運送業の売却相場はどのくらい?M&A事例や仲介会社も紹介

事業譲渡における運送業の売却相場は、「事業資産+事業利益の2〜5年分」です。そんな運送業の売却には、経営基盤の強化や事業承継の実現などのメリットがあります。今回は、運送業の現状、売却相場の出し方、事例を詳しく解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太  監修)

運送 売却

目次
  1. 運送・物流業界の概要とM&A
  2. 運送業の売却相場
  3. 運送・物流会社の売却・M&A事例
  4. 運送・物流業界において会社・事業を売却するメリット
  5. 運送・物流業界において会社・事業を買収するメリット
  6. 運送事業のみの売買では「運送業許可」の引き継ぎに注意
  7. 運送業の売却でおすすめの仲介会社・プラットフォーム
  8. 運送会社のM&A・売却ならビズリーチ・サクシード
  9. まとめ

運送・物流業界の概要とM&A

はじめに、運送・物流業界の概要、現状、課題、M&A売却成約数の最新動向を解説します。

運送・物流業界の定義

運送・物流がどのような業界であるかを知るには、まずは「運送」と「物流」の意味を理解する必要があります。
デジタル大辞泉という辞書では、上記2つの用語を以下のとおり定義しています。

  • 運送:人や物を目的の所に運ぶこと[1] 
  • 物流:生産者から消費者に至るまでの商品の流れ[2]

見てもらうとおり、運送は人や物を運ぶことを意味している一方で、物流は「物」に限定して商品が流通する一連の過程を表す用語です。
したがって、運送業界は「人や物を目的地に運ぶ会社の集まり」、物流業界は「商品が流通する一連の過程を担う会社の集まり」であると定義できます。

「商品が流通するまでの一連の過程」とは、商品・原材料の保管や値付け加工、ピッキング(荷役)、包装、運送などの業務を含みます。つまり運送業界は、物流業界の一部というわけです。

なお総務省が公開している「日本標準産業分類」では、以下の業界を総称して「運輸業」と定義しています。[3]

  • 鉄道業
  • 道路旅客運送業
  • 道路貨物運送業
  • 水運業
  • 航空運輸業
  • 倉庫業
  • 運輸に附帯するサービス業郵便業

今回の記事では、物の輸送がメインの「道路貨物運送業(自動車等により貨物の輸送を行う事業者)」を中心に、運送・物流業界における会社・事業売却について話を進めます。

運送・物流業界の現状

国土交通省が公開している「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」によると、2017年度における物流業界の営業収入は約24兆円と、全産業売上高のおよそ3%に及ぶとのことです。
そのうち、トラック運送事業のみの営業収入は16兆3,571億円であり、トラックによる運送業は物流業界において主要な稼ぎ頭となっています。[4]

一方で運送・物流業界を過去と現在で比較すると、ここ数年は市場規模が伸び悩んでいることが分かります。
国土交通省が公表している「貨物自動車運送事業者数(推移)」によると、1975年から2004年にかけては、運送事業者が31,146者から61,041者と2倍近く増加しました。

しかしその後は伸び悩み、2018年時点では62,068者に留まっています。[5]
営業収入の推移も同様に、2011年から2016年にかけてはほぼ横ばいで推移しています。[6]

ただし近年は、ネット通販市場の拡大やフリマアプリを使った個人間取引の広がりにより、宅配便の取扱個数が急増傾向にあります。[7]
また、2020年は新型コロナウイルス感染症に伴う通販需要の拡大により、宅配便の取扱量はさらに増加しました。

ネット通販市場は今後もさらに成長すると予想されており、この需要を取り込めるかが運送・物流業界で生き残る上でポイントになるでしょう。

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運送・物流業界の課題

運送・物流業界には、主に2つの課題があります。

まず1つ目は「人手不足」です。
公益社団法人全日本トラック協会が行ったアンケートによると、トラックドライバーが「非常に不足している」、「不足している」という回答が合計で64%を占めたとのことです。
「やや不足している」という回答を含めると85%となっており、運送業界では人手不足が非常に深刻化しています。 [8]

2つ目の課題は「労働時間の長さ」です。
同じく全日本トラック協会が公表した資料によると、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業の平均と比較して月37〜38時間も長いとのことです。
一方で年間所得額は全産業平均と比べて1〜2割低いというデータもあります。

労働時間が長い割に収入が低いことが、1つ目の課題である「人手不足」の原因になっていると言われています。

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運送・物流業界におけるM&Aの動向

運送・物流業界では、他の業界と同様にM&A(合併と買収)の件数が増加傾向にあります。
レコフデータによると、2000年における物流会社のM&A件数(公表ベース)は20件台でした。
しかしその後は増加していき、2018年には72件を記録しました。[9]

運送会社や物流会社のM&Aが増加している背景には、後継者不足の深刻化があります。
帝国データバンクの調査によると、2020年における運輸業の後継者不在率は61.3%とのことです。[10]
後継者が不在の状況が続くと、事業承継できずに廃業する結果となります。

廃業を避ける目的で、後継者不足の運送会社が会社を売却するケースが増加していると考えられます。
また、人手不足や長時間労働などの課題を解決する手段として、運送業者が同業他社から事業や会社を買収するケースも多いと言われています。

