スモールM&Aとは?案件の探し方・注意点・事例10選を解説

スモールM&Aとは、中小企業や個人など譲渡金額が小さいM&Aのことです。後継者不足等を背景に近年、スモールM&Aが増加しています。今回は案件の探し方、手続きの流れ、手法、注意点、成功事例を解説します。

スモールM&Aとは?

スモールM&Aとは、小規模な事業・会社による買収・売却を意味します。法律上で明確に規定された用語ではないため、事業者によって定義は異なります。一般的には、下記いずれかの定義に合致する案件をスモールM&Aと呼びます。 

  •   売り手・買い手の片方もしくは双方の年間売上高が1億円以下
  •   売買金額が1億円以下

 たとえば個人で運営する飲食店や美容室の売買がスモールM&Aの最たる例です。また、IT市場の拡大に伴い増えているWebサイトの売買も、上記の定義に当てはまるためスモールM&Aと呼べるでしょう。 

スモールM&Aが注目されている理由

M&Aが注目されている背景には、経営戦略としての有用性が広く知れ渡ったことや、イグジットの手段としてM&Aを選択するベンチャー企業の増加など、あらゆる理由があります。ただしスモールM&Aに限定すると、その需要が高まっている最大の理由は「事業承継の代替手段として需要が増えていること」であると考えられます。

2019年度中小企業白書によると、2018年時点において、もっとも多い中小企業経営者の年齢は69歳となっており、1995(47)と比べて22歳も高齢化が進んでいます。[1]同じく中小企業庁が公表した中小M&Aガイドラインでは、2025年までに平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者はおよそ245万人にのぼると見られており、今後も中小企業における経営者の高齢化は進行すると予想されます。[2]

一方で、経営者の高齢化が進む大半の中小企業では、後継者不足という深刻な課題に悩まされています。東京商工リサーチによると、60代経営者の40.9%70代経営者の29.3%80代経営者の23.8%が後継者不足に悩んでいるとのことです。[3]

後継者不足に悩む中小企業が増加している影響で、止むを得ず黒字廃業という選択を行う企業も増えています。2017年度中小企業白書によると、廃業した中小企業のうち50.1%が黒字だったとのことです。一概には言えないものの、後継者が不在だったために、止むを得ず黒字でありながら廃業という選択を選んだ企業は多いと考えられます。[4]

上記の事情から、注目されているのがスモールM&Aにより事業承継を果たす方法です。親族や会社内に後継者がいなくても、スモールM&Aにより第三者に会社や事業を譲渡すれば、実質的に事業承継を果たすことができるからです。

株式会社レコフによると、事業承継型のM&A件数は年々増えており、2018年には過去最高の543件を記録したとのことです。2011年からの8年間で4倍以上に急増していることから、事業承継を目的としたスモールM&Aの需要が急増していることが理解できるでしょう。[5]

 

[1]中小企業白書2019年度(中小企業庁)
[2]中小M&Aガイドライン(中小企業庁)
[3]2019年「後継者不在率」調査(東京商工リサーチ)
[4]中小企業白書2017年度(中小企業庁)
[5]事業承継とは(株式会社レコフ) 

スモールM&Aをするには?

スモールM&Aを行うには、「マッチングサイトの活用」、「仲介会社の利用」、「専門家への相談」、「引き継ぎ支援センターの利用」という4種類の方法が役立ちます。 

この章では、それぞれの方法について具体的に解説します。 

M&Aマッチングサイトを利用する

スモールM&Aを行う際には、最初にマッチングサイトを利用するのがおすすめです。マッチングサイトとは、インターネット上で売り手と買い手をつなげるサービスです。 

マッチングサイトを利用する最大のメリットは手軽さです。売り手は、自社の業種や売上高、希望譲渡金額などを登録するだけで、自社とのM&Aを希望する買い手を探すことが可能です。一方で買い手は、業種や売上高などから条件を絞って検索することで、比較的容易に希望に合う会社や事業を見つけることができます。

