中小M&Aガイドラインの概要、ポイントをわかりやすく解説

中小M&Aガイドラインは、経済産業省が2020年3月に発表したガイドラインであり、M&Aの実施に役立つ情報がまとめられています。中小M&Aガイドラインについて、趣旨・目的・概要などを説明します。(公認会計士 西田綱一 監修)

M&A ガイドライン(FV)

目次
  1. 中小M&Aガイドラインとは
  2. 中小M&Aガイドラインの構成
  3. 第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き
  4. 第2章:支援機関向けの基本事項
  5. まとめ

中小M&Aガイドラインとは

「中小M&Aガイドライン」は、「第三者承継支援総合パッケージ」に基づき、「事業引継ぎガイドライン」を経済産業省が全面改訂し、2020年3月に発表したガイドラインです。

  • 「第三者承継支援総合パッケージ」:黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等を次世代の経営者に承継することを目的に、官民の支援機関が力を合わせ、年間6万人・10年間で60万人の第三者承継を実現することを目指して、経済産業省によって2019年12月に公表された支援パッケージ[1]
  • 「事業引継ぎガイドライン」:M&Aの手続きや、手続き毎の利用者や仲介者・アドバイザー等の役割・留意点・トラブル発生時の対応等を明らかにした、経済産業省によって平成27年3月に公表されたガイドライン

趣旨・目的

日本の中小企業では、経営者の高齢化が進んでいます。

中小企業庁によると、2025年までに中小企業・小規模事業者の経営者全体における約半数の127万人が後継者未定となり、そのうち約半数が黒字廃業する可能性があるとのことです。
こうした事情から、10年間で60万件以上のM&Aニーズがあるとも言われています。[2]

そこで経済産業省は、以下2つの目的で本ガイドラインを策定しました。[3]

  • M&Aに関する意識・知識・経験がない後継者不在の中小企業の経営者の背中を押し、M&Aを適切な形で進めるための手引きを示す
  • 後継者不在の中小企業のM&Aを支援する関係者が、それぞれの特色・能力に応じて、適切にサポートするための基本的な事項を示す

後継者不在

出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf)一部抜粋

後継者不在を理由に中小企業が廃業すれば、以下のような問題などが生じると考えられます。

  • 多くの従業員の雇用が失われる
  • サプライチェーンに支障が生じる

以前と比べると、後継者不在の中小企業の事業をM&Aにより社外の第三者が引き継ぐケースは増加しています。
しかし、中小企業全体で見れば、M&Aにより社外の第三者が事業を引き継ぐことに抵抗感がある経営者は多いです。

また、M&Aを進めようと思っても、M&Aに対する知見・経験がない場合も多いです。
結果として、その中小企業が廃業に至ってしまうというケースも少なくないと言えるでしょう。

本ガイドラインは、M&Aの知見がない中小企業にとって、円滑なM&Aの実行をサポートする指針となり得るのです。

概要

中小M&Aガイドラインでは、中小企業がM&Aを躊躇する3つの要因を踏まえ、M&Aの基本的な事項や手数料の目安を示すとともに、M&A業者等に対して、適切なM&Aのための行動指針を提示しています。

中小企業がM&Aを躊躇する3つの要因:

  1. M&Aを進めようと思っても、M&Aに対する知見・経験がない
  2. M&A業務の手数料等をいくら払うべきか分からない
  3. M&A支援に対する不信感

中小M&Aガイドラインにおける問題の解決策

中小M&Aガイドラインでは、以下の方法で、問題を解消しようとしています。

①M&Aを進めようと思っても、M&Aに対する知見・経験がない

  • 約20の中小M&Aの例示
  • 中小M&Aで確認すべき事項や契約書等の雛形の例示

②M&A業務の手数料等をいくら払うべきか分からない

  • 仲介手数料の考え方や具体的な金額の例示
  • セカンドオピニオンの推奨

③M&A支援に対する不信感

  • 支援機関に事業者の利益の最大化と支援機関同士の連携を要請
  • M&A専門業者には以下を要請

a)不利益情報の開示の徹底

b)リスクの最小化

c)セカンドオピニオンを可能とする契約

d)契約期間後も手数料を取得する契約の限定化

  • 支援機関に対して、求められる支援を具体的に例示
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[1]「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました (METI/経済産業省)
[2] 中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題(中小企業庁)
[3] 中小M&Aガイドライン(経済産業省)

中小M&Aガイドラインの構成

中小M&Aガイドラインは、2つの章から構成されています。

第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き

後継者不在の中小企業にとって、M&Aを検討するための手引きとなる指針となるものです。

第2章:支援機関向けの基本事項

中小企業がM&Aを検討・実行する際のサポートを行う支援機関にとって、基本的な事項を記載した指針となる部分です。
末尾には、各種の参考資料が添付されています。

第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き

後継者不在の中小企業にとっての中小M&Aガイドラインの意義等

後継者不在の中小企業にとっての中小M&Aガイドラインの意義等

中小M&Aガイドラインには、後継者不在の中小企業にとっての中小M&Aガイドラインの意義として

  • 中小M&A独自の特色について考慮した説明がなされていること
  • 中小M&Aが適切な形で促進されるように、譲り渡し側経営者を後押しすることを目的としていること