M&Aによる事業承継や業界再編が活発化している現状を踏まえると、運送会社・事業の売却は有用な経営戦略の一環となるでしょう。

[1] 運送とは(コトバンク)
[2] 物流とは(コトバンク)
[3] 日本標準産業分類 大分類 H 運輸業,郵便業(総務省)
[4] 物流を取り巻く動向と物流施策の現状について(国土交通省)
[5] 貨物自動車運送事業者数(推移)(国土交通省)
[6] 日本のトラック輸送産業 現状と課題 2020(全日本トラック協会)
[7] トラック運送業 | 業種別開業ガイド(J-Net21)
[8] トラック運送業界の現状と課題、取組について(全日本トラック協会)
[9] 第171回 物流業界~トラック運送会社の最新M&A動向、変わる経営環境と増加する事業承継型M&A(MARR Online)
[10] 特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020 年)(帝国データバンク)

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運送業の売却相場

運送業の会社や事業を売却する上で、まず知っておくべきは売却価格の相場です。
売却価格の相場を知っておけば、買い手に安く買い叩かれる事態や、高値で打診してM&Aが成約しにくくなる事態を回避できるでしょう。

この章では、運送業における会社・事業売却の相場や、最終的な売買価格を算定する際のベースとなる企業価値の計算方法をご紹介します。

相場は「時価純資産+営業利益の2〜5年分」

運送業 売却相場

運送会社の売却相場には、他の業界と大きな違いは見られません。
一般的な中小運送会社によるM&Aでは、「時価純資産に営業利益の2〜5年分」を足し合わせた金額が相場となります。[11]
純資産に足し合わせる利益は「無形資産の価値(のれん代)」を表しています。

なお厳密に見ていくと、事業譲渡株式譲渡でも売却価格の相場は異なります。

事業譲渡によって一部の運送事業のみを売却する場合、譲渡する資産に事業利益の2〜5年を足し合わせた金額が相場となります。
運送業の売却相場(事業譲渡)

たとえば事業資産が2,000万円で事業利益が1,000万円の運送事業について、2年分の事業利益をのれん代として含める場合、売却相場は以下のとおり計算できます。

  • 相場 = 2,000万円 + 1,000万円 × 2 = 4,000万円

一方で株式譲渡では、以下の計算式で売却相場が求まります。

運送業の売却相場(株式譲渡)

たとえば時価純資産が2,000万円、営業利益が1,000万円、役員報酬が800万円の運送会社について、2年分の「営業利益+役員報酬」をのれん代として加味する場合、売却相場は以下のとおり計算します。

  • 相場 = 2,000万円 + (1,000万円 + 800万円) × 2 = 5,600万円

ざっくり売却の相場を知りたい時は「時価純資産+営業利益×2〜5」の式を活用し、手法に応じて最適な相場を知りたい時は「事業資産 + 事業利益 × 2〜5年」または「時価純資産 + (営業利益 + 役員報酬) × 2〜5年」の計算式を用いると良いでしょう。

M&A・事業承継
M&Aの相場【公認会計士が図解でわかりやすく解説】

M&Aの相場や企業価値の計算方法を、公認会計士が詳しく解説します。相場を知ることで、買い手は相場より高い金額での会社買収を避けられます。一方で売り手は、より高い金額で会社売却することも可能になります。(公認会計士 […]

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最終的には「企業価値」をもとに話し合いで決定する

実際の会社売却事業売却では、先に売り手の企業価値を求め、その金額をベースに交渉が行われた上で最終的な売買価格が決定されます。
企業価値の算定に際しては、業種や市場の成長性、事業規模、競合度合いなども考慮されます。
そのため、かならずしも相場と企業価値が近い金額になるとは限りません。

また最終的な譲渡価格は、企業価値に加えて買い手側の資産状況やM&Aに対する緊急度、想定されるシナジー効果なども考慮した上で決定します。
そのため、企業価値と譲渡価格も一致しない可能性があります。

つまり、実際に会社や事業を売却する際の金額はケースバイケースというわけです。
場合によっては相場とかけ離れた金額でM&Aが成立することもあるため、相場を鵜呑みにしないように注意が必要です。

企業価値の算定方法

企業価値算定

企業価値の算定方法は、大きく「コストアプローチ」、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3種類に大別されます。
それぞれメリットとデメリットが異なるため、状況に応じて柔軟に使い分けることが大切です。

コストアプローチ

コストアプローチとは、貸借対照表に記載された純資産の金額をベースに企業価値を計算する方法です。

具体的には、貸借対照表上の純資産をそのまま用いる「簿価純資産法」や、評価するタイミングにおける時価純資産をベースに用いる「時価純資産法」などの手法があります。
見てもらうと分かるとおり、先ほど紹介した相場の算定方法はコストアプローチに基づいたものです。

貸借対照表を用いるため、客観性の高い企業価値を計算できます。
ただし、将来の収益性を一切反映できないため、この手法のみを単独で用いることは合理的ではないと言われています。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、評価対象となる企業の収益性を基準に企業価値を評価する方法です。

具体的には、将来獲得するキャッシュフローを現在価値に割り引いたものを用いる「DCF法」や、将来の予想配当金を資本還元する形で企業価値を求める「配当還元法」などがあります。特にDCF法は、実務で頻繁に用いられている手法です。

インカムアプローチのメリットは、将来の収益力や対象企業に固有の事情を反映できる点です。
そのため、中小から大企業に至るまであらゆる運送会社のM&Aで用いられています。

ただし企業価値算定の根拠となるキャッシュフローや配当金、利益には、売り手が作成した事業計画書に記載されたものを用います。
そのため、「売り手側の主観や恣意が入り込みやすく、客観的な企業価値を求めるのが難しい」という点がデメリットとなります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、株式市場や同業他社、類似のM&A事例などを基準に企業価値を計算する方法です。

