会社を売りたい方は必見。会社売却のメリットや手続きを徹底解説

後継者不足などを理由に、会社を売りたいと考える方が増えています。会社を売ると、利益獲得などのメリットを得られます。会社を売りたい経営者の方に、会社売却のメリットや手法、手続きを詳しく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)

会社 売り たい(FV)

目次
  1. 会社を売ることで得られるメリット【廃業と徹底比較】
  2. 会社を売りたい経営者が注意すべきデメリット
  3. 会社を売りたいときに用いる手法
  4. 会社を売りたい場合の手続き・流れ
  5. 経営者が会社を売りたいと考える理由
  6. 会社を売りたい経営者が知っておくべきポイント
  7. まとめ

会社を売ることで得られるメリット【廃業と徹底比較】

まずは会社を売却することで得られるメリットについて、廃業と比較しながら解説していきます。

会社を売るメリットは以下の5つです。

  1. まとまった金額の現金を獲得できる
  2. 後継者がいない企業でも事業承継を行える
  3. 個人保証を解除できる
  4. 業務の忙しさから解放される
  5. 更なる事業の成長を実現できる

まとまった金額の現金を獲得できる

まず得られるメリットの一つが会社を売却することでまとまった金額を得られることがあげられます。
まとまった資金は次の事業展開に必要な資金、老後の資金など
さまざまな用途に使うことができます

売却金額は会社の業績や財務状況、また、規模によって異なりますが、数千万円から数億円になることもあります。
当初の投資資金と売却金額の差額がプラスであれば、譲渡益として所得税と住民税、20.315%の税率がかかります。

税金がかかったとしても概ね20%を控除した売却金額の80%程度の資金が手元に残ります。
この残った資金は先述した用途に使うことができるのです。

後継者がいない企業でも事業承継を行える

現在、日本の社会は少子化が進んでいます。
その結果、経営者が会社を事業承継しようとしたタイミングで
後継者がいないということが起きています

また、経営者や経営者の子供の価値観も変化してきています
経営者は子供に自分と同じ思いをさせたくないと考え、また子供側も親の会社を引き継ぐことが当たり前ではなく、親と違う仕事を選択するという価値観に変化しています。
その結果、後継者がいない企業が増加しています。

会社を売却すればこれらの問題は解決され、後継者がいない企業でも事業承継を行うことができます。

個人保証を解除できる

会社を運営していると会社の債務に対して個人保証を設定されることがあります
会社が金融機関などから融資を受ける時に連帯保証が求められ、会社経営者が個人保証として設定されます。
連帯保証は、金融機関から支払請求された場合には会社とともに支払う必要が出てきます。

個人保証は、新規の事業展開をできないことや自分自身の生活にリスクを及ぼす可能性があるなど、経営者にとって負担となります
また、このような事情の中で、会社を親族などに引き継がせることは難しく、
足かせになってしまいます

会社を売却すると、個人保証も含め、買い手企業に引き継がれることが一般的で、個人保証から解放されることになります。
個人保証が設定されている場合には、会社売却することで得られるメリットの一つとなります。

業務の忙しさから解放される

解放されることがよいか悪いかは個人によって異なりますが、会社を売却するとそれまでの業務から解放されることになります

会社を作って、自分の好きな業務であっても、年齢を重ねるごとに重荷になってしまうこともあります。
また、規模が大きくなると、従業員を雇ったり、取引先との取引も多くなったりと
さまざまな人の生活に影響します。
これらは
経営者にとって重たい責任となってしまいます。

会社を売却するとこれらの重荷や重積から解放され、次のステップへ進むことも可能となります。

更なる事業の成長を実現できる

会社を売却することで買い手企業の下で更なる事業の成長ができる可能性があります。
それは
資金面でもノウハウ面でも、また、人や設備などの面でも補完してもらえる可能性があるからです。

また、買い手企業が同様の事業を営んでいれば、販路や技術などさまざまな面でシナジー効果が期待できます。
会社を売却することで、これらの効果を活用でき、事業の成長に向けてのメリットを得ることができます。

M&A・事業承継
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会社を売りたい経営者が注意すべきデメリット

