事業承継・M&Aプラットフォーム M&Aサクシード

JPX 東証上場

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売上げアップ&コスト削減!小さな運送会社が大手グループ入りで生産性向上

  • 譲渡
    九州トランスポート株式会社(旧・有限会社日向商運)
    事業概要:原乳、タイヤ、肥料、雑貨、医薬品などの地場・中長距離配送
    本社所在地:宮崎県
    従業員数:37名
    譲渡理由:後継者不在
    実行日:2021年7月
    株式譲渡
    譲り受け
    フジトランスポート株式会社(旧・富士運輸株式会社)
    事業概要: 大型トラックによる長距離輸送
    トラック保有台数:グループ総数2,421台(2022年7月1日)
    本社所在地:奈良県
    従業員数:グループ総数2,838名(2022年7月1日)
    譲り受け理由:売上・市場シェア拡大
  • 物流
  • 奈良県
  • 宮崎県
  • 運送業

事業承継した会社のその後を追う「その後」のストーリー。M&Aサクシードを通じて出会ったタッグが、どんな素晴らしい物語を紡ぎ出したのかを報告します。今回のサクセスストーリーでは、2021年7月にM&Aを機に物流大手のフジトランスポート株式会社のフジグループに入った宮崎県の九州トランスポート株式会社(旧・日向商運)を紹介します。日向の小さな運送会社がフジグループの宮崎拠点になったことで、受注の拡大やお客様の信頼を獲得。よりよい企業風土への発展は、大型長距離ドライバー、福岡支店長、熊本支店長を経て就任した新社長と従業員との粘り強い対話から生まれました。新社長の吉村 卓司 様、フジホールディングス株式会社 執行役員の川上 泰生 様に話をうかがいます。(2023年1月公開)

参考:前回の成功事例インタビューはこちら

フジグループ入りでコロナ禍の落ち込みから回復。生産性向上で給与もアップ

――フジグループ入りしたことで、上昇傾向が続いているそうですね。

九州トランスポート 吉村 コロナ禍で減収になっていたところ、以前のレベルまで引き上げることができました。経営の改善が進んでいます。その要因は長距離かつ安定したお客様からの仕事をいただけていることです。フジグループの一員になって、大手のお客様との取引ができるようになりました。以前は3次・4次業者とのお付き合いが主でしたが、今は私たちが1次・2次業者として業務を行っています。

輸送便の内容をしっかりと精査して、運賃を安価に抑えられていた案件は避け、新たにお客様を開拓しました。そういった努力や工夫によって、宮崎―東京間の帰り荷運賃を10%〜15%アップできました。

――売上げアップと同時にコスト削減も順調だとか。

吉村 コスト削減については大きな変化がありました。車輌修繕に対するグループでの内製化です。これまで外注していたため、どうしても言い値になっていたところがありましたが、適正価格で実施することができるようになりました。

また、もともとは宮崎以外に拠点がなかったため、県外ではガソリンスタンドで給油していましたが、フジグループのインタンク(自社が有する燃料タンク)を利用することで、コスト削減(1リットルあたり約10円)を実現しました。

一連の効率化が進んだことで、従業員の給料をアップすることもできました。乗務員のワークライフバランスも安定してきました。

――フジグループ様が九州トランスポート様と一緒になった理由は?

フジトランスポート 川上 全国の拠点ネットワークを構築するなかで、宮崎は空白県として課題となっていました。1年半前、M&Aサクシードを通じて出会えたのが九州トランスポート(旧・日向商運)です。シナジー効果が期待できると判断して、グループに入っていただきました。九州全域を網羅したことにより、復路の輸送効率化をおこなうことができました。自社で開発したITシステムに入っているGPS機能を活用することも、空車率を抑えることにつながっています。また九州トランスポートが給油施設・休憩ポイントとして機能するため、燃料代・整備代などの経費も削減できています。

――グループ入りのメリットのひとつは人材の充実ですね。

吉村 フジトランスポート熊本支店と人事交流を行っています。熊本支店は、九州の中でも荷物が多く、それでもしっかり生産性向上を実現しており、学ぶことが多いです。情報の共有だけでなく人の行き来があるおかげで仕事の質の向上を図れますし、管理部門などの社内教育や人事制度の底上げにもつながりました。

――吉村様は運行部、福岡と熊本の支店長を経て、九州トランスポート様の社長を任せられました。どんな目標をたてたのでしょうか?

吉村 経営で最重要だったのは、安定したお客様つまり定期便の獲得です。当時も今もこれが私の使命です。おかげさまでその目標へと着実に歩を進めています。

もうひとつがグループの社是である「従業員ファースト」の実践です。従業員のためだけでなく、それぞれの家族や子どもの幸せも念頭に置いています。皆が笑顔で過ごせる会社にするために、全力で駆け抜けた1年でした。

M&Aの課題である「社風の融和」をどう実現したのか?