具体的には、事業内容が類似する上場企業の株価倍率(EBITDA、PERなど)を用いる「類似会社比較法」や、過去の類似したM&A取引の価格を基準に用いる「類似取引比較法」などの手法があります。

類似する市場や取引、企業がベースとなるため、3種類あるアプローチの中で最も客観性の高い企業価値を算出できます。
客観性の高さから、上場企業や類似する上場企業が存在する非上場企業のバリュエーションでは積極的に活用されています。

ただし、「類似する上場会社がないケース場合には適用が向かない」、「一時的な市場株価の変動によって評価が歪められる」といった注意点もあります。

[11] 経営者のための事業承継マニュアル(中小企業庁)

M&A・事業承継
M&Aにおける価格算定の方法とは【図解でわかりやすく解説】

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運送・物流会社の売却・M&A事例

過去に行われた事例を参考にすると、会社売却や事業売却がどのように実施されるかをイメージしやすくなります。
そこでこの章では、運送・物流会社の売却事例を10個取り上げて、M&Aの目的・背景や用いられた手法などをご説明します。

リコーロジスティクスによるSBSホールディングスへの株式の一部譲渡

譲渡企業の概要

リコーロジスティクスは、リコーグループの物流子会社として、複写機などの精密機器や機械部品、オフィス向け消耗品などのトラック配送事業を行っていました。
国内で100、海外で5拠点を持つ総合的なグローバルロジスティックス企業として活動していた点も特徴です。[12]

譲り受け企業の概要

SBSホールディングスは、主に「物流事業」、「不動産事業」、「その他事業(人材や環境、マーケティングなど)」という3種類の事業を行っています。

物流事業では、主に企業間における商品や原材料の輸配送、保管、二駅、包装、流通加工などを展開しています。
トラック輸送に関しては、3,000台のトラックを所有することで全国をカバーしています。[13]

売却の目的・背景

ドライバーの人手不足と物流量の増加が重なることで、物流業界を取り巻く経営環境は厳しくなっています。
そのような背景から、同社の物流業務を強化する目的でSBSホールディングスに対する株式の売却が行われました。

同じ運送事業を行うSBSホールディングスとのM&Aを実施することで、資本や人的リソース、ノウハウの導入による成長スピードの加速や競争力強化を実現する狙いだったとのことです。

売却の手法・成約

2018年8月、発行済株式の66.6%を売却する形でM&Aが実施されました。
なお本件の株式の譲渡価額は180億円とのことです。[14]

M&A・事業承継
子会社売却とは?流れやメリット、手法、税金、事例を徹底解説

子会社の売却には、「不採算事業の切り離し」や「売却収入の獲得」などのメリットがあります。今回の記事では、公認会計士が子会社を売却する流れや理由、手法、メリット・デメリット、税金などを詳しく解説します。(公認会計士 前田 […]

東洋運輸倉庫によるSBSホールディングスへの株式譲渡

譲渡企業の概要

東洋運輸倉庫は、通関業や倉庫業、貨物運送取扱業などを行う会社です。

譲り受け企業の概要

SBSホールディングスは、先ほど取り上げたとおり運送業をはじめとした総合的な物流サービスを展開する企業です。

売却の目的・背景

本件の会社売却に至った背景には、国内人口の一極集中や電子商取引の普及にともない、首都圏近郊における倉庫需要が拡大したことにあります。

買い手側のSBSホールディングスは、上記の事情から東京臨海エリアにおける最先端倉庫への投資を積極的に進めていました。
その一環として、東京臨海部の東大荻島と若洲に大型倉庫を保有する東洋運輸倉庫の買収が実施された次第です。

一方で売り手の視点から見ると、安定的な財務基盤を持つ企業の傘下に入ることで、シナジー効果の獲得や新たな顧客層へのアプローチが可能になったと考えられます。

売却の手法・成約

2021年1月、全ての発行済み株式を売却する形でM&Aが実行されました。会社売却の価額は72億円にのぼりました。[15]

パナソニックロジスティクスによる日本通運への株式の一部譲渡

譲渡企業の概要

パナソニックロジスティクスは、貨物の運送をはじめとした物流の業務を総合的に行う会社でした。
電化製品の生産・販売に関する知識とノウハウを活かし、電機物流の業界で高い納入品質を実現していた点が特徴的です。[16]

譲り受け企業の概要

日本通運は、国内・国際運送を主力事業とする会社です。
陸・海・空、すべての手段を柔軟に組み合わせて状況に応じて柔軟に物流を実現できる点が同社の強みです。[17]

売却の目的・背景

本件の株式売却は、パナソニックグループにおける運送・物流の競争力を高める目的で実施されました。
総合物流企業である日本通運の国際的なネットワーク、および物流の最適化につながるさまざまなノウハウを取得することで、成長性と収益性の向上を実現しています。[18]

売却の手法・成約

2014年1月、パナソニックロジスティクスは発行済株式の66.6%を売却するスキームで売却を行いました。[19]

ケーワイケーによるトナミホールディングスへの株式譲渡

譲渡企業の概要

ケーワイケーは、電子顕微鏡などの精密機械や建設機器などの工業製品、化粧品・医薬品といった幅広い製品の運送を主力事業としていた企業です。
また主力の運送業以外にも、倉庫事業や企画販売事業(ノベルティの制作など)も行っていました。[20]

譲り受け企業の概要

トナミホールディングスは、運送や倉庫をはじめとした総合的な物流サービスを提供する企業です。

売却の目的・背景

買い手側は、売り手が有していた運送力や地域密着型の配送サービスに関するノウハウを自社事業に活用する目的で買収を行いました。

一方で売り手は、トナミHDが保有する豊かな知見や経営資源を活用し、業務・業態の改善及び拡大を目指す目的で会社の売却に踏み切ったと考えられます。

売却の手法・成約

2018年6月、全株式を譲渡する手法で会社売却が行われました。[21]