一方で、会社を売ることでいいことだけではありません。
次にデメリットを解説していきます。

競業避止義務を負うリスクがある

会社を売却するタイミングで契約書を締結することになりますが、その中の条項で必ずと言っていいほど入ってくるのが競業避止義務です。
ここでいう競業避止義務とは、
売却した会社の競合するような事業を行なってはいけないという義務となります。

要は同じ事業を売り手側の経営者がやってしまうと買い手企業が不利益を被る可能性があるため、同様の事業は行なってはならないとされるのです。

また、契約書に当該事項がなかったとしても、事業譲渡の場合はさらに注意が必要です。
会社法において同一あるいは隣接の市区町村の区域内で譲渡事業と同一の事業を20年間行うことができないとされているため、事業譲渡で会社を売却する場合にはこちらも注意が必要となります。

これらのリスクは新たに事業展開を検討している場合に留意が必要となりますが、特段予定がなければ問題とはなりません。

ロックアップにより、自由が制限される場合がある

ロックアップとは、別名キーマン条項とも呼ばれ、売却後も一定期間売却される会社で働かなければならないことを指します。
売却されることで売却された企業の事業がうまくいかなくなることを防ぐために設定されるのですが、
引退したい場合や新たに事業展開をしたい場合などにとってはネックとなります。

そのため、当該条項を外した上で契約を進めたいと考えますが、外すことで売却金額に影響するケースなどもあり、なかなか外すことはできません。
一から事業を開始して自由にやってきた経営者にとっては拘束されることが苦痛となりますが、上述の話もあるので交渉の中でうまく解決していく必要があります。

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会社を売りたいときに用いる手法

会社を売ることのメリット・デメリットを見てきましたが、次に具体的な手法を解説していきます。

M&Aの種類

株式譲渡

会社を売却する場合に代表的な手法なのが株式譲渡です。

株式譲渡株式譲渡とは、売却対象の会社の発行済株式を他者に譲渡することで、会社を売却することとなります。
M&Aの中でもよく用いられる方法となっています。

株式譲渡を用いるメリット及びデメリットは以下の通りとなります。

メリット

  • 株主総会や債権者保護手続など、法的手続きが簡便
  • 売却企業の独立性を維持しやすい(売り手)
  • 反対株主がいても柔軟な対応が可能(買い手)

デメリット

  • 売却企業の独立性が高く、シナジー効果が発揮しやすい(買い手)
  • 簿外債務を引き継ぐ可能性(買い手)
  • 株式を買い集めることができない可能性(買い手)
M&A・事業承継
株式譲渡とは?メリット・手続き・契約・税金を税理士が解説

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事業譲渡

株式譲渡と比較されることが多いのが事業譲渡です。

事業譲渡

事業譲渡とは、組織化された有機一体として機能する財産の全部または一部を他者に譲渡することで、会社を売却する方法となります。

事業譲渡を用いるメリット及びデメリットは以下の通りとなります。

メリット

  • 不要な資産を引き継がなくて良い(買い手)
  • 簿外債務を引き継がない(買い手)

デメリット

  • 手続きに時間がかかる
  • 税制優遇がない
  • 競業避止義務を負う(売り手)
M&A・事業承継
事業譲渡とは?メリット・手続き・流れ【図解で分かる】

事業譲渡とは、会社がある事業の全部または一部を譲渡することをいいます。企業全体を売買対象とする株式譲渡と違い、譲渡対象の事業を選べるのが特徴です。M&Aの代表的な手法のひとつです。この記事では、事業譲渡の意義、株 […]

会社分割

会社分割には、新設分割と吸収分割の2つの方法があります。

会社分割

新設分割とは、1または2以上の会社が分割する事業で有する権利義務の全部または一部を分割により新たに設立する会社に承継させる組織再編のことをいいます。
一方、吸収分割とは、
1または2以上の会社が分割する事業で有する権利義務の全部または一部を分割により他の会社に承継させる組織再編のことをいいます。

会社分割を用いるメリット及びデメリットは以下の通りとなります。

メリット

  • 買収資金が不要(買い手)
  • 契約関係の移転手続きがシンプル
  • 個別同意が不要
  • シナジー効果を得やすい(買い手)

