株式売却でかかる税金 税理士が上場・非上場株式に分けて徹底解説

株式の売却では、上場・非上場株式の売却益に対して20.315%の税金が課税されます。株式売却の税率や税金の計算方法、損失の扱い、時価と乖離した金額で売却する注意点などを税理士が詳しく解説します。(公認会計士・税理士 河野 雅人 監修)

株式 売却 税金(FV)

目次
  1. 株式売却で生じる利益に対する税金の計算方法
  2. 株式売却で生じる損失の取り扱い
  3. 上場株式等の売却におけるポイント
  4. 一般株式等(非上場株式)の売却におけるポイント
  5. まとめ

株式売却で生じる利益に対する税金の計算方法

ここでは、株式の売却にかかる税金について見ていきます。

「上場株式等」と「一般株式等」に区分し、申告分離課税によって計算する

株式の売却にかかる税金については、まず売却した株式について「上場株式等」と「一般株式」について区分しなければなりません。
その上で申告分離課税と呼ばれる納税方式により確定申告をします。

上場株式等とは

「上場株式等」とは、以下にあげるものをいいます。[1]
一般的には証券取引所に上場している株式や公社債、外国債券、投資信託などは「上場株式等」に該当します。

  1. 金融商品取引所に上場されている株式等
  2. 店頭売買登録銘柄として登録されている株式(出資及び投資口を含みます。)
  3. 店頭転換社債型新株予約権付社債
  4. 店頭管理銘柄株式(出資及び投資口を含みます。)
  5. 日本銀行出資証券
  6. 外国金融商品市場において売買されている株式等
  7. 公募投資信託(特定株式投資信託を除きます。)の受益権
  8. 特定投資法人の投資口
  9. 公募特定受益証券発行信託の受益権
  10. 公募特定目的信託の社債的受益権
  11. 国債及び地方債
  12. 外国又はその地方公共団体が発行し、又は保証する債券
  13. 会社以外の法人が特別の法律により発行する一定の債券
  14. 公社債でその発行の際の有価証券の募集が一定の公募により行われたもの
  15. 社債のうち、その発行の日前9か月以内(外国法人にあっては、12か月以内)に有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出している法人が発行するもの
  16. 金融商品取引所(これに類するもので外国の法令に基づき設立されたものを含みます。)においてその規則に基づき公表された公社債情報に基づき発行する一定の公社債
  17. 国外において発行された公社債で、次に掲げるもの
     (1)有価証券の売出し(その売付け勧誘等が一定の場合に該当するものに限ります。)に応じて取得した公社債(ロにおいて「売出し公社債」といいます。)で、その取得の時から引き続きその有価証券の売出しをした金融商品取引業者等の営業所において保管の委託がされているもの
     (2)売付け勧誘等に応じて取得した公社債(売出し公社債を除きます。)で、その取得の日前9か月以内(外国法人にあつては、12か月以内)に有価証券報告書等を提出している会社が発行したもの(その取得の時から引き続きその売付け勧誘等をした金融商品取引業者等の営業所において保管の委託がされているものに限ります。)
  18. 外国法人が発行し、又は保証する債券で、次に掲げるもの
     (1)次に掲げる外国法人が発行し、又は保証する債券
           A)その出資金額又は拠出をされた金額の合計額の2分の1以上が外国の政府により出資又は拠出をされている外国法人
        B)外国の特別の法令の規定に基づき設立された外国法人で、その業務がその外国の政府の管理の下に運営されているもの
     (2)国際間の取極に基づき設立された国際機関が発行し、又は保証する債券
  19. 銀行等又はその銀行等の関連会社が発行した社債(その取得をした者が実質的に多数でないものとして一定のものを除きます。)
  20. 平成27年12月31日以前に発行された公社債(その発行の時において同族会社に該当する会社が発行したものを除きます。)

一般株式等とは

「一般株式等」とは株式等のうち、上場株式等以外のものをいいます。
上場していない株式は一般株式等にあたります。

申告分離課税とは

申告分離課税とは、事業所得や給与所得、不動産所得などの総合所得とは分離して計算し、所得税の確定申告をすることにより納税する課税方式をいいます。
株式等の譲渡による所得が生じた場合は、この申告分離課税により納税します。

なお、株式等の譲渡による所得は、総合課税の対象となる他の所得と分離されるだけでなく、土地や建物などの譲渡所得のような申告分離課税の対象となる他の所得とも分離して課税されます。

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株式売却で課税される税金の計算式・税率

それでは株式売却にかかる税金(譲渡所得)の計算方法・税率について見ていきましょう。

譲渡所得の求め方

譲渡所得の計算方法は上場株式等、一般株式等で特に違いはなく、株式の売却価格から株式の取得に際しかかった費用(取得費)及び、仲介手数料などの売却するためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いて計算します。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

なお、後述しますが、相続により取得した株式など、取得費が不明である場合については、概算として売却価格の5%を取得費とすることができます。

所得税、復興特別所得税、住民税の税率

上場株式等でも一般株式等でも、譲渡所得による税率は同じで、所得の大小にかかわらず、一律以下の税率が適用されます。

所得税:15%
復興特別所得税:0.315%
住民税:5%
(合計:20.315%)

株式等の売却により所得が発生した場合には、所得に対し合計20.315%の所得税が発生することになります。

株式売却にかかる税金の計算例

例えば、株式の売却価格を6,000万円、株式の取得費を1,000万円、譲渡費用を200万円とした場合、以下の通り譲渡所得が計算されます。

譲渡所得=6,000万円-(1,000万円+200万円)=4,800万円

従って、株式の譲渡による所得税は以下のとおりとなります。

所得税=4,800万円×20.315%=975万1,200円

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[1] 国税庁HP「 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

