会社の解散手続きや清算の流れ、期間、費用を税理士が徹底解説

経営者の中には、会社の解散(廃業)を検討しているがどうすればいいかわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、会社の解散・清算手続きの流れや期間、費用をくわしく解説します。(公認会計士・税理士 河野 雅人 監修)

目次
  1. 会社の解散とは
  2. 会社解散後に行う「清算」とは
  3. 会社解散手続きの流れ
  4. 会社の解散手続きにかかる期間
  5. 会社の解散手続きにかかる費用
  6. 税務署に提出する書類の一覧
  7. まとめ

会社の解散とは

会社は倒産などで廃業に追い込まれることもありますが、自主的に廃業を選択することもできます。
自主的であるかを問わず会社が事業活動を辞めることを、会社の「解散」といいます。
そして、会社が解散するには法律に則った一定の手続きが必要になります。

会社の解散とは

会社の解散とは会社を廃業することを意味します。
そして、法律的には法人格を消滅させる行為をいいます。
一般的に事業の業績悪化や後継者の不存在などにより事業を継続することが困難な状況に陥った場合に会社を解散することになります。

ただし、会社にいつでも自由に事業活動を停止し解散されると、会社にお金を貸している銀行や取引先などが困るケースがあります。
そういった会社の関係者を法律的に保護するため「清算手続き」と呼ばれる一定の手続きを行う必要があります。

会社は解散をする際、債権者が困らないようにするための手続き(債権者保護手続き)や未収入金や売掛金、借入金などの債権債務の整理、清算結了の登記など定められた「清算手続き」を行った上で、ようやく法人格としての会社が消滅することになります。

従って、会社が事業活動を停止し解散をしても、直ちに会社自体が消滅するわけではないという点には注意が必要です。

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会社が解散する7つの要件

会社が解散するには、会社法で定められた解散事由として以下の7つの要件を満たした場合に解散となると定められています。[1]

①定款により定めた存続期間の満了

定款に「当社の存続期間は○○年間とする。」と定めていた場合に存続期間の満了日の翌日に会社は解散となります。

②定款により定めた解散事由の発生

定款に「社長が○○歳に達すれば会社を解散する。」と定めていた場合、その解散事由が発生することにより会社は解散となります。

③株主総会の決議

株主総会の特別決議で会社を解散すると決議した場合、決議した日に会社は解散となります。

④合併により会社が消滅する場合

吸収合併により、会社が消滅する場合、消滅会社は解散となります。

⑤破産手続開始の決定

裁判所への申立てにより、破産手続きが開始した場合、会社は解散となります。

⑥裁判所による解散命令

裁判所から解散を命令された場合、会社は解散となります。

⑦休眠会社のみなし解散

会社法上、休眠会社とは最後の商業登記から12年間経過している株式会社のことです。
つまり、最後の登記から12年間、役員変更登記などの何らかの商業登記をしていなければ、会社は解散したものとみなされます。
これを「休眠会社のみなし解散」といいます。

この場合、法務局から休眠会社への通知などに対して期限内に「事業を廃止していない」旨の届出をしなければ、登記官により職権で会社の解散登記がされます。
ただし、解散の登記後3年以内に会社継続の手続きを行えば、会社を継続することができます。

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[1] 会社法第471条、472条(e-Gov)

会社解散後に行う「清算」とは

会社は解散しても、直ちに法人格を失うわけではありません。
会社解散後、「清算手続き」という法律行為を行う必要があります。

解散を決めただけの状態では、会社に資産、負債が残ったままなので、それら債権の回収、債務の支払いなど債権債務の整理をし、また、会社に残った財産がある場合は現金化した上で、株主に分配するなどの手続きを行う必要があります。

また、債権者に対しても通知や広告など一定の手続きが必要になります。
解散後のこれら一連の行為を「清算手続き」といいます。

そして、「清算手続き」を完了させることで、ようやく法人格としての会社は消滅することになります。

会社解散手続きの流れ

ここでは、会社の解散から清算手続きまでの一連の流れを見ていきます。

会社 解散 手続きの流れ

株主総会での解散決議

株式会社は株主総会で解散することを決議することができます。
この解散決議は特別決議と呼ばれる厳格な決議が必要とされ、議決権を有する株主の過半数が出席し、出席した株主の有する議決権の3分の2以上の賛成をもって可決されます。

解散、清算人就任の登記

株主総会の決議により解散したときは、本店の所在地で2週間以内に解散の登記をしなければなりません。
登記すべき事項は解散の旨、その事由及び年月日となります。

また、解散の登記と同時に、清算人及び代表清算人の就任の登記を行います。
一般的に解散時の取締役及び代表取締役がそのまま清算会社の清算人、代表清算人に就任します。

ここで会社の清算とは、株式会社の解散後、債権者保護手続きや清算会社の確定申告、決算報告など解散した会社の法律関係や関係各署への届出など、後始末をすることをいいます。

財産目録と貸借対照表の作成・承認

清算人は就任後、会社の財産を調査し、財産目録及び貸借対照表を作成します。
そして、作成した財産目録、貸借対照表は、清算会社における株主総会において承認を得る必要があります。