デメリット

  • 買い手企業の株主構成が変化(買い手)
  • 現場への負荷が重い(買い手)
M&A・事業承継
会社分割とは?吸収分割・新設分割の違い、手続き、事例を解説

会社分割は事業の一部もしくは全部を、他の会社に承継させることをいいます。新設分割と吸収分割の方法があります。この記事では会社分割の意味、手法の特徴、メリット・デメリット・手続きの流れ・事例を解説します。   目 […]

株式交換

株式交換とは、完全子会社(売り手企業)となる会社の株主が保有している株式を完全親会社(買い手)となる会社の株式と交換する方法をいいます。
当該手法を用いることで売り手企業が買い手企業の完全子会社となります。

M&A 株式交換(FV)

株式交換を用いるメリット及びデメリットは以下の通りとなります。

メリット

  • 買収資金が不要(買い手)
  • 少数株主を排除しやすい(買い手)
  • 早急な経営統合が不要(買い手)

デメリット

  • 買い手企業の株主構成が変化(買い手)
  • 売り手は引退のため、会社の売却を選択しても株式を売却できない(売り手)
M&A・事業承継
株式交換とは?メリット・デメリットや手続きを解説【事例付き】

株式交換は売り手企業の全株式を買い手企業の株式と交換し、親会社・子会社の関係を作り出すM&A手法です。株式交換の仕組みや株式移転との違い、メリット・デメリット、手続き・事例について図解でわかりやすく解説します。 […]

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M&Aのスキーム(手法)には多くの種類があります。目的にあわせた方法を選ぶことで、利益を最大化することができます。今回は各スキームごとの特徴・メリット・デメリット・かかる税金・成功事例を解説します。 目次M&am […]

会社を売りたい場合の手続き・流れ

会社を売却する場合の具体的な手続きや流れを解説していきます。

M&Aのプロセス

準備フェーズ

まずは準備フェーズとなります。

目標設定、戦略の策定

会社を売却することを決めたら、売却にあたって具体的な目標を設定して、会社の売却戦略を策定していきます。

具体的な目標や戦略がなければ、M&A成立までたどりつけない可能性が出てきます。
また、たどりついたとしても適切な相手先を選べない場合やうまく売却が進まない場合などの失敗するリスクが出てきてしまいます。
そのため、
後継者の獲得、ブランドや雇用の維持など具体的な目標を設定する必要があります

また、なぜ会社を売却するのか、今後の会社をどのようにしていくのか、また、どのような相手先に売却して成長する絵姿にするのかなどの戦略も策定する必要があります

目標や戦略を策定することで今後の進め方のメルクマールとなり、スムーズに進めることができるのです。
目標の設定や戦略の策定ができれば、次のステップに進んでいきます。

M&A・事業承継
M&A戦略とは?策定の流れと成功のポイント【事例付き】

M&Aを成功させるためには売却・買収後を視野に入れた戦略が必要です。M&A戦略の重要性、策定の流れ、売却側・買収側それぞれの戦略の要点と注意点を解説し、成功事例を紹介します。  目次M&A戦略策定 […]

M&A業者の選定

具体的な目標の設定や戦略の策定が終われば、具体的にM&Aを進めていくことになります。

M&Aを進めるにあたっては専門知識や豊富な経験が必要となります。
その際に活用できるのが
M&A業者となります。
M&A業者には、FA(ファイナンシャルアドバイザリー)をはじめとして、DD(デューデリジェンス)やPMI(経営統合)などの業務を依頼することになります。

FAではM&A全般の業務を依頼することで相手探しなどの業務を行ってもらうことができます。

M&A・事業承継
M&Aアドバイザリーとは?業務内容、手数料、仲介会社との違い

M&Aアドバイザリーとは、M&Aの専門知識を持ち、M&Aによる利益最大化の為に助言を行う業態を指します。今回はM&Aアドバイザリーの業務内容、成約時に支払う手数料、M&A仲介会社と […]

M&Aの相手探し

M&Aにおいて相手企業を探すことは大変な業務となります。

売り手企業は売却先候補の企業をリストアップし、適切な売却先を絞っていきます
売却先候補については、ロングリストやショートリストと呼ばれるリストを作成し、自社の希望にあった会社に絞り込んでいくことになります。
FAや仲介会社に業務を依頼することでこれらのリストを作成してもらうことで、スムーズに売却先を選択することができます。