が記載されています。

中小M&Aにおいては、以下の特色があります。

  • 譲り渡し側はM&Aに関する経験・知見が十分でない場合がある
  • 中小M&Aは、中小企業の経営者個人の信用・人柄その他の属人的な要素に大きく影響される
  • 中小M&Aにおいては、 M&Aそのものに多額のコストを掛けられないケースが少なくない

経営者の方は、中小M&Aガイドラインは、中小M&Aのこのような特色に配慮して作成されていることを理解しておいていただければ幸いです。

中小M&Aの事例

中小M&Aガイドラインと参考資料の中において、中小M&Aの特徴ごとに具体的な事例が記載されています。
中小M&Aについて、具体的なイメージを持てるようになることを目的としています。

経営者の方は、中小M&Aにはどのような実例があるのかを簡単に目を通していただき、特に自社と近い実例のところを重点的に見ていただければと思います。

譲り渡し側にとっての基本姿勢

中小M&Aガイドラインでは、中小M&Aに対して以下のような姿勢を取ることが期待されています。

  1. 中小M&Aに関しての基本的な認識を変化させる

中小M&Aガイドラインでは、中小M&Aについて、以下のように捉えることができるとされています。

  • 中小M&Aは譲り渡し側経営者の方にとって誇らしいことである
  • 譲り受け側にとって、中小M&Aは合理的な手法で、友好的な取引の1つである

特に譲り渡し側経営者の方に、積極的な中小M&Aを検討することが望まれていることが大きなポイントです。

  1. 従業員・取引先等への影響の緩和

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方が、中小M&Aには従業員・取引先等への現経営者退任の影響を緩和するという観点でも意義があるという点を認識することを期待しています。

  1. 譲り受け側から見た、譲り渡し側の事業の魅力

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、自社の事業を譲り受けてくれるような第三者はいないと決めつけず、早期に支援機関へ相談してみることを推奨しています。
支援機関への相談の結果、譲り渡し側経営者自身では気付いていなかったような事業の価値を譲り受け側が高く評価し、中小M&Aの成約に至るというケースがあるからです。

譲り渡し側経営者の方としては、譲り受け側にとっても中小M&Aは一大決心であることが多いことを合わせて認識しておくと、より良いと言えるでしょう。

譲り渡し側にとっての留意点

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側にとっての留意点として以下を挙げています。

  • 早期判断の重要性

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、中小M&Aに関する早期判断の重要性を訴えています。
個別の中小M&Aにより異なりますが、通常、希望する譲り受け側とのマッチングには、数か月~1年程度の時間がかかる場合が多いことを認識しておいてください。

  • 秘密保持の徹底

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、秘密保持の徹底を呼びかけています。

  • 中小M&A手続進行上の留意点

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、譲り受け側及び支援機関との信頼関係を築いた上で、譲り受け側の意向に誠実に対応することを期待しています。

中小M&Aガイドラインは、あくまで中小M&Aの基本的な手続を示すものであり、全ての中小M&Aにおいて厳格にこの中小M&Aガイドラインに記載する全ての手続を実施することが要請されているわけではありません。

中小M&Aの進め方

中小M&Aフロー図

一般的に、中小M&Aは以下のフロー図の「中小企業の動き」に記載の流れに沿って進むことが多いです。
ご参照ください。

M&A フロー

出典:経済産業省「中小M&Aガイドライン」(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf)一部抜粋

中小M&Aに向けた事前準備

  1. 支援機関への相談

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、まず早期にM&A専門業者等の支援機関に相談するよう要請しています。

  1. 後継者不在であることの確認

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、中小M&Aに向けた事前準備として、秘密保持について注意しながら、親族内・社内に後継者候補がいないことについて身近な親族(特に子や兄弟)から了解を得ておくよう要請しています。

  1. 引退後のビジョン や希望条件 の検討

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、中小M&Aのプロセスが進む前に引退後のビジョンを含む希望条件を考えておくことを期待しています。

  1. 中小M&Aに先立つ「見える化」「磨き上げ」

一般的に、事業承継においては、経営状況・経営課題等の現状把握(見える化)と事業承継に向けた経営改善等(磨き上げ)が必要とされます。
ただし、中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者として重要なことは、まず支援機関に相談することである旨の記載があります。

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中小M&Aにおける一般的な手続の流れ(フロー)

ここでは中小M&Aガイドラインに記載されている「中小M&Aフロー図」の各工程について、説明します。

1.意思決定

中小M&Aガイドラインでは仲介者・ FAを選定する場合と仲介者・ FAを選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合に分類して意思決定について、説明されています。

実際には、マッチング以前の段階において、仲介者・ FAを選定せずにM&Aプラットフォームを活用して譲り受け側を自ら見つけるものの、マッチング後の段階においては仲介者・FAを活用して契約交渉等を行うという2つのパターンの複合型のようなケースもあります。

譲り渡し側経営者の方は、仲介者・ FAを選定する場合と仲介者・ FAを選定しない場合と途中から利用する場合があることを覚えておいてください。

(2)-1. 仲介者・ FAを選定する場合

仲介者・FA の選定にあたっては、以下の項目等を考慮するように、中小M&Aガイドラインに記載があります。

  • 業務形態
  • 業務範囲 ・内容
  • 契約期間
  • 報酬 (手数料)
  • 相性

譲り渡し側経営者の方は、仲介者・FA の選定にあたっては、上記の点などを考慮する必要がある事を、認識しておいてください、

(2)-2.仲介者・ FAを選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合

インターネット上のシステムを活用し、オンラインで譲り渡し側と譲り受け側のマッチングの場を提供するウェブサイトであるM&Aプラットフォームに登録することが、中小M&A実現の可能性を高めるという点で有効であると中小M&Aガイドラインに記載されています。

