日本最大級の譲渡案件数となっています。