売却先が選択できれば、売り手企業はノンネームシートと呼ばれる会社の概要、売却目的、売却金額規模などが記載されたものを作成します。
売却先にFAや仲介会社を通じて持ち込んでもらい、興味のある会社を探していきます。

興味のある会社が出てくれば、NDA(秘密保持契約書)を締結してより詳細な情報が記載されたIM(インフォメーションメモランダム)が提示されることとなります。
売り手企業の概要や組織、雇用状況、財務データ、事業計画などの情報から暫定的な分析を行い、本格的な交渉に進むかを検討します。

本格的な交渉に進む会社が出てくれば、次ステップに進んでいきます。

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M&Aにおけるソーシングの重要性【業務内容・手順も徹底解説】

M&Aのソーシングとは、M&Aの相手候補を探し出し、交渉を進めるまでのプロセスです。今回は、M&Aの成功に不可欠なソーシングについて、重要性や進め方、業務内容などをくわしく解説します。(公認会計士 […]

交渉フェーズ

相手先が見つかると交渉フェーズに入っていきます。

基本条件交渉

相手先が見つかると基本条件の交渉がスタートします。
買い手側と基本条件について交渉を行い、話がまとまれば基本合意書の締結に進んでいきます。

スキームの選択

相手先の意向や金額感などを考慮しながら、売却スキームを検討していきます。
あくまで暫定的に決めるものでこの先のプロセスを経て変更されることもあります。

上述の通り、スキームについてはさまざまな方法があり、それぞれのメリット・デメリットを勘案しながら、選択されます。
法務面や税務面などに影響があるため、弁護士や税理士などに相談しながら進める方がよいでしょう。

スキームが決まればある程度の金額感が固まり、金額感とともに基本条件の検討が進んでいきます。

トップ面談

トップ面談は実際に経営トップ同士が面談を行うことで、それぞれの経営に対する考え方、売却後のビジョンなどを話し合う場となります。

売却後のビジョンが異なるとそれぞれにとってうまくいかなくなる可能性もあるため、それぞれの考え方などを意見交換することでさらなるステップに進んでいくか検討を進めます。

意向表明書の提出

スキームや金額感、基本条件などが固まり、トップのビジョンに違和感などがなければ意向表明書の提出に進みます。
必ずしも意向表明書が提出されるとは限りませんが、買収に進んでいくのかどうかについては伝えられることとなります。

買収意向があるのであれば、提出された条件を元に売り手企業と交渉するかを検討し、継続するのであれば次のステップである基本合意へと進んでいきます。

基本合意書の締結

意向表明書が提出され、交渉が進み、ある程度の交渉条件がまとまった段階で最終契約書に向けて条件の骨子がまとめられた基本合意書を締結します。

基本合意書は法的拘束力を持ちませんが、最終の契約書締結に向けた骨子となるため、最終契約書の方向性が定められることになります。
また、基本合意書には金額なども記載されることとなりますが、あくまでデューデリジェンス前のタイミングであるため、デューデリジェンスの結果により価格は変更される旨は記載されることとなります。

M&A・事業承継
M&Aの基本合意書とは 記載内容や作成のタイミングを詳しく解説

M&Aの基本合意書は、当事者の認識を揃える目的で作成する文書です。一般的には、デューデリジェンスや独占交渉権などの項目に法的拘束力を持たせます。今回は、基本合意書の記載内容をわかりやすく解説します。(公認会計士 […]

デューデリジェンス、バリュエーションの実施

基本合意書が締結されるとデューデリジェンスと呼ばれる企業調査が実施されます。
デューデリジェンスの範囲は、財務・税務、法務、システム、人事など範囲が広く、必要に応じて選択されることになります。
売り手企業はデューデリジェンスに協力する必要があり、資料の準備、質問対応などを行うこととなります。

また、デューデリジェンス実施後、買い手ではデューデリジェンスの結果を踏まえ、バリュエーション、いわゆる企業価値評価が実施されます。
デューデリジェンスで提出された事業計画や発見された問題点などをベースに企業価値が評価されます。