桂通商によるエア・ウォーターへの株式の一部譲渡

譲渡企業の概要

桂通商は、青果や一般貨物の運送事業を行う会社です。
冷凍・冷蔵・常温という3種類の温度に対応する物流センターや敷地面積8万平米の物流センターを持つことで、スピーディーな運送を実現できる点が強みです。[22]

譲り受け企業の概要

エア・ウォーターは、産業ガスや医療、エネルギー、食品、物流、エアゾールなど、幅広く事業を展開している多角化企業です。[23]

M&Aの目的・背景

同社が公表したお知らせを確認する限り、ドライバー不足や法規制強化などにより、厳しさを増している運送業界で生き残る目的で株式の売却が実施されたと考えられます。
エア・ウォーター社が保有するインフラや経営資源を効果的に活用することで、事業の領域拡大を目指すとのことです。

M&Aの手法・成約

このM&Aは、2020年4月に発行済株式の90%を売却する形で実施されました。
本件のM&Aにより、桂通商はエア・ウォーターの連結子会社となっています。[24]

東京特殊電線による司企業への子会社株式の譲渡

譲渡企業の概要

東京特殊電線は、電線やケーブル加工品などの分野で製品の開発を行う会社です。
本件で売却対象となった東特運輸は、東京特殊電線における運送や貨物保管などを目的として設立された子会社でした。

譲り受け企業の概要

買い手となった司企業は、全国に70の営業拠点を持つ総合物流会社です。
一般貨物運送や自動車部品の運送をはじめとして、顧客視点でのサービス提供に努めています。[25]

売却の目的・背景

東京特殊電線が子会社の株式を売却した背景には、同社グループにおける貨物量が減少していたことがありました。
また本業と事業領域が異なることから、運送分野で利益を拡大することが困難な状況に置かれていました。

こうした事情を考慮して、運送業界で豊富な実績や拠点を持つ司企業に対して、子会社株式の売却が実行されたわけです。

売却の手法・成約

2016年3月に実施された本件のM&Aでは、東特運輸の発行済株式のうち、東京特殊電線が保有する55%の株式が売却されました。
その結果、東特運輸は東京特殊電線ではなく司企業のグループ会社となりました。

なお株式の売却価額は約1億9,980万円とのことです。[26]

北区小型運送によるHINODE&SONSへの株式譲渡

譲渡企業の概要

北区小型運送は、危険物や石油化学製品の貨物輸送において豊富な実績を持つ運送会社です。
危険物取扱者の資格を持つドライバーにより、安全で品質の高い運送サービスを提供している点が強みです。[27]

譲り受け企業の概要

買い手のHINODE&SONSは、総車両数1,000台を超える車両を抱える総合的な物流サービス会社です。
主力事業である運送・物流以外に、タクシーや人材派遣、観光など幅広く事業を多角化している点が特徴です。[28]

売却の目的・背景

会社売買の詳しい背景や理由は明らかにされていません。
買い手側のプレスリリースでは、M&Aによって新しい会社を迎えることで、グループ会社間による協力体制について一層の強化を図り、シナジー効果を創出することに努めるとしています。[29]

売却の手法・成約

2019年9月、全ての株式を譲渡する形でM&Aが実施されました。
具体的な譲渡価額は明らかになっていません。

タカラ物流システムによる両備ホールディングスへの事業譲渡

譲渡企業の概要

売り手となったタカラ物流システムは、宝ホールディングスの物流子会社です。
宝グループの酒類や食品を中心に運送事業を行うだけでなく、流通加工や通販など幅広く事業を行っています。[30]

譲り受け企業の概要

両備ホールディングスは、物流や交通、観光、ITなどの事業を展開する多角化企業です。
物流事業に関しては、東京から九州までの物流ネットワークをもつことで、柔軟な運送サービスを実現しています。[31]

売却の目的・背景

タカラ物流システムは、本業である宝酒造の物流に特化する目的で水宅配の事業を売却しました。
運送業界で深刻なドライバー不足が続く中で、限りある人的資源を業績が好調な本業に集中させるのは合理的な戦略と言えるでしょう。

売却の手法・成約

2016年3月、事業譲渡の手法を用いて本件のM&Aが実施されました。
売却対象となった事業は、およそ4億円の年間売上高を見込めるものだったとのことです。[32]

千葉三港運輸によるハマキョウレックスへの株式譲渡

譲渡企業の概要

千葉三港運輸は、千葉県を中心にトラックによる石油化学製品等の運送や保管・管理を行う会社です。

譲り受け企業の概要

買い手となったハマキョウレックスは、アパレルや医薬品、食品などを中心に、貨物自動車運送業や物流センター事業を運営する会社です。

売却の目的・背景

買い手側は、千葉三港運輸が有する石油化学製品に関する物流ノウハウや、新規顧客、首都圏における拠点の獲得を目的にM&Aを実施しました。

売り手側の目的は明かされていないものの、当時親会社であった日本コークス工業側に「売却利益の獲得」や「主力事業への集中」などの目論見があったと考えられます。

売却の手法・成約

2015年10月に発行済の全株式を売却する形でM&Aが行われ、千葉三港運輸はハマキョウレックスの連結子会社となりました。
譲渡価額は明らかにされていません。[33]