譲り渡し側経営者の方は、M&Aプラットフォームの有効性について、理解しておいていただければ幸いです。

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2.バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)

バリュエーションとは、企業又は事業の価値を定量的に評価することです。
中小M&Aガイドラインはバリュエーションについて以下のように記載しています。

  • 事例ごとに適切な方法は異なる
  • 支援機関に相談の上、各事例において適切な方法を選択すべき
  • 算出された金額が必ずそのまま中小M&Aの譲渡額となるわけではない

譲り渡し側経営者の方は、交渉等の結果当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となるという点を、特に理解しておいてください。

3.譲り受け側の選定 (マッチング)

中小M&Aガイドラインはマッチングについて、以下のように記載しています。

  • 打診を行う優先順位について、仲介者・FAとの間で十分な話し合いをすべき
  • 仮に、リスト内の候補先とのマッチングが連続して不調に終わったとしても、その後に譲り渡し側の事業を評価する候補先が現れて、中小M&Aが成立する可能性は十分にある

譲り渡し側経営者の方は、マッチングを希望する候補先あるいは打診を避けたい先があれば、事前に仲介者・ FAに伝えることが望ましいことを、覚えておいてください。

4.交渉

中小M&Aの交渉の進め方としては、譲り渡し側・譲り受け側の経営者同士の面談(トップ面談)の時期や方法も含め、様々な形態があります。
いずれにせよ、仲介者・FAと緊密なコミュニケーションを取り、仲介者・FAのアドバイスを得て交渉を進めることが重要です。

中小M&Aガイドラインは、自分の態度や表情も相手方に直接伝わることより、不用意な言動は信頼を損なうおそれがあるため、経営者の方はトップ面談に誠意ある態度で真摯に臨むべきである、としています。

5.基本合意の締結

中小M&Aにおいて、当事者間の交渉によりある程度の条件合意に達した場合には、譲り渡し側と譲り受け側との間で、主要な合意事項を盛り込んだ基本合意を締結するのが通常です。

経営者の方としては、基本合意の締結に当たって、仲介者・FA等の助言を受けて調印することが大切である旨が中小M&Aガイドラインに記載されています。

6.デュー・ディリジェンス

デュー・ディリジェンス(Due Diligence)とは、対象企業である譲り渡し側における各種のリスク等を精査するため、主に譲り受け側がFA等に依頼して実施する調査のことです。
「 DD 」と略することが多いです。

譲り渡し側の経営者方としては、中小M&Aに関して社内(役員 ・ 従業員等)への情報開示を行っていない場合は、その非開示の役員・従業員等に悟られずに実施する等の工夫が必要であることに、特に注意が必要です。

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7.最終契約の締結

最終契約の締結はデュー・ディリジェンスで発見された点や基本合意で留保していた事項について再交渉を行い、最終的な契約を締結する工程です。
最終契約の締結について、中小M&Aガイドラインは経営者の方に以下のことを推奨しています。

  • 仲介者・FA等のアドバイスを受けながら、契約内容に必要な事項が網羅されているかを最終的に確認した後、調印を行う
  • 最終契約締結によって中小M&Aの全てが完了するものではないという点をしっかりと認識しておく
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8.クロージング

クロージングとは、M&Aにおける最終契約の決済のことです。
株式譲渡・事業譲渡等に係る最終契約を締結した後、株式・財産の譲渡や譲渡代金の全部又は一部の支払を行う工程のことです。

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、クロージングにおいては、譲り受け側から譲渡対価の全部又は一部が確実に入金されたことを確認することが重要である旨を伝えています。

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9.クロージング後(ポストM&A)

中小M&Aガイドラインは、クロージングを迎えた後も、譲り渡し側経営者の方は、PMI(M&A実行後における事業の統合に伴う作業)として、譲り受け側による円滑な引継ぎ等に向けて誠実に対応する必要がある、としています。

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近年、日本における中小M&Aにおいても、オンラインのM&Aプラットフォームが急速に普及しつつあります。

M&A プラットフォームの基本的な特徴

日本では譲り渡し側については無料で登録できるM&Aプラットフォームが利用されているケースも少なくありません。
中小M&Aガイドラインには、M&Aプラットフォームに関して、以下のように記載されています。

  • マッチングのために多額の費用をかけられない小規模な事業者であっても、中小M&Aの可能性が大きく広がったと評価できる
  • 近い将来に廃業することを検討している小規模な事業者であっても、廃業以外の選択肢が現実的にあり得るという認識が必要

経営者の方は、中小M&Aガイドラインにおいて、M&Aプラットフォームの活用に対する積極的な検討が期待されていることを、認識しておいてください。

M&Aプラットフォーム利用の際の留意点

1.情報の取扱い

中小M&Aガイドラインは、M&Aプラットフォーム利用の際の情報の取扱いについて、以下のように説明しています。

  • ノンネーム情報であったとしてもインターネットの特性上、個人・企業が特定されるリスクがある
  • 自社の情報をどの程度まで開示対象とするか、検討する必要がある
  • M&Aプラットフォームごとに、情報を開示する相手方が異なる点を認識しておくべき