株式売却で生じる損失の取り扱い

株式売却で損失が出た場合には税金面で優遇措置が採られています。

株式売却による所得と損失の相殺が可能

株式 売却 税金 相殺

株式の譲渡により所得が生じた場合には、上で述べた通り、所得に対し20.315%の所得税が課されます。
ここで、もし、所得が生じた同じ年度に、他の株式を売却して損失が出た場合には、所得と損失は相殺することが可能です。
これにより支払う税金が安くなります。

例えば、A社の株式を売却して2,000万円の所得があったとしたら、2,000万円の20.315%である406万3,000円を納税しなければなりません。
ここで、同じ年にB社株式を売却したことにより1,500万円の損失が発生したとします。

この場合、A社株式の所得2,000万円と、B社株式の損失1,500万円を相殺が可能なので、譲渡所得は500万円となります。
従って、500万円の20.315%は約101万円となり、先ほどよりも約305万円の税金が減った計算になります。

ただし、相殺することができるのは、上場株式等同士あるいは、一般株式等同士の場合であり、上場株式等と一般株式等の所得と損失は相殺できない点には注意が必要です。

上場株式等については3年間の損失の繰越が可能

上場株式等については損失が発生した場合には、翌年から3年間、損失を繰り越す制度があります。
これにより、当年度に生じた株式売却損と向こう3年間に生じた株式売却による所得を相殺することができます。

しかし、一般株式等には、このような制度はありません。

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上場株式等の売却におけるポイント

上場株式等を取引するには証券口座を開設しなければなりません。
ここでは、証券口座に開設する口座についてポイントを解説します。

上場株式 売却

「特定口座」と「一般口座」の違い

株式の譲渡によって生じる譲渡所得や配当金には所得税が課されます。

証券取引所に上場している株式を購入したり売却したりするためには、証券会社に証券口座を開設することになります。
ここで、所得税の納税方法との関連において「特定口座」と「一般口座」を選択することになります。

「特定口座」では、証券会社が1年間の株式取引の損益をすべて計算して年間取引報告書を作成します。
特定口座においては、確定申告の要否は次に述べる「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらを選択するかにより異なります。

一方、「一般口座」を選択すると、1年間の売買損益を自分で計算して確定申告をしなければなりません。

「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違い

「特定口座」は、上場株式等についての確定申告手続きを簡素化するために設けられた制度です。
「特定口座」では、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のいずれかを選ぶことになります。

この2つの違いは、簡単に言えば確定申告を証券会社がするか、自分でするかという点です。
「源泉徴収あり」の特定口座では、証券会社が税金の計算を行い、自分に代わって申告・納税をしてくれます。
そのため、自分で確定申告をする必要はありません。

「源泉徴収なし」の特定口座では、証券会社が作成する年間取引報告書を使用して自分で確定申告をします。

一般株式等(非上場株式)の売却におけるポイント

非上場株式を売却する際には注意しなければなりません。
ここでは非上場株式を売却する際の注意すべきポイントを解説します。

「株式譲渡」と「相続・贈与」における税金計算の違い

「株式譲渡」では個人の場合は所得税が課されます。
また、「相続」には相続税が、「贈与」には贈与税が課されます。
それぞれの税金の計算方法が異なり、大きな違いは税率に表れています。

「株式譲渡」による所得税の税率は、上で述べた20.315%で一律ですが、相続税や贈与税では、課税金額に応じて税率が異なり、10%~55%の税率が課税金額に応じて課されます。

相続した金額や贈与額が多額になればなるほど、株式譲渡による税率より多くの税金が課されることになります。

株式の取得費がわからない場合の対処法(概算取得費)

株式等の譲渡所得を計算するには、株式の取得費が分からなければ計算できません。

しかし、譲渡した株式等が相続したものであるとか、取得した時期が遠い過去などのため取得費が分からない場合もあります。
そのような場合には、取得費の額を売却価格の5%相当額とすることも認められます。
実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回ったとしても、5%相当額とすることも可能です。

例えば、ある銘柄の株式を500万円で売却した場合において、取得費がわからないときは、売却価格の5%相当額である25万円を取得費とすることができます。

時価とかけ離れた金額で売却した場合の税金

非上場株式 売却

上場株式等は証券取引所で売買されるため、市場価格で取引されます。
従って、売買価格を売り手と買い手が相談して自由に決めることはできません。

これに対し、非上場株式では証券取引所を通さず、売り手と買い手の交渉や合意によって売買価格を決めることができます

ここで、仮に、売り手と買い手が親子だった場合、例えば、「子供だし、安く売ってもいいだろう」という気持ちが入っても不思議ではありません。
このようなケースで、株式の時価を無視して、当事者同士で自由に売却金額を決めてしまうと課税の公平の観点から問題が発生します。

結論をいうと、株式の時価とかけ離れた金額で売却した場合、時価と実際の売却代金との差額について、受け取った側に贈与税が課されます。
例えば、時価8,000万円の株式を子供に対して2,000万円で売却したとします。
この場合には、差額の6,000万円に対して贈与税が課されることになります。

親族や従業員だからといって、自由に売却価格を決めると、贈与を受けた人に思わぬ多額の税金がかかることになるので注意しなければなりません。

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まとめ

株式の売買はインターネットの普及により、多くの人が取引できます。
しかし、税金面については確定申告の要否や特定口座など、やや複雑となっています。
ぜひ、株式譲渡にかかる税金について知識を整理してください。

 

河野 雅人

 

(執筆者:公認会計士・税理士 河野 雅人 大手監査法人勤務後、独立。新宿区神楽坂駅近くに事務所を構え、高品質・低価格のサービスを提供している。主に中小企業、個人事業主を中心に会計、税務の面から支援している)
公式HP:河野公認会計士税理士事務所