東航によるTRUTH LOGISTICSへの株式譲渡

譲渡企業の概要

売り手となった東航は、産業廃棄物の処理や事務所の移転、引越しなどを得意分野としている運送会社です。

譲り受け企業の概要

買い手のTRUTH LOGISTICSは、海上・航空輸送や通関ロジスティクスサービスを展開する会社です。

売却の目的・背景

売り手の運送会社が売却に至った背景には、経営者の高齢化と後継者不在がありました。
当時東航の経営者は70歳と引退のタイミングを迎えていましたが、後継者がいなかったために廃業の危機に直面していました。

そのような状況下で、顧客との関係性や社員の雇用を守りたいという一心で、会社を売却する手法で事業承継を行ったとのことです。

売却の手法・成約

本件の会社売却は、株式譲渡の手法により実施されました。
本件の株式譲渡により、売り手の経営者は無事に社員や取引先を引き継ぐことができました。
また、買い手側が「東航」という社名を残してくれた点でも、会社売却で得られたメリットは大きいと言えます。

一方で買い手側から見ても、自社のさらなる成長につながる陸路の運送会社を買収できた点で、実りのあるM&Aとなりました。[34]

成功事例
この“ご縁”は偶然か必然か。インターネットが繋いだ運命的なM&Aとは【M&A事例】

海上・航空輸送、通関ロジスティクスサービスを展開するTRUTH LOGISTICSの代表・青山誠公氏は、より事業を成長させるためにM&Aを検討し、ビズリーチ・サクシードに登録。そこで出会ったのは、陸路での運送業を営む有限 […]

[12] 物流サービス(SBSリコーロジスティクス)
[13] グループ事業(SBSホールディングス)
[14] リコーロジスティクス株式会社の株式譲渡契約締結に関するお知らせ(リコー)
[15] 東洋運輸倉庫株式会社の株式取得に関するお知らせ(SBSホールディングス)
[16] 日通・NPロジスティクスの3つの強み(日通・NPロジスティクス)
[17] サービス・ソリューション(日本通運)
[18] パナソニックロジスティクス株式会社の株式の一部譲渡に関する株式譲渡契約書及び株主間協定書の締結について(パナソニック)
[19] パナソニック ロジスティクス株式会社の株式の一部を譲渡(パナソニック)
[20] 運送事業部(ケーワイケー)
[21] 「株式会社ケーワイケー」の株式取得のお知らせ(トナミホールディングス)
[22] 桂通商の強み(桂通商)
[23] 事業・製品(エア・ウォーター)
[24] エア・ウォーター連結子会社化に関するお知らせ(桂通商)
[25] 会社概要(司企業)
[26] 子会社の異動を伴う株式の譲渡に関するお知らせ(東京特殊電線)
[27] グループ会社(HINODE&SONSグループ)
[28] サービス(HINODE&SONS グループ)
[29] HINODE&SONS/北区小型運送と株式譲渡契約を締結し、すべての事業を譲り受け(イー・ロジット)
[30] 業務案内(タカラ物流システム)
[31] サービス(両備グループ)
[32] 【両備ホールディングス】タカラ物流システムから水宅配事業を譲受(両備グループ)
[33] 千葉三港運輸株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(ハマキョウレックス)
[34] この"ご縁"は偶然か必然か。インターネットが繋いだ運命的なM&Aとは(ビズリーチ・サクシード)

M&A・事業承継
M&A成功事例40選 大企業・中小企業・業界別|2021年版

今回は大企業・中小企業別、業界別に厳選したM&A事例40選を紹介します。国内・海外の大企業事例から中小企業事例まで、譲渡・譲り受け企業の概要、M&Aの目的・M&A手法、成約に至るまでを解説します。 […]

運送・物流業界において会社・事業を売却するメリット

運送・物流業界の会社または事業を売却すると、「事業承継の実現」や「売却利益の獲得」などを含めて5つのメリットを得られます。
この章では、5つのメリットについて具体的に解説します。

後継者不足の運送・物流会社でも事業承継を行える

親族や従業員・役員の間に後継者の候補がいないと、たとえ業績が良くても会社を廃業せざるを得なくなります。
実際、2020年版中小企業白書によると、経営者の高齢化・後継者不足で休廃業・解散した企業のうち、およそ6割は黒字企業であるとのことです。[35]

以上のとおり、後継者不足は中小運送会社の存続を脅かす深刻な問題です。
ですが株式の売却によって支配権を第三者に譲渡すれば、会社を存続させることが可能です。

長年培ってきた運送業に関するノウハウや技術を後世に残せる点は、事業に思い入れがある経営者にとっては特に大きなメリットとなるでしょう。

会社や事業の売却による利益を得られる

運送会社・事業の売却によって利益を得られる点も大きなメリットです。

株式譲渡であれば経営者個人(原則)が株式の売却利益を、事業譲渡であれば会社が事業の売却利益をそれぞれ得られます。
基本的に営業利益の数年分に相当する多額の利益を得られるため、悠々自適な老後生活の実現や、主力事業や新規事業への大規模投資などが可能となります。

特に廃業するケースと比較すると、廃業手続き(解散登記や設備等の処分など)の費用がかからない上に売却利益を得られるため、会社売却の方が賢い選択肢と言えます。

大手グループの傘下に入ることで経営基盤を強固にできる

中小の運送会社が大手グループに会社・事業を売却すると、買い手グループの傘下に入ることになります。
自社と比べて資金力が大きい企業の傘下に入ることで、先行き不安から解消されて、安心した環境で事業を継続できるようになります。