債権者保護手続き

清算人は、「官報公告」において会社債権者に対して解散することを知らせ、2ヶ月間以上の決められた期間内に申し出るよう求めます。
また、会社が把握している債権者に対しては「個別に催告」をします。
この手続きは「債権者保護手続き」と呼ばれます。

官報とは、国が発行する機関誌で国の広報や法律の公布などを一般に広く知らせることを目的として発行されるものです。
会社を解散した場合は、官報に解散したことを掲載する必要があるため、全国にある官報販売所に掲載の申し込みを行います。

解散事業年度の確定申告書の提出

清算会社は解散した日から2ヶ月以内に、事業年度開始日から解散日までの法人税確定申告を税務署に対して行います。

資産の現金化、債務弁済、残余財産の確定・分配

清算人は、売掛金や未収入金などの会社の債権を回収し、買掛金や借入金など会社の債務を支払います。
また、棚卸資産や固定資産など資産価値のあるものは現金化します。
そして、すべての資産・負債を清算した後に残る残余財産を株主に分配します。

清算確定申告書の提出

残余財産が確定すれば、1ヶ月以内に税務署に清算確定申告を行います。
ここで、所得があれば納税します。

決算報告書の作成・承認

清算人は一連の清算事務が完了すれば、すみやかに決算報告書を作成します。
そして、株主総会を開催して決算状況を報告し、その承認を受けます。

清算結了登記

株主総会で清算の承認を受けてから2週間以内に、法務局に清算結了の登記申請を行います。

各機関に対する解散の届出

清算結了登記が完了すれば、最後に税務署など各種機関へ解散の届出をする必要があります。
この届出には一般的に「異動届出書」や「登記事項証明書」など解散したことを証する書類が必要になります。

届出先は、「税務署」、「都道府県税事務所」、「市区町村役場」、「社会保険事務所」、「労働基準監督署」などの公的機関です。
添付書類は各機関によっても異なるので、各機関のウエブサイト等で確認するようにしてください。

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会社の解散手続きにかかる期間

会社は解散した後、解散した旨をすみやかに官報で公告しなければなりません。
債権者保護手続きが2カ月以上を要することが会社法により定められているため、公告を掲載してから2ヶ月間は清算結了できないことになります。

つまり、解散から清算結了まで最低でも2ヶ月以上の期間を要することになります。

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会社の解散手続きにかかる費用

会社 解散 費用

会社の解散手続きにかかる費用は、おおよそ40万円~50万円を見込んでおくとよいでしょう。
主な費用は以下のとおりとなります。

登録免許税

会社を解散した場合、登録免許税として「解散及び清算人選任の登記」39,000円、また「清算結了の登記」2,000円、合計41,000円がかかります。

官報公告費用

官報公告への掲載料として約32,000円かかります。

その他手続きの諸費用

登記事項証明書の取得費用など、手続きを進めるうえで数千円程度の手数料等がかかります。
また、株主総会開催費用として、数万円~数十万円になることもあります。

専門家への依頼手数料

会社が解散をする際、場合によっては弁護士や司法書士、税理士などの専門家に依頼することもあります。
解散する会社の規模や、専門家に依頼する内容によって、費用は数万円~数十万円と異なります。

例えば、解散登記や清算結了登記に関する手続きを司法書士へ依頼する場合は平均的に8万円~12万円程度、税務申告に関する手続きを税理士へ依頼する場合は、8万円~数十万円かかります。

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税務署に提出する書類の一覧

ここでは、税務署への提出書類としてまとめて見ていきます。

①異動届出書(解散届)

清算が結了すれば「異動届出書」を税務署に提出します。
内容は解散の届出です。
異動届出書の提出期限は特に決められていませんが、解散後、遅滞なく行うこととされています。

②給与支払事務所等廃止届

会社が給与支払事務所であるならば、「給与支払事務所等廃止届」の提出も必要になります。

③履歴事項全部証明書(コピー)

④解散事業年度にかかる確定申告書

解散の日の翌日から2ヵ月以内に、事業年度の開始の日から解散の日までの期間にかかる確定申告を行います。

⑤清算中の各事業年度における確定申告書

会社が清算中の場合でも、各事業年度について確定申告が必要になります。
清算中は、会社が解散した日の翌日から1年ごとの期間を1事業年度とみなし、各事業年度末日の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出して、納税をしなければなりません。

なお、会社の解散の日の翌日から1年以内に残っている財産が確定し、清算が結了した場合は、清算中の確定申告の必要はありません

⑥異動届出書(清算結了届)

清算結了登記が完了したら、「異動届出書」を提出します。

まとめ

会社の解散を決めたなら、さまざまな届出や手続きが必要となります。
解散の登記や清算手続きをせず、そのまま放置していても法人税や固定資産税などの税金は課されるので、遅滞なく解散及び清算結了の手続きを行った方がいいでしょう。

自分で行うことが難しい場合は、専門家への依頼を検討してみてください。

 

河野 雅人

 

(執筆者:公認会計士・税理士 河野 雅人 大手監査法人勤務後、独立。新宿区神楽坂駅近くに事務所を構え、高品質・低価格のサービスを提供している。主に中小企業、個人事業主を中心に会計、税務の面から支援している)
公式HP:河野公認会計士税理士事務所