経営者の方は、どの程度の情報をどこまでの範囲で開示するのか、自身のニーズに照らし合わせて検討するべきであることを、認識しておいてください。

2.利用するM&Aプラットフォームの選択

利用するM&Aプラットフォームの選択において、経営者の方は、それぞれのM&Aプラットフォームの特徴を考慮すべきであることを、知っておいてください。

M&Aプラットフォームの手数料

1.料金体系

現在譲り渡し側については、M&Aプラットフォームを利用したマッチングに関して、一切の手数料が発生しないケースが多いです。

2.具体例

M&Aプラットフォームの手数料の具体例についての説明は、今回は割愛します。
弊社サービスについて、売り手企業様は完全無料で利用できます。

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事業引継ぎ支援センターは、中小M&Aを支援する目的で、平成23年から設置されている国の機関です。

事業者同士の中小M&Aの支援

中小M&Aガイドラインは、事業引継ぎ支援センターの支援フローを、以下のように説明しています。

  • 初期相談対応(一次対応):事業引継ぎ支援センターが中小企業からの相談に対応し、支援の方向性を判断する
  • 登録機関等によるM&A支援(二次対応):一次対応を経て相談者が中小M&Aの実行について意思決定し、事業引継ぎ支援センターが登録機関等の中で適切な支援ができる者がいると判断した場合に、当該登録機関等への橋渡しを行う
  • センターによるM&A支援(三次対応):二次対応において適当な登録機関等が存在しない場合、又は、一次対応時点で特定のマッチング相手が決まっている、もしくは、合意ができている譲り渡し側に対してその後の手続の一部をセンターが直接支援する

経営者の方は、中小M&Aについて、必要に応じて、事業引継ぎ支援センターという公的機関の支援が受けられることを知っておいてください。

仲介者・FAの手数料についての考え方の整理

手数料の種類

仲介者・FAの手数料の料金体系としては、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬という形式が多く見られます。
仲介者・FAの手数料には、一般的な規制法がありません。

どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介者・ FAによります。

  • 着手金

着手金は、主に依頼者との仲介契約・FA契約締結時に発生する手数料です。

  • 月額報酬

月額報酬(定額顧問料、リテーナーフィーと呼ばれることもあります)は、主に月ごとに定期的に定額で発生する手数料です。

  • 中間金

中間金は、基本合意締結時等、案件完了前の一定の時点に発生する手数料です。

  • 成功報酬

成功報酬は、主にクロージング等の案件完了時に発生する手数料です。
仲介者・FAの場合は、主に以下の3つの基準となる価額のいずれかに、一定の計算を行って金額を算出するケースが多いです。

ただし、これらを組み合わせたり、修正したりする方式もあります。
また、これらと全く異なる方式を採用する仲介者・ FAも存在するとされています。

①譲渡額(譲受額)

成功報酬の額を、譲り渡した(譲り受けた)金額そのものを基準として算出するケースがあります。

②移動総資産額

成功報酬の額を、主に譲渡額に負債額を加えた、いわゆる「移動総資産額」を基準として算出するケースがあります。

③純資産額

純資産額は資産と負債の差額です。
特に譲り渡し側が小規模企業の場合には、簿価純資産額を基準とするケースが想定されます。

レーマン方式

以上の価額を基に、報酬を算定する手法として、レーマン方式が採られることがあります。

レーマン方式は、基準となる価額に応じて変動する各階層の乗じる割合を、各階層の基準となる価額に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬算定する手法です。

以下で具体例を示します。

レーマン方式

出典:経済産業省「中小M&Aガイドライン」(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf)一部抜粋

業務内容と手数料の関係

経営者の方は、仲介者・FAの手数料には、一律の基準がなく、仮に同じM&Aが実現したとしても、仲介者・ FA が異なれば、発生する手数料の金額は異なるのが通常であることを理解しておいてください。

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第2章:支援機関向けの基本事項

支援機関としての基本姿勢

依頼者(顧客)の利益の最大化

中小M&Aガイドラインは、中小M&A についての専門知識を有する支援機関には、以下のことが求められるとしています。

  • 中小企業の意思決定やその後の諸手続の段階において適正なサポートを行うこと
  • 依頼者(顧客)の利益に真に忠実に動くこと
  • 重要な判断を依頼者(顧客)に求める場合には、十分に説明して納得を得た上で進めること

これらが求められる理由として、以下の理由を挙げています。

  • 多くの中小企業は、M&Aについての専門知識を有しない
  • 依頼者(顧客)が、支援機関の専門的な業務や手数料の妥当性等について、適切に判断することが困難であるケースも想定される

それぞれの役割に応じた適切な支援

中小M&Aガイドラインにおいて、支援機関はそれぞれ、以下のような異なる役割が期待されています。

  • M&A専門業者:マッチングやその後の諸手続の進捗管理等を含む総合的な支援
  • 金融機関:融資を通じて中小企業の経営状況等を詳細に把握していること、また、豊富なネットワークを保有していることから、これらの情報を生かした中小 M&A に関する積極的な働き掛け
  • 商工団体:中小企業の身近な相談相手であり、その窓口機能を生かして適切な支援機関に紹介する等の支援
  • 士業等専門家:専門的な知見を生かしてM&Aの手続の遂行等を支援