また、大手企業が持つブランド力やネットワークなどの経営資源を活用することで、自社のみで事業を行う場合よりも成長の速度が高くなりやすいです。

ドライバーや社員が安心して働ける雇用先を確保できる

後継者不足を理由に運送会社をたたむと、そこで働いていたドライバーや社員は職を失ってしまいます。

一方で他の運送会社に会社を売却すれば、ドライバーや社員は買い手に引き継がれるため職を失わずに済みます。
特に大手の運送会社に売却すれば、業績が悪化して解雇される心配をせずに、ドライバーや社員は安心して働くことができるでしょう。

長年会社の成長に貢献してきた社員やドライバーのことを考えると、廃業よりもM&Aによって会社を残す道を選ぶのがベストです。

M&A・事業承継
事業売却による社員への影響・処遇【退職金の扱いも徹底解説】

事業売却では、基本的に売り手企業から買い手企業に社員の引き継ぎが行われます。この記事では、事業売却における社員への影響や転籍後の処遇、退職金の扱い、転籍を拒否する社員への対応などを詳しく解説します。(執筆者:京都大学文学 […]

債務や個人保証から解放される

株式譲渡によって運送会社ごと売却する場合、銀行などに対する債務も包括的に引き継がれます。
また、経営者保証ガイドラインで定められている一定の条件を満たせば、経営者が負っていた個人保証も高い確率で解除されます。

債務や個人保証から解放されれば、業績が悪化するリスクや、倒産した場合に個人で債務を返済する義務を負うリスクについて心配する必要がなくなります。
悩みごとが減るため、安心してその後の生活を過ごせるでしょう。

[35] 2020年版中小企業白書・小規模企業白書概要(中小企業庁)

運送・物流業界において会社・事業を買収するメリット

わざわざ高額な費用をかけて運送・物流会社・事業の買収が行われる理由は、買い手にとってもメリットが大きいからです。
この章では、買い手側が運送・物流業界の会社や事業を買収するメリットを3つご説明します。

運送業の事業規模を短時間で拡大できる

最大のメリットは、運送業の事業規模を短時間で拡大できる点です。
自力で運送事業の規模を拡大する場合、一からドライバー・従業員の採用活動や新規顧客の開拓、トラックや機械設備の取得などを実施する必要があるため、とても時間がかかります。

一方で運送事業を営む会社とM&Aを行えば、運送事業に必要なノウハウや人員などの経営資源、顧客や取引先を一度でまとめて取得できます。
そのため、運送事業の拡大に必要な時間を大幅に短縮できます。

また、設備や車両などの経営資源を中古の価格で取得できるため、M&Aの方が低コストで事業を拡大できる可能性もあります。

ノウハウの取得やシナジー効果により、生産性や収益性が向上する

運送事業を買収すると、ノウハウ取得やシナジー効果によって、生産性や収益性の向上も期待できます。

たとえば取り扱いが難しい商品を運送するスキルを持つ人材を取得すれば、新しい事業の領域に進出することで収益性を高められる可能性があります。
また、買収によって重複する部門のコスト削減や価格交渉力の強化などのシナジー効果を得られるケースも考えられます。

運送業への新規参入を低リスク・少ない時間で実現できる

買い手が運送会社ではない場合、買収によって運送業界に新規参入できます。

運送業に限らず、新しい事業を軌道に乗せるまでには、たくさんの費用と時間がかかると言われています。
加えて、まったくノウハウがない状態で始めるため、事業が成功する可能性はあまり高くない傾向があります。

一方でM&Aを活用すれば、すでに運送事業が軌道に乗っている会社(またはその事業)を取得できます。
必要なノウハウや顧客などがすべて揃った状態で運送事業を始められるため、新規参入にかかるリスクを軽減できます。

また、顧客獲得や人材採用・育成の手間もかからないため、運送事業で十分な利益を得るまでの時間の短縮にもつながります。

M&A・事業承継
M&Aのメリット・デメリットを買い手・売り手ごとに徹底解説

M&Aをする最大のメリットは時間を買えることです。買い手は新規事業や既存事業の拡大にかかる時間を買えます。売り手は投資回収・現金化の時間を短くできます。今回はM&Aのメリット・デメリットを解説します。 目 […]

運送事業のみの売買では「運送業許可」の引き継ぎに注意

運送事業の代表的な形態として挙げられるのは、「一般貨物自動車運送事業」です。
一般貨物自動車運送事業(以降は運送事業と呼びます)とは、簡単にいうとトラックを使用して荷物の運送を行うビジネスモデルです。

そんな運送事業を行うには、国土交通大臣または地方運輸局長から許可を得る必要があります。[36]
これを一般的に「運送業許可」と呼びます。

運送業許可を承継するには、国土交通省から認可を得る必要がある

貨物自動車運送事業法の第30条では、「国土交通大臣の認可を受けなければ、運送事業の譲渡および譲受の効力は生じない」と定められています。[37]

また、貨物自動車運送事業法施行規則の第17条により、事業譲渡の認可を申請する際には、以下の事項を記載した「事業の譲渡譲受認可申請書」を提出する必要があります。[38]

  • 譲渡人および譲受人の氏名または名称、住所(法人の場合は代表者の氏名)
  • 事業譲渡の価格
  • 事業譲渡の予定日
  • 事業譲渡を必要とする理由

加えて、申請書には以下の書類を添付する決まりとなっています。[39]

  • 事業譲渡契約書の写し
  • 事業譲渡価格の明細書
  • 定款や貸借対照表、資産目録などの資料(譲受人が現時点で一般貨物自動車運送事業を経営していない場合に必要)

つまり事業譲渡のスキームで運送事業(または許可)のみを売却するには、法律の定めに基づいて許可取得の手続きを行わなくてはならないのです。
自動的に引き継がれるわけではないため注意しましょう。