加えて、仲介会社や専門家などに依頼する場合と比べて、比較的安い手数料でスモールM&Aを行える点も大きなメリットです。スモールM&Aでは売買金額が少ないため、手数料の割合や金額が大きいほど、相対的に売り手の負担は大きくなってしまいます。そう考えると、少ない手数料でスモールM&Aを行える点は、特に売り手にとって魅力的なメリットでしょう。

一方で、他の方法と比べて仲介会社や専門家からのサポートは手薄な傾向があります。中には、一切アドバイザーが介入しないマッチングサイトもあり、そうしたサービスを利用すると大きなトラブルに発展する恐れがあります。 

M&A仲介会社を利用する

スモールM&Aに限らず、M&Aの相手探しでメジャーな方法なのが仲介会社の利用です。M&Aの仲介会社とは、売り手と買い手のマッチングから契約締結までのプロセスを一貫サポートする専門業者です。

M&Aの業務には、会計や法務、税務など幅広い分野の専門知識や経験を要します。M&A仲介会社には各分野の専門知識を有する人材が在籍しているため、契約面の交渉や企業価値の算定、デューデリジェンスなど、あらゆる場面で質の高いサポートを受けられます。質の高いサポートを受けることで、売り手・買い手双方にとって納得がいく形でM&Aを行えるため、M&Aが失敗する可能性(損失を被ったり、トラブルに発展したりする可能性)を減らせるでしょう。

 また、幅広いネットワークを駆使して、全国各地から自社に最適なスモールM&Aの相手を探してくれる点もメリットです。自ら案件を探す必要がないので、本業と並行しながらでも進められます。

ただし、手数料の相場は比較的高いので注意が必要です。仲介会社によって異なるものの、売買金額の数%に上る成功報酬の他にも、交渉途中で白紙になっても返金されない着手金や月額報酬など、多様な手数料を設定しているところが多いです。中には、成果報酬に数百万円に上る最低手数料を設定している仲介会社もあります。このように仲介会社にサポートを依頼すると、一般的に少なくとも数百万円〜数千万円もの手数料が発生します。

売買金額が数億円〜数十億円になるM&Aであれば負担は少ないものの、売買金額が数百万円〜数千万円程度のスモールM&Aの場合、売買金額に占める手数料の割合が大きくなり、相対的に負担が重くなります。

ただし近年は、スモールM&Aに特化している仲介会社も少なくありません。このような仲介会社に依頼すれば、比較的少ない手数料で案件の成約をサポートしてくれます。スモールM&Aを行う方は、小規模な案件に特化しているM&A仲介会社を選ぶのがポイントです。 

専門家(税理士・会計士・弁護士)に相談する

前述したように、スモールM&Aでは会計や税務、法務などの分野に関する専門知識を要します。個人で行うにはハードルが高いので、各分野の専門家(税理士や会計士、弁護士など)に相談するようにしましょう。

専門家にスモールM&Aのサポートを依頼するメリットは、専門知識を要する業務において質の高いサポートを行ってもらえる点です。たとえば弁護士に依頼すれば、契約書の作成や法務デューデリジェンスなど、法律に関係するM&Aの業務を幅広くサポートしてもらえます。

ただしマッチングサイトや仲介会社と比べると、案件探し(マッチング)の面におけるサポートは十分に受けられない可能性があるので注意です。確かに弁護士や税理士の中には、顧客の中にM&Aを希望する事業者がいないわけではありません。とはいえM&Aのマッチングが本業ではないため、自社に適したM&A相手を持っている可能性は高くないでしょう。

事業引き継ぎ支援センターを利用する

スモールM&Aでは、国が運営している事業引き継ぎ支援センターの利用もおすすめです。事業引き継ぎ支援センターとは、後継者不足に悩んでいる中小企業・小規模事業者に対して、M&Aによる事業承継をサポートする目的で設置された機関です。事業引き継ぎ支援センターは、各都道府県に設置されています。[6]