経営者の方は、支援機関はそれぞれに役割が違う事を知っておいていただけると幸いです。

支援機関間の連携

中小M&Aガイドラインは、円滑に中小 M&Aが進むケースにおいては、支援機関同士が相互に連携しあっている例が多いとしています。

M&A専門業者

M&A専門業者による中小M&A支援の特色

M&A専門業者は、M&Aの仲介業務やFA業務に従事する専門業者であり、中小M&Aの実現にとって重要な役割を有する支援機関です

中小M&Aガイドラインには、M&A専門業者について、以下の記載があります。

  • M&A専門業者がマッチング・交渉等についての支援を行うことで、数多くの中小M&Aが成立してきたこと
  • M&A専門業者は近年の中小M&A市場の成長に相当程度の貢献を果たしてきたこと

また、中小M&Aガイドラインは、M&A専門業者に関する注意点として、以下の点を挙げています。

  • M&A専門業者については、許可制・免許制等は採用されていない
  • 業界全体における一般的な法規制も存在していない
  • 適切に業務を進めるための支援経験や知見の乏しいM&A専門業者等も存在している

経営者の方としては、しっかりとしたM&A専門業者を選択できれば、中小M&Aを進める上で大きな力となる事を理解しておいてください。

行動指針策定の必要性

中小M&Aガイドラインは、中小M&A市場の透明性・公正性を確保するため、一定の指針が示される必要があるとしています。

各工程の具体的な行動指針

①意思決定

中小M&Aガイドラインは、M&A専門業者が意思決定に関与する際、相談者の企業情報の取扱いについても善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負っていることを自覚することが必要であるとしています。

経営者の方は、中小M&Aにおいて想定される重要なメリット・デメリットをきちんと知る権利がある事を理解しておいてください。

②仲介契約・ FA契約の締結

仲介者・FAは、依頼者である中小企業との間で、仲介契約・FA契約を締結します。
中小M&Aガイドラインは、仲介契約・ FA契約の締結にあたり、仲介者・FAが依頼者に説明すべき重要な点として、以下の点などを挙げています。

  • 提供する業務の範囲・内容
  • 手数料に関する事項
  • 秘密保持に関する事項

経営者の方は、譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者と、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAとの違いとそれぞれの特徴については、特に重要な点であることを知っておいてください。

③バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)

中小M&Aガイドラインは、仲介者が参考資料として自ら簡易評価した概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示すべきである、としています。

  • 当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合には、当該意向・意見等の内容
  • 必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること

経営者の方は、仲介者が簡易評価した概算額・暫定額は、あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易的に算定したものであるケースが多いことを、覚えておいてください。

なお、各バリュエーション手法のメリットとデメリットを下記の図にまとめましたので、こちらもご確認ください。

M&A バリュエーション(FV)

M&A・事業承継
M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは【図解で解説】

M&Aのバリュエーションとは、企業価値を評価することです。さまざまな手法があるため、状況に応じて使い分けることが重要です。会計のプロである公認会計士が、バリュエーションの方法をくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 […]

④譲り受け側の選定(マッチング)

中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAが依頼者にマッチングの進捗等について遅滞なく報告することを期待しています。

マッチングの流れとしては、①まず仲介者・ FAは譲り渡し側の希望を取り入れた候補先リスト (ロングリスト)を作成して、打診の順番や方法を決め、②その後、通常はノンネーム・シート(ティーザー) で打診を行った後、 関心を示した候補先をリスト(ショートリスト)にして、これら候補先との間で秘密保持契約を締結し、詳細資料の開示を行うことが多いです。

経営者の方は、マッチングの流れを簡単に押さえておいてください。

⑤交渉

中小M&Aガイドラインは、中小M&Aの全体像や今後の流れを可能な限り分かりやすく説明すること等により、仲介者・FAが依頼者に寄り添う形で交渉をサポートすることを求めています。

⑥基本合意の締結

中小M&Aガイドラインは、原則として、基本合意を締結することが望ましいとしています。

⑦デュー・ディリジェンス(DD)

譲り渡し側経営者の方は、デュー・ディリジェンスにおいて、譲り受け側は、譲り渡し側に対して大量の資料を要求することが一般的であることを、知っておいてください。

中小M&Aガイドラインは、譲り受け側の要求に対応し、譲り受け側に不信感を与えないためにも、仲介者・FAが譲り渡し側に対し当該資料の準備を促し、サポートすることが必要であるとしています。

⑧最終契約の締結

中小M&Aガイドラインは、最終契約は弁護士の関与の下で締結することが理想的であるとしています。

⑨クロージング

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側経営者の方に、クロージング当日、譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認することを求めています。

⑩クロージング後(ポスト M&A)

中小M&Aガイドラインは、譲り受け側による事業の引継ぎが円滑に行われるよう、仲介者・FAは依頼者に対して丁寧に助言すること等が望まれるとしています。

仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策

中小M&Aガイドラインは、中小M&Aの実務においては、FAよりも仲介者という形態の方が多く用いられている現状があるので、仲介者という業態を中小M&Aにおいて不適切であると断ずることは現実的ではない、としています。

その上で、現実的な対応策として、仲介者は以下の措置を講じるべきとしています。

  • 譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということを、両当事者 に伝える
  • 仲介契約締結に当たり、予め、両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項について、各当事者に対し明示的に説明を行う