運送業許可を承継する主な要件

貨物自動車運送事業法の第30条3項では、「第5条および第6条の規定は、前2項の認可について準用する」と規定されています。[40]
したがって、買い手が運送事業の許可を引き継いで事業を行うには、第5条および第6条に規定された新規許可を受ける条件をクリアする必要があります。

許可を受ける要件は、第6条および公示されている処理方針の資料に詳しく規定されています。[41]
主な要件を簡潔にまとめると以下のとおりです。

  • 運送事業を運営する上で必要な資源(5台以上の車両や規模が適切な営業所、各種法律に抵触しない駐車場など)を確保している
  • 運行管理者や整備管理者、運転者を確保している
  • 運送事業に必要な資金(6ヶ月分の運転資金など)を確保している

実際の要件はとても複雑なので、運送事業の許認可に詳しい専門家の協力を得た上で、運送業許可の申請手続きを行いましょう。

[36] 一般貨物自動車運送事業(国土交通省 中部運輸局)
[37] 貨物自動車運送事業法第30条(e-Gov)
[38] 貨物自動車運送事業法施行規則第17条(e-Gov)
[39] 貨物自動車運送事業法施行規則第17条2項(e-Gov)
[40] 貨物自動車運送事業法第30条3項(e-Gov)
[41] 一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請の処理方針について(関東運輸局)

運送業の売却でおすすめの仲介会社・プラットフォーム

ドライバーとの雇用契約や運送業許可の引き継ぎなどを伴うため、運送業の会社・事業売却には業界に対する専門的な知見や経験が求められます。

したがって、なるべく運送業界での事業・会社売却を得意としているM&A仲介会社やプラットフォームを使うことが重要です。

この章では、運送会社・事業の売却を依頼する上でおすすめの仲介会社・プラットフォームを9種類取り上げ、それぞれの特徴をお伝えします。

日本M&Aセンター

日本M&Aセンターは、中小企業のM&A支援を29年にわたって行っている老舗の仲介会社です。

全国の地方銀行9割、956の会計事務所と提携するなど、国内でもトップクラスの情報ネットワークを構築している点が特徴です。
圧倒的な情報量と士業専門家によるサポートを強みとしており、累計で6,500件を超える成約実績を誇ります。

相談は無料ですが、売り手と買い手のそれぞれに着手金が発生します。
なお会社や事業の売却後に支払う成功報酬は、移動総資産ベースのレーマン方式で算出されます。[42]

M&A・事業承継
会社売却の相談はどこにすべき?相談先一覧と選び方を徹底解説

会社売却の相談先には様々な種類があり、相談内容や相談時期、コストなどを考慮し適切な相談先を選ぶことが重要です。各相談先の特徴とメリット、注意点、選び方のポイントをわかりやすく解説します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法 […]

M&Aキャピタルパートナーズ

M&Aキャピタルパートナーズは、東証一部に上場している仲介会社です。
社内外の専門チームと連携しつつ、専任のコンサルタントが一貫して運送会社・事業の売却をサポートする点が特徴です。

また同社は、着手金や月額報酬を無料としている点を強みとしています。

支払う手数料は、中間報酬(基本合意契約を締結した際にかかる費用)と成功報酬の2種類です。
具体的には、成功報酬の10%を中間報酬として支払い、残りの90%をM&Aが成立した時点で支払う仕組みとなっています。

なお成功報酬は、株式価値をベースとしたレーマン方式で算出されます。[43]

インテグループ

インテグループは、中堅・中小企業のM&A支援で豊富な実績を持つ仲介会社です。

同社が持つ最大の特徴は、完全成功報酬制で仲介サービスを提供している点です。
着手金はもちろん、中間報酬などの費用も一切かからないため、会社や事業を売却していないのに手数料を支払う心配はありません。

M&Aが成立した時点で手数料を支払うため、予算に余裕がない運送会社・事業の売却に適しています。

なお成功報酬は、売買金額ベースのレーマン方式によって計算されます。
ただし売却金額が1億円以下の場合には、成功報酬の最低額が500万円となります。[44]

ストライク

ストライクは、日本で初めてインターネット上のマッチングサービス「SMART」を展開した仲介会社です。
ウェブサイトやメールマガジン、人的ネットワークを最大限活用して掲載された情報を発信してくれるため、自社に合う売却相手が見つかりやすくなります。

また、運送業の会社・事業を売却する相手が見つかった後は、経験豊富なアドバイザーが交渉をサポートするため安心です。

なお支払う手数料は、着手金と成功報酬の2種類です。
着手金や成功報酬の計算方法は非公開であるため、詳しく知りたい場合は同社にお問い合わせする必要があります。[45]

クラリスキャピタル

クラリスキャピタルは、中堅中小企業のM&Aに特化した仲介会社です。
中堅中小企業に特化しているというだけあり、取引価格が1億円未満のスモールM&Aにも対応しています。

同社は完全成功報酬制を採用しており、成功報酬の最低金額は200万円と業界トップクラスで最安値です。
また、成功報酬の算出で用いるレーマン方式について、同業他社よりも料率が低い点も経営者にとっては利点の1つです。

ただし、他のM&A仲介やアドバイザリー会社も利用している場合には、最低成功報酬の金額は500万円となります。
また、クロスボーダーM&Aの場合に通常よりもレーマン方式の料率が高くなったり、アドバイザーと顧問契約する場合には別途で月額費用がかかったりします。[46]