そんな事業引き継ぎ支援センターでは、M&Aに関する相談を無料で行うことができます。金融機関のOBや公認会計士、中小企業診断士など、各部門のプロフェッショナルが相談に対応してくれるため、無料ながら質の高いアドバイスを受けられます。スモールM&Aについて知りたい事柄があるときはもちろん、民間の仲介会社を利用する際のセカンドオピニオンとしても活用できるでしょう。

また、全国各地のネットワークや案件情報が掲載されたデータベースを駆使して、自社に適した買い手候補を紹介してもらえる点も魅力の一つです。民間のM&A仲介会社では断られるような案件でも、弁護士や税理士などの専門家と連携し、成約をサポートしてくれるとのことです。

魅力的なメリットが多いですが、バリュエーションなどの実務面を依頼する場合には、外部の専門家への依頼費用がかかるので注意しましょう。

 

[6]事業引継ぎ支援とは(独立行政法人 中小企業基盤整備機構) 

スモールM&Aの種類

スモールM&Aでは、主に株式譲渡と事業譲渡の手法が用いられます。反対に、合併や会社分割、株式移転などの組織再編の手法は、あまり用いられておりません。

この章では、スモールM&Aで広く用いられている「株式譲渡」と「事業譲渡」について、特徴やメリット・デメリット、手続きなどを解説します。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の株主が保有する株式を買い手に譲渡する形で、経営権を買い手に移転する手法です。株式譲渡は、直接株式の売買を行う「相対取引」と、市場で株式の売買を行う「市場買付け」の2種類に大別されます。中小企業は上場していないケースがほとんどなので、基本的には相対取引によってスモールM&Aが行われます。

株式譲渡では、株主総会の承認や債権者保護手続き、法務局での変更登記といった面倒な手続きが不要です。主に「譲渡承認の請求」と「取締役会(株主総会)での決議」、「契約締結」、「株主名簿の書き換え」という4つの手続きのみで実施できます。手軽かつ迅速に手続きを済ませられる点は、スモールM&Aを行いたい経営者にとっては最大のメリットといえるでしょう。

また、過半数の株式を取得すれば実質的に経営権を確保できるため、反対する株主がいてもM&Aを実施できる点も魅力の一つです。

ただし、会社の経営権ごと引き継ぐ仕組み上、簿外債務(未払いの残業代など)や偶発債務(訴訟により損害賠償を背負うリスクなど)も同時に引き継ぐ必要があります。したがって、買い手にとっては比較的リスクが大きいM&Aの手法です。

少しでもリスクを軽減するためにも、売り手企業に対するデューデリジェンスを入念に行い、リスクを考慮した上で買収価格や売買可否の決定を行うことが重要です。

加えて、売り手企業の法人格がそのまま残るため、完全に複数の企業が一つに統合される合併と比べると、シナジー効果が発揮されにくいデメリットもあります。

事業譲渡

事業譲渡とは、売り手企業が有する事業の一部またはすべてを買い手側が買収する手法です。株式譲渡とは異なり、株式(経営権)を移転するのではなく、事業に関係する資産や権利・義務、無形資産(ノウハウや取引先など)を移転するのが特徴です。

事業譲渡では、どの資産や権利・義務を売買するかを一つずつ選ぶことができます。そのため、買い手側は不必要な資産や簿外債務、偶発債務を引き継がずに済みます。一方で売り手側も、不必要な事業のみを売却し、その利益を本業や新規事業に投資することが可能です。

ただし契約関係を引き継ぐには、一つ一つ従業員や取引先からの同意を得る必要があります。また、会社法第467条の規定により、事業の全部譲渡や重要な一部の譲渡などのケースに該当する場合には、株主総会の決議を行う必要があります。[7]株式譲渡と比べると、スモールM&Aに要する手間や労力、時間は大幅に増える可能性が高いので注意しましょう。

