M&Aに必要な部署とは?組織体制を構築するポイントを徹底解説

M&Aの統括部署は限られた人数で構成され、経営陣と連携してM&Aの相手先選定などの業務を行います。またM&Aでは、法務や経理の担当部署も必要です。公認会計士が、体制構築のポイントなどを解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)

M&A 部署(FV)

目次
  1. M&Aで構築すべき部署の種類
  2. 外部の組織・専門家に依頼することも重要
  3. M&Aの部署を構築するポイント
  4. まとめ

M&Aで構築すべき部署の種類

M&Aを進めるにあたっては専門とする部署が必要となります。
まずは構築すべき部署について解説していきます。

M&A 部署 種類

M&Aの統括部署

M&Aの統括部署はまさにM&Aを専門としている部署となります。
M&Aの統括部署は
相手先の選定、交渉フェーズの推進、PMIの取りまとめなど中心となってM&Aを推進することになります。

M&Aを結構な頻度で実行する会社であれば専門組織として設置されていることもありますが、頻度が少ない会社であればM&A実行時に組成されて進められることが一般的です。
M&Aは取り扱う情報も機密情報が多く、限られた人数で進められ、経営陣と密に連携して進められます。

M&A統括部署は必要に応じて他部署と連携しつつ、経営陣の意向を踏まえながら、先方との交渉などを遂行していきます。
案件が進み始めたら各部署の担当者を限定して集め、進めていくことになりますが、よほどの大きな案件でない限りは社内でも10名程度の少人数で構成され、進めることになります。

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経営企画部署

経営企画部署は全社戦略や事業計画などを策定する部署ですが、M&Aの要否を考えることも経営企画の役割となります。
全社の観点でM&Aの実行の判断を行います。
市場の分析や競合の分析などから自社に必要な販路や資源、要員などを検討します。

M&Aを進めるにあたっては経営企画がM&A戦略の策定などを行い、M&Aの目的を明確にしていきます。
M&Aが頻繁に行われない会社であれば、経営企画がM&Aの統括部署まで担っていることもあります。

M&A統括部署と同様に経営陣の意向を踏まえながら戦略を策定してM&Aの実行をサポートしていきます。

PMI担当部署(事業推進部署)

PMIとはM&Aの実行フェーズの後に行われる経営統合フェーズで、ポスト・マージャー・インテグレーションの略となります。
買い手にとって経営統合フェーズは
今後の事業展開において重要であるため、M&Aが成功するのかはPMIにかかっていると言っても過言ではありません

PMI担当部署はそのPMIを推進していく部署で、経営方針の統合、企業風土の統合や事業の統合などを推進していくことになります。
M&Aでは異なる会社同士が統合されていくことになるため、従業員同士の摩擦なども生じてしまう可能性もありますが、その辺りもうまく統合して事業がうまく推進できるように進めるのがPMI担当部署になります。

PMIがうまくいき、事業が推進できればシナジー効果も発揮することもでき、企業の成長につなげることができます。

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法務部署

法務部署はM&Aにおいては契約書の作成や法務デューデリジェンス等の業務を担当することになります。

M&Aにおいては会社法や労働契約、特許などさまざまな場面において法律が影響してきます。
そのため、M&Aにおいて
法務部署が入ることは必須で外部の弁護士も活用しながら進めていくことになります。

M&Aに限らず、契約書は相手との取り決めを定めていくことになります。
そのため、契約書の内容に不備などがあれば、M&Aの実行後に影響が出てきてしまう可能性もあるので留意して進めていく必要があります。

また、交渉後も必要に応じて独禁法の対応やPMIの対応などもしていくことになります。

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経理・財務部署

M&Aにおいては経理や財務部署も重要な役割を果たしていくことになります。

M&Aを実行すると相手企業の実績が自社に影響することになります。
事前に実施されるデューデリジェンスで相手の財務状況などを調査することになりますが、自社の会計処理との違いなどを確認しておくことでM&Aの影響を把握しておきます。

また、M&Aにおいてはスキームの違いにより、税務などの影響も出てきます
相手企業やスキームによって税金の負担が変わってくるので自社に適したスキームを判断することが必須となってきます。
税務は影響する金額も大きくなる場合もあるので留意が必要となります。

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外部の組織・専門家に依頼することも重要

M&Aにおいては専門的な知識や経験が必須となるので必要に応じて外部の組織や専門家に依頼することになります。
M&Aを失敗すると影響が大きく、ポイントで外部の組織や専門家に依頼することが重要となります。

依頼先となる組織・専門家の種類

M&A 外部組織

依頼先となる組織や専門家について紹介していきます。

M&Aアドバイザリー会社

M&Aアドバイザリー会社はM&A戦略の策定からクロージングフェーズまでの一連の流れのサポートを行なってくれる専門家となります。

買い手あるいは売り手の片方と契約を締結して依頼者の利益の最大化を目指していくことになります。
M&Aの目的や依頼者の利益の最大化などの達成にコミットしてM&Aを進めてくれるので、依頼者の目的は達成しやすくなりますが、依頼者側の利益を最大化するため、交渉などが長期化する可能性もあります。