譲り渡し側経営者の方は、中小M&Aにおいて、仲介者に業務を頼む場合は仲介者から、サポートを行うのがFAではなく仲介者であるからこそのリスクについて説明を受けることが、重要な過程であることを覚えておいてください。

専任条項の留意点

譲り渡し側経営者の方は、譲り渡し側とM&A専門業者との間における契約内容として、並行して他のM&A専門業者への依頼を行うことを禁止する条項(専任条項)が設けられるケースがあることを知っておいてください。

テール条項の留意点

譲り渡し側経営者の方は、譲り渡し側とM&A専門業者との間における契約内容として、当該契約終了後一定期間(テール期間)内に 、譲り渡し側が譲り受け側との間でM&Aを行った場合に、当該契約等は終了しているにもかかわらず、当該 M&A専門業者が手数料を取得する条項(テール条項)が定められるケースがあることを知っておいてください。

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金融機関

金融機関による中小M&A支援の特色

中小M&Aガイドラインは金融機関の特色として、以下を挙げています。

  • 貸付先である顧客の詳細な財務情報等を保有している
  • 顧客にとって経営相談等も行う身近な支援機関
  • 特に地方においては非常に重要なネットワークを有する存在
  • 中小M&A支援の際に、顧客のマッチング候補先を外部に求めるだけでなく、自らの顧客基盤の中からマッチング候補先を抽出できる

さらに現状の問題点として、業態や規模ごとに、また、同じ業態や規模であっても個別の金融機関ごとに、中小M&A支援に関するノウハウの蓄積・人員等の体制整備の状況は全く異なっていることを挙げています。

経営者の方は、金融機関による中小M&A支援の特色を理解しておいてください。

主な支援内容

  • 気付きの機会の提供 、「見える化」「磨き上げ」支援

中小M&Aガイドラインは金融機関による中小M&A支援として、顧客からの経営に関する相談中に事業承継についての必要性を見出した場合には、当該顧客にその点についての気付きの機会を提供することを期待しています。

譲り渡し側の経営者の方は、金融機関からは、経営状況・経営課題等の 「見える化」と企業価値・ 事業価値を高める 「磨き上げ」の支援を受けられることを覚えておいてください。

  • 中小M&A実行支援

譲り渡し側の経営者の方は、中小M&A実行支援はあくまでも最終的な意思決定を当事者が行うことを前提としていることを、理解しておいてください。

中小M&A実行以後に関する支援 (ポストM&A支援)

中小M&Aガイドラインには、金融機関によるM&Aに関する融資について、以下のように記載されています。

  • 中小M&Aにおいては、譲り受け側が金融機関からの融資により、譲渡対価相当額の資金を調達するケースが相当数ある
  • 当該融資の可否が、中小M&Aの実現にとって重要な要素となる
  • 金融機関は、譲り受け側のニーズや譲受後の事業の見通し等を十分踏まえて、融資を検討するべき

中小M&A支援に関する留意点

  • 他の支援機関との連携

中小M&Aガイドラインは、金融機関における他の支援機関との連携の仕方は、金融機関の中小M&A支援体制の構築状況に応じて異なる、としています。

  • 情報管理の徹底

中小M&Aガイドラインは、金融機関は中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等に即し、情報管理を徹底する必要があるとしています。

  • 譲り渡し側が事業再生局面にある場合の中小M&A支援の在り方

中小M&Aガイドラインは、譲り渡しを希望する融資先の顧客が事業再生局面にある場合には、金融機関が早期の中小 M&Aの実行を促す動機が構造的に強くなる傾向にある、としています。

このような状況で中小 M&A 支援 を行う場合にも、金融機関には譲り渡し側の意向を汲みながら、譲り渡し側の真意に即した中小M&A支援を行うことが求められています。

  • 経営者保証に関するガイドラインの遵守

中小M&Aガイドラインは、金融機関に対し、M&Aに伴う経営者保証の解除等に関し、関連するガイドラインに即した対応を期待しています。

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商工団体

商工団体による中小M&A支援の特色

中小M&Aガイドラインは、商工団体を中小企業に向けられた公的な支援制度の詳細を最も熟知した支援機関の1つである、と捉えています。
その上で、経営に関する一般的な相談を受けることが多いので、その過程において、事業承継についての ニーズを認識できる立場にいるとしています。

主な支援内容

経営者の方は、商工団体からは、適切な支援機関への橋渡しをしてもらえることを、覚えておいてください。

中小M&A支援に関する留意点

  • 情報の取扱いの注意点

中小M&Aガイドラインは、商工団体は会員同士が顔見知りである可能性も高く、譲り渡し側 ・譲り受け側を特定しやすく、商工団体が情報を慎重に取り扱わなければ、素早く伝達されてしまうリスクがあるとしています。

  • 他の支援機関との連携

中小M&Aガイドラインは、商工団体は、日頃から他の支援機関の行う支援を理解し、支援機関との意思疎通を図っておくべきであるとしています。

士業等の専門家

公認会計士

①公認会計士による中小M&A支援の特色

公認会計士が、特に譲り渡し側の支援機関として中小M&Aにおいて果たす役割について、中小M&Aガイドラインには、以下の項目が記載されています。

  • 財務書類その他財務情報の信頼性の向上
  • 監査業務や上場支援業務の経験を生かした組織的な社内体制構築への助言や支援
  • 譲渡スキームの検討・策定等の支援
  • 中小M&A 全般に関する支援
  • 財務デュー・ディリジェンス
  • バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)
②主な支援内容