一方で売り手にとっては、会社法第21条に規定されている競業避止義務の存在が大きなデメリットです。競業避止義務とは、「別段の意思表示がない限り、売り手側は同一市町村および隣接する市町村において、事業譲渡日から20年間にわたって同じ事業を行ってはならない」とする義務のことです。[8]買い手側との間で排除する規定を設けない限り、しばらくは同一地域で同じ事業を行えなくなるので十分に注意しましょう。

 

[7]会社法第467条(e-gov)
[8]会社法第21条(e-gov) 

スモールM&Aの手続き・流れ

スモールM&Aの手続きは、一般的なM&Aと変わりありません。具体的な手続きは、下記6つの流れで進めていきます。 

手順1:事前検討・準備

スモールM&Aを行うには、まずは事前の検討と準備が欠かせません。具体的には、「磨き上げ」、「M&Aの目的・方針の整理」、「M&Aアドバイザーの選択」という3つの手続きを行います。 

磨き上げ

スモールM&Aを検討する売り手は、早いタイミングで磨き上げを行っておくのがベストです。磨き上げとは、企業価値を高めるための取り組みを意味します。あらかじめ磨き上げにより企業価値を高めれば、より高い値段でスモールM&Aを成約させたり、スピーディーに理想の買い手が見つかったりする可能性を高める効果を期待できます。反対に、磨き上げを行わずに債務超過や赤字の状態を放置すると、時間がたっても買い手が見つからなかったり、希望の条件で売却できなかったりする恐れがあるので注意しましょう。

磨き上げの具体的な手段は、主に「強みの確立」と「内部統制・ガバナンスの構築」の2種類です。前者については、たとえば創意工夫を施すような社内風土の醸成や知的財産権の獲得、セミナーなどの活用によるノウハウの獲得などが効果的です。後者については、管理職への権限委譲や社内における情報の流れの可視化、就業規則の作成などが役に立ちます。

スモールM&Aの目的や方針等の整理

スモールM&Aは、事業規模の拡大や多角化といった目的を達成する手段です。目的が明確でない状態でM&Aを行うと、費やしたコストや時間が無駄になったり、期待していた効果を得る上で妥当ではない相手との売買となったりする可能性があります。 

そうならないためにも、まずはスモールM&Aを行う目的を明確にしなくてはいけません。目的を考える際には、全社的な経営戦略や各部門の事業戦略に基づいて、それを達成する上で本当にM&Aが役に立つかを検討するのが重要です。

目的を決定したら、希望するM&Aの相手やスケジュール、売買価格、M&A後の事業展開などの方針も決定しておきましょう。あらかじめ目的と方針を明確化しておけば、期待とは異なる結果に終わるリスクを低減できます。

M&Aアドバイザーやプラットフォームの選択

磨き上げやスモールM&Aの目的・方針の整理を終えたら、次はサポートを依頼するM&Aアドバイザー、またはプラットフォームを選びます。 

スモールM&Aでは、会計や税務などの専門知識を要する業務が多いため、経営者や従業員のみで実施するのは非常に困難です。そうした事情から、M&Aの業務に精通しているM&Aアドバイザー(仲介会社や士業、金融機関など)、およびプラットフォームに、スモールM&Aのサポートを依頼するケースが多いわけです。

特にプラットフォームは、M&Aアドバイザーに依頼する場合と比べて、少ない手数料で案件を探せるのでオススメです。

M&Aアドバイザーやプラットフォームを選ぶ上で注意すべきは、報酬体系や業務の範囲、得意分野、サポートの質が業者によって大きく異なる点です。少しでも円滑にスモールM&Aを成功させるためには、下記の条件を満たすアドバイザーまたはプラットフォームを選ぶとよいでしょう。 

  •   実績が豊富にある
  •   利用者からの評判が良い
  •   報酬の料金体系が明確かつ良心的
  •   業務に関する説明が具体的
  •   なるべく広い範囲の業務をサポートしてくれる