――M&Aでは異なる社風を融和させることが課題となります。

吉村 九州トランスポートは昔ながらのやり方でずっときた会社でした。制服も着たり着なかったり、トラックの管理や時間管理もドライバーに任せているような状態でした。しかし「2024年問題」を前にして、そのようなやり方では難しいのも事実。グループ入りを機に、グループの管理方法を導入しました。

グループのしっかりした基準に到達するまでは苦労しました。ドライバーには「ルールを守るように」と粘り強く伝え続けました。

「ルール化」を助けてくれたのは内勤のメンバーです。グループ入りを機に「社風を変えていこう」という姿勢で臨んでくれたんです。率先して動いてくれました。正直なところ「ルールなんてやってられない」と感じたドライバーもいたでしょう。しかし、以前から一緒に働いてきた人から言われると、納得してくれます。安全靴、名札、ヘルメット、制服など、徐々にルールを受け入れてくれるようになりました。それができたからこそ、今があると感じています。

譲り受けした会社から出向してきた人は、最初は「敵なのか? 味方なのか?」という見方をされがちです。でも、誠実な態度で根気よく伝えれば、1人、2人と理解者が増えていきます。

一方で、実務面の整備はすぐに取り掛かりました。2024年に向けて法的な部分で足りないところもあったからです。社会的な信頼を得ることはグループの必須事項です。

――田中様は以前からの社員として、グループ入りのビフォーアフターがよく見えていると思います。

九州トランスポート 田中 日向の小さな運送会社では想像もつかなかった、大手の物流会社様ともお付き合いいただけるようになりました。それだけでなく、フジグループの質の高さがドライバーの成長につながっています。「フジグループの一員なら同じ高品質なので、安心して取引できる」とグループの既存のお客様からの発注もいただいています。次の目標は吉村社長が言うように、定期便を充実させることです。そうなれば、ドライバーも安定するので、計画も立てやすく収入も安定します。

――フジグループ様はこれまでも「M&A経営」でグループを大きくしてきました。譲り受けで大切にしていることを教えてください。

川上 「大変でも、明るく楽しくやっていこうじゃないか」。譲渡企業様にはこう呼びかけてきました。それが私たちの心構えなんです。運輸・物流業は日本を支える重要な仕事です。コロナ禍でエッセンシャルワークを担ったのも私たちです。にもかかわらず、世の中でなかなか評価されていないところもあります。しかし、状況に対して文句ばかりを言うのではなく、「明るく楽しくやっていく」というのがフジグループの社風なんです。

「1+1=4」にもなる。グループ連携のシナジー効果

――グループ内の連携は多方面におよぶそうですね。

吉村 協力体制は手厚いです。営業だけでなく、フジグループ本社からも助けてもらっています。人事交流もあり、バックアップ体制はばっちりです。また、月一回、グループ会社の社長が集まる会があり、横のつながりで、各社のいいところを取り入れることも試みています。

――事業領域も広がりました。

川上 九州トランスポートは海上コンテナや原乳の運送など、グループがやったことのない輸送領域を持っています。新たな分野については、九州トランスポートに教えを請いながら進めているところです。M&Aによる事業承継が「1+1=4」にもなることを証明したいですね。

――フジグループ様の強みは内製化です。特にDXを推進しています。九州トランスポート様ではどうデジタル化を進めていますか?

吉村 以前は経理も配車も紙にボールペンという状態だったので、デジタル化に慣れるのは大変でした。しかし、モールシステム(運行管理システム/車両管理、運航管理、請求、給与計算、人事管理を一元管理)を導入して、急速にデジタル化は進みました。便利で効率化できることを現場が実感したからです。管理もしやすくなったし、時間短縮にもなった。もう手書きはありません。車輌管理にはGPSも使って、空車回送率を削減しています。もうグループと同じレベルですよ。

――1年半を振り返って、思い起こすことは何でしょうか?

吉村 整備が不十分なトラックがなくなっていき、従業員に継続して伝えてきたきたかいがあったと感じます。やはり運送会社なので、トラックそのものが会社のありようを語るのだと思います。

物流業界の「2024年問題」。M&Aはさらに大きな役割を果たす

――運輸・物流業界にとって2024年問題が喫緊の課題です。

川上 2024年問題を一言でいえば、「ドライバーの拘束時間が短くなる」ということです。総労働時間が減るため、「運ぶ」ことに対して効率化などの工夫が必要になります。クリアするためには、さまざまな企業と連携することを検討すべきでしょう。なかでも、M&Aは譲渡企業様にとって大きなメリットになると確信しています。

2024年は通過点にすぎません。最終的な目標はお客様にご満足いただけるサービスの提供だからです。お客様に選ばれ続けるために高品質な輸送を常に心がける、それが私たちの永遠のビジョンです。

――譲渡を検討されている業界の経営者の皆様にメッセージをいただけますか。

川上 大型長距離トラックの領域では、フジグループは国内トップグループを走っています。だからといって手を休めるつもりはありません。私たちには、まだまだ成長するチャンスがあります。そして、上を目指す志があります。日本を支える物流業界を一緒に引っ張っていく、変えていく、大きくなっていく。より良い環境、会社にしていく。M&Aサクシードを通じて、志を同じくする経営者様と出会えることを願っています。