中小M&Aガイドラインは、公認会計士が行う主な支援の具体的内容として、以下を挙げています。

  • 適正な財務書類の作成支援
  • コーポレート・ガバナンスの構築支援

中小M&Aガイドラインは、中小企業においては、会社法で求められている株主名簿や議事録等の整備が不十分なケースも少なくないとし、公認会計士がコーポレート・ガバナンスの構築を支援すべきとしています。

  • 株式 ・事業用資産等の整理 ・集約の支援
  • 中小企業における適切な内部統制の構築・運営の支援

中小M&Aガイドラインは、中小企業においても、適切な内部統制の構築・運営は、適正な財務書類の作成の基礎となるため、公認会計士はこれを支援することが望まれる、としています。

  • 中小 M&A に伴う経営者保証解除の円滑な実現に向けた支援
  • バリュエーション(企業価値評価 ・事業価値評価)
  • 財務 DD

財務DDは、M&Aに際して譲り渡し側の 事業実態を調査し、当該調査対象が内包するリスク要因を把握することを目的としています。
財務DDは、通常、公認会計士によって実施されます。

  • 債務超過企業に対する中小 M&A 支援

中小M&Aガイドラインには、譲り渡し側である債務超過企業が債務整理手続を要する場合に、公認会計士が実態貸借対照表・清算貸借対照表等を作成するケースがある旨の記載があります。

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  • 中小M&A実行以後に関する支援(ポストM&A支援)

中小M&Aガイドラインは、公認会計士はシナジーの検証及びこれに基づくグループ全体の経営計画策定を支援することが望ましい、としています。

③他の支援機関との連携

中小M&Aガイドラインは、公認会計士は必要に応じて、他の支援機関と連携して業務を進める必要がある、としています。
この項を通じて、経営者の方は、公認会計士は財務・会計の専門家として中小M&Aを支援することを理解しておいてください。

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税理士

①税理士による中小M&A支援の特色

中小M&Aガイドラインは、中小M& Aに積極的に携わる税理士は限られ、税理士が顧問先のM&Aについて関与しきれていないケースもある、としています。

②主な支援内容
  • 適正な税務申告書等の作成等
③助言義務

税理士には、顧問先の不正会計等を確認した場合には適切な助言や指導をして、顧問先が法令の不知や税務行政に関する誤解等によって生じる損害を被ることのないようにすべき注意義務(善管注意義務)があります。

  1. コ―ポレート・ガバナンスの構築支援
  2. 株式・事業用資産 等の整理 ・集約の支援
  • 中小M&Aに伴う経営者保証 解除の円滑な実現に向けた支援
  • 中小M&Aの課税関係等を踏まえた適切な助言及び提案

中小M&Aガイドラインは、税理士が顧問先からM&Aについて相談を受けた場合には、メリット・デメリットを総合的に勘案し、適切な助言やスキームの提案等を行うことを期待しています。

  • 中小企業等経営強化法における登録免許税・不動産取得税の特例、許認可承継の特例
  • 税務DD

税務DDは、対象会社の企業価値に影響する潜在的な税務リスクの把握等の観点から必要に応じて行うものです。
税務DDは、通常、税理士によって実施されます。

  • バリュエーション(企業価値評価 ・事業価値評価)
  • マッチングサイト等の活用
  • 債務超過企業 に対する 中小 M&A 支援
④他の支援機関との連携

この項を通じて、経営者の方は、中小M&Aガイドラインに記載があるように、税理士は顧問先に対して、税務等に関する支援に限らず、経営支援等の多面的な支援を行い得る立場にいるため、中小 M&A においても積極的に支援することを期待されていることについて理解しておいてください。

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中小企業診断士

①中小企業診断士による中小 M&A 支援の特色

中小M&Aガイドラインは、中小企業診断士の中小M&Aにおける役割としては、経営者のよき相談相手となること、「磨き上げ」を通じた企業価値・事業価値の向上やポストM&A等についての支援、ビジネス(事業) DDの実施などを期待しています。

②主な支援内容
  • 気付き の機会の提供
  • 中小 M&A 前後の企業価値・事業価値向上への貢献
  • 企業概要書の作成等 の支援

中小M&Aガイドラインは、中小企業診断士に、中小M&Aの際、顧客である譲り渡し側の事業の全体像を把握し、企業概要書の作成を支援することを期待しています。

  • 中小M&Aに伴う経営者保証解除の円滑な実現に向けた支援
  • ビジネス( 事業 DD)

ビジネスDD は、M&Aに際して譲り渡し側の商流や収益構造といったビジネスモデルを整理し、外部環境・内部環境からマーケット(市場)における競争力を分析し、事業の将来性や譲り受け側との統合によるシナジーの検討等を行うことを目的としています。

中小M&Aガイドラインは、中小企業診断士 はビジネス DDに取り組みやすい立場にある、としています。

  • 債務超過企業に対する 中小 M&A 支援
③他の支援機関との連携

この項を通じて、経営者の方は、中小企業診断士は中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を通じて中小M&A 支援を行うことを理解しておいてください。