手順2:交渉相手の選定

M&Aの準備や検討を一通り終えたら、M&Aアドバイザーの協力を得ながら、交渉相手(買い手・売り手候補)の選定を行います。

交渉相手の選定プロセスは、「ノンネームシートの提供・確認」「秘密保持契約の締結」「売り手企業の詳細情報の提供・確認」という順番で進めるのが一般的です。 

ノンネームシートの提供・確認

交渉相手の選定は、基本的に仲介会社などのアドバイザーが行ってくれます。交渉相手にアプローチする際に、まず行われるのがノンネームシートの提供と確認です。 

ノンネームシートとは、どんな会社か特定されない範囲で、売り手企業の情報をまとめた資料です。ノンネームシートには、主に事業内容や売上高、従業員数、所在地などの情報が抽象的に記載されています。企業名が特定されない範囲の情報のみを提供することで、売り手企業の情報漏洩を防ぐ効果があります。

 買い手企業は、仲介会社などから受け取ったノンネームシートを確認し、その企業との交渉を進めるかどうかを判断します。

ノンネームシートを確認する上で買い手側が注意すべきは、「あくまで抽象的な情報しか記載されていない点」です。ぱっと見の業績や商品が悪くても、実は財務諸表に載っていない貴重な取引先リストを持っていたり、将来性が高い新規事業に取り組んでいたりする可能性があります。したがって、ちょっとでも興味や可能性を感じたら、具体的な情報を得るまで結論を出さない方が得策です。

秘密保持契約の締結

ノンネームシートを見て、売り手候補とのスモールM&Aに興味を持った買い手は、その旨を仲介会社に伝えれば、売り手企業の詳細情報を確認できます。ただし、売り手にとっては情報漏えいのリスクがあるため、買い手側は詳細情報を受け取る前に「秘密保持契約」を締結するのが一般的です。

秘密保持契約とは、買い手側が知った売り手の情報について、M&A以外の目的に使用したり、第三者に開示したりすることを禁止する契約です。秘密保持契約には、主に下記の内容が盛り込まれます。 

  •   秘密情報の定義(どのような情報が秘密に当たるか)
  •   秘密保持義務の内容(どのように秘密情報を扱うべきか)
  •   損害賠償責任(義務を怠った場合の損害賠償について)

売り手企業の詳細情報の提供・確認

買い手と売り手の間で秘密保持契約を締結したら、売り手企業の詳細情報が買い手に提供されます。売り手企業の詳細な情報のことを「IM(インフォメーション・メモランダム」、詳細情報を開示する手続きを「ネームクリア」と呼びます。

IMには、企業名はもちろん、詳細な財務情報や会社概要、売り手が持つ強みなどが記載されています。この情報をもとに、買い手は売り手候補とのスモールM&Aの交渉を進めるかどうかに関して検討します。

なお入札によるスモールM&Aでは、売り手が買い手に対して、M&Aのスケジュールや条件、買い手の選定方法などが記載されたプロセスレターを交付します。 

手順3:交渉の実施

交渉相手の選定が終わったら、いよいよ本格的に交渉を進めます。一般的なスモールM&Aでは、「トップ面談」「条件面の交渉」「基本合意書の締結」という流れで手続きを実施します。 

トップ面談

トップ面談とは、売り手と買い手の経営者が顔を合わせて話し合いを行う手続きです。トップ面談は、相手経営者の経営理念や人間性など、資料では分からない部分を確認する目的で行います。具体的には、経営理念やスモールM&A後の運営方針などを確認し合うことで、「この人(会社)M&Aを行っても大丈夫かどうか?」を確認します。

 あくまでトップ面談は、経営者同士の顔合わせであるため、この段階では譲渡金額などの交渉は行わないのが一般的です。

条件面の交渉

トップ面談でお互いの考え方が分かったら、いよいよスモールM&Aの具体的な条件面を交渉します。このプロセスでは、売買金額や従業員の処遇、用いるM&A手法、スケジュールなどを決定します。 

基本的には、買収価格や使用するM&A手法、スケジュールなどが記載された「意向表明書」を作成・売り手に交付し、意向表明書の内容を前提に交渉します。ただし意向表明書の提出は任意なので、ゼロベースから交渉を進めるケースも少なくありません。