そして、デューデリジェンスで発見された問題点やバリュエーションの結果に基づき、最終契約書の条件交渉が行われます。

M&A・事業承継
M&Aのデューデリジェンスとは?公認会計士が費用や項目を解説

デューデリジェンスは、買い手、売り手の両社にとってM&Aの成否や譲渡価格を左右する重要なプロセスです。 公認会計士がデューデリジェンスの目的(メリット)や費用、注意点をわかりやすく解説します。 目次M&A […]

最終条件交渉、契約書締結

契約書締結に向けて、契約書に織り込む条件や金額などの最終の条件交渉が行われます。
最終の条件交渉がまとまれば、契約書の締結に向かいます。
最終契約書では、コベナンツや表明保証、クロージング条項などが織り込まれます

コベナンツとは、クロージング前後に売り手や買い手の果たすべき義務のことをいいます。
また、表明保証とはデューデリジェンスで発見された事項以外にリスクがある項目が存在しないことを表明し、保証することをいいます。
そして、クロージング条項はクロージングを実施するために満たしておく必要がある条件のことをいいます。

これらの条項などが織り込まれた契約書で締結されることで売却の前提が成立します。

M&A・事業承継
M&AのDA(最終契約書)とは 基本合意書との違いを図解で解説

M&AのDA(最終契約書)とは、最終的に合意した内容を盛り込む契約書です。M&AのDAを数多く見てきた公認会計士が、DAの記載内容や基本合意書との違い、作成時の注意点をくわしく解説します。(公認会計士監修 […]

クロージングフェーズ

契約書が締結されるとクロージングフェーズに入っていきます。

クロージングの準備

クロージングに向けては株式譲渡の手続き債権者保護手続き独占禁止法関係の手続き、また、先述した契約書に記載された条項などの準備が必要となります。

クロージングに向けて、複数の株主が存在している場合などは株式を買い集める、あるいは事前に準備をして譲渡時にスムーズに手続きが進められるよう準備をしておく必要があります。
また、譲渡制限株式会社の場合、株式譲渡を行う場合、取締役会・株主総会での承認が必要となります。

また、スキームや取引の条件によって債権者保護手続きや独占禁止法関係の手続きなどの準備が必要となります。
債権者保護手続きや独占禁止法関係の手続きなどはある程度の期間が必要であるため、事前に要否を確認して準備をしましょう。

先述した契約書に記載された条項のうち、クロージングまでに対応が必要な条項について対応していきます。
代表的な条項で、チェンジオブコントロールや許認可の届出などがあげられます。
重要な取引契約にチェンジオブコントロール条項は含まれている場合に、取引先から継続の同意を得ることが必要となります。

これらの手続きがクロージングに向けて必要な準備となります。

クロージング、事後処理

株式譲渡の場合、対価の支払とともに株式を譲渡することで成立します。
譲渡が成立すれば、株式の名義書換を行います。

事業譲渡の場合は、承継される権利義務などを個々に移転するため、クロージング日に全ての手続きを完了することは難しく、クロージング日から数日程度かかってしまうことが一般的となっています。
また、対価に関してもクロージング日に支払われることもありますが、価格調整条項などが入っている場合には支払日は別途条件が設定されているケースもあります。

そのほかのスキームの場合は、契約書で規定された効力発生日に契約が成立します。

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M&Aのクロージングとは、株式等の引き渡しと対価の支払いを行うことです。クロージングは、法的にM&Aの有効性を証明する上で重要な手続きです。公認会計士が、クロージングで重要なポイントを徹底解説します。(公 […]

経営統合フェーズ

クロージングが完了するとPMI(ポストマージャーインテグレーション)と呼ばれる経営統合フェーズとなります。
このPMIが成功するかしないかによって、M&Aが成功したと言えるのかというぐらい重要な作業となります。

短期プランの実行

短期プランの実行に向けては、3〜6ヶ月以内の統合作業についての短期プランを策定します。
短期プランに基づき迅速に
実行に移していきます

デューデリジェンスで発見された指摘事項や、組織、人事制度、各種規定などを買い手企業のもの統合していく作業など短期間で解決すべき項目が短期プランでは対応されていきます。