弁護士

①弁護士による中小 M&A 支援の特色

中小M&Aガイドラインは、弁護士による中小M&A支援として、以下のような項目を挙げています。

  • 代理人として利害関係者との交渉
  • 全体的な手続進行のコーディネート
  • 契約書等の作成・リーガルチェックや法務 DD、中小M&Aに伴う個別の法的な課題やトラブルへの対応等
②主な支援内容

中小M&Aガイドラインは、弁護士による中小M&A支援として、以下のような具体例を挙げています。

  • 名義株主・所在不明株主への対応
  • 株式の整理・集約の支援( 「名義株主・所在不明株主への対応」を除く。)
  • 事業用資産等の整理・集約の支援
  • 契約書等の作成・リーガルチェック
  1. 中小 M&A に伴う経営者保証解除の円滑な実現に向けた支援
  2. 法務DD

法務DDとは、対象企業の抱える法的なリスク等について、主に譲り受け側が必要に応じて行う調査のことです。
法務DDについては、通常、弁護士が行います。

③債務超過企業に対する中小M&A支援

債務超過企業に対する中小M&A支援の具体的な中身として、中小M&Aガイドラインは、以下の項目を挙げています。

  • 資金繰りへの配慮
  • 私的整理手続の検討
  • 法的整理手続の検討
  • 適正対価での事業譲渡等の必要性
  • 一部事業譲渡等の可能性の検討
  • 税務上の注意点
  • 経営者保証に関する処理
④他の支援機関との連携

この項を通じて、経営者の方としては、弁護士は法務の専門家として中小M&Aの支援を行うことを理解しておいてください。

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M&Aでは、シビアな法的判断が必要となり、弁護士の専門的な知識や交渉力がものを言う局面が多々あります。弁護士がM&Aで果たす役割や業務の内容、弁護士に依頼するメリットや費用相場などを詳しく解説します。(執 […]

上記以外の専門家

中小M&Aガイドラインは、上記以外の専門家として、行政上の許認可関係の手続等を担当する行政書士、登記関係の手続等を担当する司法書士、労働及び社会保険関係の手続等を担当する社会保険労務士を挙げています。

M&Aプラットフォーマー

M&A プラットフォーマーによる支援の特色

M&Aプラットフォーマーは、インターネット上のシステムを活用し、オンラインで譲り渡し側と譲り受け側のマッチングの場(M&Aプラットフォーム )を運営しています。
中小M&Aガイドラインには、M&Aプラットフォーマーについて、以下のように記載されています。

  • 一般的には、譲り渡し又は譲り受けを希望する事業者が自らインターネット上で、M&Aプラットフォームに登録し当該M&Aプラットフォームを閲覧することにより、マッチング候補先を探すことができる
  • M&Aプラットフォーマーは、中小M&Aに多額の費用を掛けられない、又は、M&A専門業者等に依頼することを躊躇して中小M&Aに踏み切れない中小企業等に対して、中小 M&A を後押しできる立場にいる

弊社が運営するビズリーチ・サクシードもM&Aプラットフォームです。
サービスの概要は以下のとおりです。

ビズリーチ・サクシード サービス内容

経営者の方は、M&Aプラットフォームを適切に利用できれば、簡便かつ低コストでのマッチングが可能となることを認識いただけると幸いです。

主な支援内容

  • マッチングの機会の提供

中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側・譲り受け側当事者に加え、保有する案件情報が少ない支援機関によるM&Aプラットフォームの利用が促進されることを通じて、更なるマッチング機会が拡大することを期待しています。

経営者の方は、M&Aプラットフォームに対する期待を知っておいてください。

  • 後継者不在の中小企業に対する中小M&Aに係る意識醸成

中小M&Aガイドラインは、今後、M&Aプラットフォーマーが、インターネットを中心に、譲り渡し側である後継者不在の中小企業及び譲り受け側の双方に向けて、各種のコンテンツや支援ツールを提供していくことを期待しています。

中小M&Aに係る意識醸成を図るためです。

  • 中小M&A 支援に関する留意点

①サービス内容の明確化

経営者の方は、M&Aプラットフォームの仕組みや料金体系等を含むサービス内容は、M&A プラットフォームによってそれぞれ違いがあることを知っておいてください。

②掲載案件の信頼性

中小M&Aガイドラインは、経営者の方がM&Aプラットフォームを利用するにあたり、掲載案件の進捗状況などを確認すべきである、としています。

③他の支援機関との連携

中小M&Aガイドラインは、他の支援機関における M&Aプラットフォームの利用などがマッチング機会の拡大に大きく寄与することから、 M&Aプラットフォーマーはこのような連携を拡大していくために、積極的に他の支援機関に働き掛けていくことが望まれるとして、M&Aプラットフォーマーに大きな期待をかけています。

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まとめ

中小M&Aガイドラインについて説明してきました。
中小M&Aガイドラインの趣旨・目的・概要などについて、大筋を理解できたという方もいらっしゃることでしょう。

先述の通り、中小M&AガイドラインはM&Aプラットフォームに大きな期待を寄せています。
M&Aプラットフォームには大きなメリットがあります。

是非、ビズリーチ・サクシードにお問い合わせください。
ビズリーチ・サクシードにご登録をいただくメリットについて、しっかりと説明いたします。

(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)