なお条件面の交渉では、売買価格をめぐって売り手と買い手の間で意見が対立しやすいため、注意しなくてはいけません。売り手は極力高く、買い手は極力安くM&Aを行いたいと考えるため、お互いの意見を言い合うだけでは交渉が平行線となります。したがって、お互いに相手の意見を尊重し、妥協できる点を見出すことが重要です。

また、売り手の財務状況や類似する売買事例などを参考に、あらかじめ企業(事業)価値を算出しておくのも良いでしょう。公平な視点で企業(事業)価値を算出しておけば、お互いが納得できる適正価格でのM&Aを実現しやすくなります。

基本合意書の締結

売り手と買い手の間で条件面について大体合意できたら、「基本合意書」と呼ばれるものを締結します。基本合意書とは、スモールM&Aについて双方が合意した事項を記載する契約書のようなものです。

基本合意書には、主に下記の内容を記載します。 

  •   契約の締結予定日
  •   売買金額
  •   従業員や経営者の処遇
  •   最終契約までのスケジュール
  •   譲渡対象の範囲
  •   デューデリジェンスに関する事項
  •   独占交渉権の有無
  •   法的拘束の範囲

 なお基本合意書は、あくまで仮の契約書のようなものです。後述するデューデリジェンスの結果次第で、M&Aを白紙にしたり売買金額に変更を加えたりする可能性もあるため、法的拘束力は持たせないのが一般的です。 

また、買い手の希望次第では、売り手が他の買い手候補と交渉することを禁止する「独占交渉権」を盛り込むケースも少なくありません。ただし売り手にとっては、より良い条件でのスモールM&Aの機会を逃すことに繋がるので注意しましょう。 

手順4:デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結が終わったら、「デューデリジェンス」と呼ばれる手続きを実施します。デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業を詳細に分析する手続きです。

デューデリジェンスは、M&Aおよびその後の事業運営に影響を及ぼす障害の発見や、企業価値に影響を与える事項の確認などを目的に実施します。調査を行う範囲は多岐にわたり、それぞれの調査には専門知識を要するため、弁護士や公認会計士などのプロに依頼するケースが多いです。

デューデリジェンスにおいて特に重要な5つの調査分野をご紹介します。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を用いて、分析対象の財務状況や将来的な収益性、不正取引などのリスクを洗い出します。 

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスでは、法的リスクの有無(人事労務や取引先との訴訟など)を調査します。また、スモールM&Aの実施後に事業を行う上で必要な許認可の有無も確認します。 

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスでは、過去の税務申告に誤りや漏れがないかを確認したり、スモールM&Aを実施した際に生じる税金を確認したりします。

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスでは、市場の成長性やビジネスの将来性、保有するノウハウやスキルが持つ競争優位性の程度、顧客や取引先の詳細などを調査します。また、自社とのシナジー効果がどの程度生じ得るかも分析対象です。

ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスでは、売り手が使用しているITシステムの種類や使い方、費用などを分析します。加えて、自社のITシステムとの互換性や、どうやってトラブルなく統合するかも考えるのが一般的です。 

手順5:契約の締結

買い手がデューデリジェンスの結果を確認し、売り手候補とM&Aを行っても問題ないと判断したら、いよいよ契約の締結手続きを実施します。契約締結のプロセスでは、主に「最終契約の交渉」「最終契約の締結」という流れで手続きを進めます。

最終契約の交渉

各種デューデリジェンスの結果を考慮して、最終契約に向けて最終的な交渉を行います。通常は、基本合意書で規定した内容(買収価格や従業員の処遇など)に問題ないかどうかを確認するのみです。 

ただし、デューデリジェンスで潜在的なリスクや新たなシナジー効果などが発見された場合には、その内容に応じて売買価格などの条件を変更することについて、問題ないか協議をおこないます。 