運送会社・事業を売却する際には、追加で発生する料金も考慮した上で請求される費用を見積もりましょう。

Batonz

Batonzは、仲介大手の日本M&Aセンターが運営するM&Aプラットフォームです。
仲介サービスと比較して、安い料金で利用できる点が特徴です。

また、価格相場データやM&Aの実務に役立つツールの提供を受けられたり、売り手は成約サポーターから無料で支援を受けることができたりと、サポート体制が充実している点も特徴の1つです。
加えて、平均3.5ヶ月での成約を実現しているため、早急に運送会社・事業を売却したい方に向いているサービスと言えます。

なお手数料に関しては、売り手は原則無料(専門家のサポートを利用する場合は別途で料金が発生)、買い手は成約金額の2%(最低25万円)となっています。[47]

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M&Aマーケット

M&Aマーケットは、会員登録や案件登録、メッセージのやりとりなどを無料で行えるマッチングサービスです。
案件を登録し、その案件に興味を持った買い手と交渉を進める形で運送会社・事業を売却できます。

手数料としては、中間報酬(成功報酬の10%)と成功報酬の2種類です。
成功報酬の算出には、一般的な仲介会社と同様にレーマン方式が用いられています。
なおレーマン方式は、株式の譲渡価額がベースとなります。[48]

TRANBI

TRANBIは、自身も事業承継を経験した代表によって創業されたM&Aのプラットフォームです。
M&Aのマッチングのみならず、企業間提携(業務提携資金調達など)や人材採用などのサービスも提供している点が特徴です。

登録した案件には平均15社の買い手が見つかっているため、数ある候補から希望に沿った売却相手を見つけやすいと言えます。
また、プロのライターが作成するインタビュー記事を掲載することで、自社事業の魅力を最大限アピールするサービスも利用できます。

売り手側は完全無料で運送の会社・事業を売却できます。
一方で買い手は、プレミアムプラン(月額3,980円〜)に加入することで、その他の手数料を支払わずにM&Aを実施できます。
ただし2021年1月20日以前に開始された交渉などの場合は、買い手側に成約価額の3%(最低30万円)が成功報酬として請求されます(売り手は無料)。[49]

M&A・事業承継
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スピードM&A

スピードM&Aは、売り手と買い手が直接交渉するタイプのプラットフォームです。

売却価格が100万円〜1億円の小規模な案件でも掲載できるため、個人経営しているような運送会社の売却にも適しています。
また、事業や会社の売却に際して困ったことがある場合には、M&Aのコンサルタントが無料で相談してくれるため安心です。

利用料については、売り手および売り手側の専門家は無料となっています。
一方で買い手および買い手側の専門家については、完全成功報酬制(最低20万円)となっています。
なお成功報酬は独自のレーマン方式が採用されており、他社のレーマン方式と比べると良心的な料率となっています。[50]

M&A・事業承継
M&A仲介とFAの違いを図解で解説【仲介会社20選も紹介】 

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運送会社のM&A・売却ならビズリーチ・サクシード

ビズリーチ・サクシードは、完全審査・会員制のM&Aプラットフォームです。

審査を通過した優良企業のみが利用できるため、本気でM&Aを行いたい企業と交渉を進めることができます。
また、自ら運送事業を売却したい相手を検索する機能もあります。

売り手側は完全無料でサービスを利用できるため、予算に余裕がない運送会社・事業でも安心して売却手続きを進めることが可能です。[51]
なお買い手側にかかる手数料も、1.5%〜2%と低率です。

料金が安い上に、不明点があればオンライン上で随時サポートを受けることができるため、初めて会社や事業を売却する形でも安心して利用できるでしょう。

運送領域のM&Aに詳しい専門スタッフが、無料でご相談から価値算定まで承ります。
また、グループ会社として、物流プラットフォームのトラボックス社と提携しており、成約実績もございます。

多種多様な買い手企業のご紹介が可能です。お気軽にご相談ください。

【運送業界専門のM&A・売却相談サポートはコチラ(無料

[42] 料金について(日本M&Aセンター)
[43] 着手金無料のM&A(M&Aキャピタルパートナーズ)
[44] 手数料・費用・料金体系(インテグループ)
[45] ストライクのM&A仲介サービス(ストライク)
[46] 料金体系(クラリスキャピタル)
[47] Batonz利用料金(Batonz)
[48] はじめての方へ(M&Aマーケット)
[49] 利用料金(トランビ)
[50] 利用料金(スピードM&A)
[51] サービス紹介(ビズリーチ・サクシード)

まとめ

経営者の高齢化や人手不足などの影響により、運送業の会社・事業売却は増加傾向にあると言われています。

そんな運送業の売却相場は、およそ「時価純資産+営業利益の2〜5年分」となります。
ただし実際の売却価格は、買い手との交渉によって決まるため注意が必要です。

事業承継の実現や売却利益の獲得など、運送業を売却して得られるメリットは多いです。
今回ご説明したメリットや事例を参考にしつつ、ぜひ運送会社・事業の売却にチャレンジしてみてください。

ビズリーチ・サクシードに掲載されている運送業のM&A案件一覧はこちら

M&A・事業承継
物流会社の売却・M&A事例とメリット【2021年最新版】

物流会社の売却・M&A事例を25例解説します。実際のM&Aをイメージしやすいように、事例毎にM&Aの目的や売却額を紹介します。また、物流事業を売却するメリット、売却価格の相場もわかりやすく説明しま […]

(執筆者:中小企業診断士 鈴木 裕太 横浜国立大学卒業。大学在学中に経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士資格を取得(休止中)。現在は、上場企業が運営するWebメディアでのコンテンツマーケティングや、M&Aやマーケティング分野の記事執筆を手がけている)
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