中長期プランの策定・実行

短期プランと並行して中長期プランの策定が行われます。

現状分析から中長期的に対応すべき課題を抽出し、アクションプランに落とし込んでいきます
それぞれの課題に対して具体的に落とし込むことで
進捗管理が可能となり、効果の検証も可能となります。

PMIでは課題を解決するために計画を進めていき、進捗管理をするとともに、実行した内容に対して効果の検証することでより実効性の高い内容となっていきます

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経営者が会社を売りたいと考える理由

会社 売りたい 理由

では、経営者が会社を売りたいと考える理由は何なのでしょうか。
経営者が会社を売却したい理由は以下の5つです。

  1. 後継者が身近にいない
  2. まとまった資金が欲しい
  3. 事業の成長スピードを加速させたい
  4. 経営の先行き不安を抱えている
  5. 従業員の雇用や取引先の取引を維持したい

後継者が身近にいない

まず、大きな理由として子供や親族など身近に後継者がいないことがあげられます。

先述した通り、少子化が進んだ結果、後継者の対象となる人が減少しています。
また、少子化の結果、価値観も変わってきており、経営者の子供がいたとしても
会社を承継しないと選択するケースも増えています

これらの結果、後継者が身近にいないことで経営者は会社を売却することを検討しているのです。

まとまった資金が欲しい

経営者が会社を売却したいと考える理由として、まとまった資金がほしいということがあげられます。

新規事業を展開したい、老後の資金が必要、入院などで資金が必要など、経営者が資金を必要とする場面はさまざまです
会社を経営していれば、会社を売却することでまとまった資金が手に入ります。

これらのことから、まとまった資金が必要となり、会社を売却することを考えるのです。

事業の成長スピードを加速させたい

経営者が会社を売却したいと考える理由として、事業の成長スピードを加速させたいということがあげられます。

自分で会社をやっていると資金面でもそうですが、ノウハウ面や販路や組織面などさまざまな面で限界があります。
会社にとっての成長を進めるために、会社を売却することで自分ではできなかったものを手に入れることができる可能性があります。

資金面、ノウハウ面などのサポートに加え、シナジー効果により、成長を加速させることが可能となるため、経営者は会社の売却を検討するのです。

経営の先行き不安を抱えている

会社経営者は孤独で相談相手もなかなかいません。
そんな中、例えばコロナのような状況を目にすると
今後の会社経営について不安になります。

その結果、経営者は自分で経営し続けることに対して不安を抱え、会社を売却することでそれらの不安を解消することを考えます

会社経営者は会社経営の先行き不安により、会社の売却を考えるのです。

従業員の雇用や取引先の取引を維持したい

会社経営者は自分の生活はもちろんですが、雇っている従業員の生活に対しても責任を持っています。
会社経営者が高齢で事業をやめたいと考えても、従業員を雇っている場合にはこれらの従業員の雇用をどうするかが問題となります。

また、取引先も同様で、取引がなくなることで取引先への影響が全くないことはなく、場合によっては経営に影響が出てくるケースもあります。

これらの事象を解決してくれるのが会社売却なのです。
会社を売却することで雇用は維持され、取引先との取引も維持されます

M&A・事業承継
M&Aとは?目的・手法・メリット・流れを解説【図解でわかる】

M&A(エムアンドエー)とは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、「会社あるいは経営権の取得」を意味します。今回は、M&Aの意味・種類・目的・メリット・基本的な流れ・税金・ […]

会社を売りたい経営者が知っておくべきポイント

会社 売りたい ポイント

経営者は会社を売りたいと考えた時、金額もそうですが、スピーディーに相手先などを見つけて進めたいと考えます。
それらを達成するために会社を売りたい経営者が知っておくべきポイントを解説していきます。

会社を売りたい経営者が知っておくべきポイントは以下の6つです。

  1. 企業価値の磨き上げを行う
  2. 会社売却の目的を明確化する
  3. 売却条件に優先順位をつける
  4. 社長依存度を下げる
  5. 情報の漏洩に注意する
  6. M&Aの専門家を最大限活用する