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M&A仲介会社

M&A仲介会社もM&Aアドバイザリー会社と同様でM&Aの戦略策定からクロージングフェーズまでの一連のサポートを行なってくれる専門家です。

M&Aアドバイザリー会社は売り手あるいは買い手のどちらか片方と契約して依頼者の利益を最大化して進めていくことになりますが、M&A仲介会社は売り手と買い手の間に入ってM&Aの実現に向けて進めていくことになります。

M&A仲介会社が実行した場合、M&Aが早期に成立しやすくなる反面、どちらかの利益が阻害される可能性はゼロではありません
なお、M&A仲介会社は買い手と売り手の両方から手数料を受け取るため、それぞれの
手数料の負担が軽くなるというメリットもあります

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公認会計士

公認会計士は、会計や財務などの分野における専門家です。

M&Aにおいて相手の業績がM&Aの取引価格に影響します。
過去の業績から将来の業績を予測して、事業計画が策定されることになり、
事業計画をもとに企業価値が算定されます。

過去の業績が適切に評価できなければ、事業計画の予測にブレが生じてしまい、事業計画を達成できません。
そのため、会計や財務などの専門家である
公認会計士にデューデリジェンスやバリュエーションを依頼することで適正な企業価値を算定することができます。

また、PMIにおいても公認会計士は活躍する場があります。
経営統合において経理などのバックオフィス系の業務効率化はもちろんですが、公認会計士は監査で内部統制の構築支援などの知識があるため、組織の統合や事業の統合などの業務についても依頼することができるのです。

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税理士

税理士は、税務分野における専門家です。
M&Aにおいては
相手企業の税務の申告状況ももちろんですが、スキームによっては収めるべき税金が変わってくるため、M&Aにおける税金は重要となります。

過去の申告状況などを調査することで納税漏れなどがないかを確認します。
税務リスクがある場合には、金額の交渉において材料となり、価格に反映されることになります。

また、スキームにおいては自社が連結納税を実施しているか、相手企業に繰越欠損金があるかなどによってとるべきスキームが変わってきます。
採用したスキームによって得られる効果が変わり、繰越欠損金が引き継げないなどデメリットが生じてしまうため、専門家の知見を生かしてスキーム検討を行っていくことになります。

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弁護士

弁護士は法務分野における専門家です。

M&Aにおいて契約書はもちろんですが、契約書に至るまでの意向表明書基本合意書のチェック行います。
また、
買収対象となった会社の法務の状況や労務の状況などを見るのも弁護士に依頼して進めることになります。

M&Aにおいては実行後に与える影響を事前に把握しておくことは重要で事前にわかっていることは対応していく必要があります。
労務などは特に事前に把握することで買収完了までに対応してもらうなどしていきます。

そのほか、業界が同じ会社同士のM&Aであれば独禁法の対応なども実施してもらうことになります。

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外部組織・専門家に依頼するメリット

M&Aにおいてはここまでみてきた通り、財務や税務、法務など幅広い知識や経験がないと失敗してしまう可能性が高まってしまいます
社内に知見がたまっていれば問題ないのですが、全てが揃っていることはほとんどないので外部の組織や専門家に依頼して不足分を補足することで失敗する確率を下げた方がいいでしょう。

また、情報の取り扱いなどは厳しく、社内で関わる人が増えると情報の漏洩リスクも高まります。
そのため、
外部の専門家などに依頼することで情報漏洩のリスクなども下げて進める方がいいでしょう

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M&Aの部署を構築するポイント

M&Aの専門部署を構築するにあたってのポイントを買い手企業と売り手企業のそれぞれの観点から解説していきます。

買い手企業

買い手企業においてポイントとなるのが、実行フェーズとPMIフェーズとなります。

実行フェーズにおいてはデューデリジェンスや交渉などを行なっていきます

外部専門家を活用しながら、社内と連携し先方と交渉を進めていくことになりますが、体制構築ができていない場合、必要な情報が社内に入ってこず連携もできない状況となり、案件を進めることができません
進められたとしても時間がかかり、先方の意向に合わせた条件となり失敗してしまう可能性が高まります。

また、PMIフェーズにおいてはシナジー効果の発揮や経営統合をすることでM&Aを成功に導いていくフェーズとなります。
PMIで体制が構築できていない場合、
先方からの不信感なども高まり、先方の従業員などが退職してしまう可能性も出てきます
その結果、シナジー効果も発揮できず、M&Aが失敗に終わってしまう可能性が高まります。

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売り手企業

売り手企業においてポイントとなるのが、実行フェーズとなります。

買い手企業からするとデューデリジェンスは重要な実施項目となるのですが、それに対して売り手企業が対応できなければ不信感が生じてしまいます。
そのため、実行フェーズ、
特にデューデリジェンスにおいては体制を構築しておき、真摯に対応していく必要があります

売り手企業においては実行フェーズが重要ですが、PMIも重要になってきます。
会社の中でもキーマンとなる人に中心になってもらい進めることで、将来的な成長にもつなげていくことになります
キーマンをしっかり押さえることで他の従業員などが抜ける可能性を下げ、失敗しないようにつなげていく必要があります。

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まとめ

ここまでM&Aにおいて必要な組織体制についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

M&Aは専門知識や経験が必要なため、社内の人材だけではうまく体制の構築ができないケースもあります。
そのため、社内だけではなく、外部の専門家などもうまく活用しながら進めることで成功に導いていくことが鉄則となります。

足りないものを外部で補い体制を構築し、成功に導いていきましょう。

(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)