企業価値の磨き上げを行う

売却金額の算定方法はさまざまですが、会社そのものの価値、魅力などが高くなければ、売りたいと思っても売れません。
そのためには
会社の企業価値の磨き上げを行い、企業価値を上げておく必要があります

自社が強みとしている業務を伸ばすこともそうですが、弱みをなくすための方策を取り入れたり、従業員を経営に参加させ、モチベーションを向上させたりなど施策はさまざまです。

これまで以上に事業に力を入れ、収益力などを向上させ魅力的な会社になるようにする必要があります。

会社売却の目的を明確化する

会社の売却を進めるためには、なぜ会社を売却するのか、会社の売却目的を明確にしておく必要があります。
売却を進めている初期段階では明確であったものも進めていくと、曖昧となってしまい売却条件の優先順位なども適切につけることができなくなります。

また、雇っている従業員などへの説明も必要となりますが、売却目的が明確でなければ、従業員は会社から離れていってしまう可能性があります。

これらのことから会社の売却目的は明確にしておき、説明が必要な場面では説明を行い、会社の売却を進めていく必要があります。

売却条件に優先順位をつける

会社の売却は自社だけで決めて進めることができず、相手先との関係で成り立っています。
そのため、
自社が考えている売却条件がそのまま通ることは少なく、妥協すべき点も生じてしまうことも事実です。

交渉の中で落とし所は決まってきますが、その交渉の中で全て相手先の言われた通りに進めると希望とは乖離した結果となってしまいます。
交渉の中で譲れない部分と譲れる部分を色分けすることで希望に近い条件で成立するよう進めることができます。

事前に売却条件を整理した上で、優先順位を設定しておきましょう。

社長依存度を下げる

個人で事業を開始し会社を立ち上げた場合、多くのケースで社長の依存度は高くなっています
社長が全て決断し、事業を行っていることため、自ずと依存度が高くなるのです。
そういった会社では良くも悪くも社長がいなければ事業が回らないという状況となっており、会社を売却して社長が経営者から退いた場合、事業が回らないということになってしまいます。

社長が退いた後でも安定した経営ができるよう事業を熟知している従業員などを育て社長がいなくなったとしても取引先との取引がスムーズに回るような状況にしておく必要があります
そうすることで自然と社長への依存度が下がり、社長が退いた後でもうまく事業が回るのです。

情報の漏洩に注意する

会社を売却するときには必ず情報漏洩には気をつけなければなりません

会社が売却されるという情報が社内で出回ってしまうとそこで働いている従業員は不安となり、退職やモチベーションの低下につながってしまう可能性が出てきます

また、1ヶ所情報漏洩してしまうとさまざまなところにまで広がってしまいます。
その結果、従業員だけではなく取引先などにも知れ渡ってしまう可能性があります。
極端なケースでは、
取引が停止されたり、資金の回収などを急がれたりと取引先との関係にも悪影響が出てしまう可能性もあります。

そうならないためにも、情報の取り扱いには気をつけましょう。
また、仮に情報が漏洩した場合には、間違った情報が流れないよう適切に説明を行うことで取引や従業員などに悪影響が出ないようにしましょう。

M&Aの専門家を最大限活用する

会社の売却などM&Aにおいては専門知識が必要となります。
また、さまざまな事象が生じる可能性があるので、経験豊富な人がいると安心です。

社内にM&A経験が豊富で専門知識を兼ね備えている人はなかなかいないので専門家を活用することで、出てきた事象や交渉などさまざまな場面でサポートしてもらうと安心です。

M&Aの専門家を最大限活用することでリスクを下げ、また、自社の希望にあった条件で進めてもらえるようサポートしてもらいましょう

まとめ

ここまで会社を売るメリットや手続きなどについてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

会社を売ることはなかなか出くわすことはありません。
むしろ経験する人はかなり少ないと思います。
自分で創業した会社を売るとなると思いも強く、自分が希望した条件で売り、売却後も会社が順調に成長してほしいと考えるでしょう。

会社の売却で失敗しないように事前に情報を収集し、必要な手続きや書類などを調べるなど準備をしておき、いざ進めるにあたっては専門家などをうまく活用して進めていきましょう。
そうすることで自分の描いた通りに会社の売却は進み、成功に繋げることができるでしょう。

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(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)