最終契約の締結

すべての交渉を終えたら、いよいよスモールM&Aの契約を正式に締結します。この段階では、法的拘束力を持つ契約書を実際に作成していきます。

最終的な契約書には、主に下記の内容を盛り込みます。 

  •   売買価格
  •   支払いの方法
  •   譲渡対象の範囲
  •   表明保証(開示した情報などが事実であることを保証すること)
  •   補償条項(特定の理由に該当する場合に、補償を行うこと)
  •   誓約事項(クロージングまでに向けて行うべきこと)
  •   解除条件
  •   クロージングの手続きと条件
  •   競業避止義務

手順6:契約後の諸手続き

最終契約を締結すれば、その時点でスモールM&Aの効力は発生します。しかし、契約を締結したからと言って、すべての手続きが終わったわけではありません。最終契約を締結した後には、「クロージング」と「PMI」という2つの手続きを実施する必要があります。

クロージング

クロージングとは、契約書の内容にしたがって経営権や各種の権利を移転する手続きです。たとえば株式譲渡によるスモールM&Aでは、売り手から株式の譲渡、買い手から対価の支払いが行われます。 

PMI

PMIとは、スモールM&Aのあとに売り手の会社と自社(買い手)の経営を統合する作業です。スモールM&Aによるメリット(シナジー効果の獲得など)を得るには、売り手と買い手の経営方針や業務システム、従業員の評価制度などが1つに統合されることが重要です。 

経営を1つに統合しないと、従業員の間における軋轢や、ITシステムの運用に支障をきたす事態が生じ得ます。そうならないためにも、スモールM&Aを行った買い手は、かならず計画的にPMIを進めるようにしましょう。 

クロージングとPMIの実施により、スモールM&Aの手続きはすべて完了です。 

スモールM&Aの注意点・トラブル

手続きの流れは一般的なM&Aと変わらないものの、スモールM&Aには特有の注意点やトラブルがあります。スモールM&Aの実施に際しては、下記3つの注意点・トラブルに用心しましょう。 

情報が不足しやすい

スモールM&Aで最も注意すべきなのは、情報が不足しがちとなる点です。 

一般的なM&Aでは、ある程度規模が大きい企業が売り手となるため、規則に沿って作られた財務諸表や経営計画書などはもちろん、インターネット上の口コミなど、豊富な情報をもとにM&A実施の可否や売買価格を決定できます。

 一方でスモールM&Aでは、主に個人事業主や零細中小企業、特定の事業単体など、比較的小規模な売り手が対象となりやすいです。そのため、財務諸表がしっかり作られていない、経営計画書が無いなどの理由で、情報不足になりがちです。

 情報が不足しがちな状態で無理にスモールM&Aを進めると、後から簿外債務が発覚して多大な損失をこうむったり、想定していたほど収益性が高くなく、買収に費やしたお金が無駄になったりするかもしれません。

 こうしたリスクを回避するには、売り手や仲介会社から提出される資料だけでなく、経営陣や従業員へのヒアリング、不動産の実地調査などをしっかり行うことが重要です。また、費用を出し惜しみせずに、しっかりと専門家によるデューデリジェンスを実施することも重要です。

仲介手数料の負担が相対的に大きい

M&A仲介会社などに支払う手数料の負担が相対的に大きい点も、スモールM&Aを行う上で注意すべきポイントです。

たとえば多くの仲介会社では、成功報酬の算定に「レーマン方式」とよばれる手法を用いています。この手法は取引金額が少ないほど高い手数料率となる仕組みであるため、売買金額が小さいスモールM&Aは必然的に負担はが大きくなります。 

また、先ほどもお伝えしたように、仲介会社の中には成功報酬に最低金額を設定しているところも少なくありません。最低金額はM&Aの規模に関係なく同じ金額なのが基本ですので、規模が小さいM&Aほど負担は大きいです。 

何も考えずに仲介会社を選ぶと、たとえスモールM&Aの成功により売却収益を得ても、手数料の負担が大きいことでほとんど手元に利益が残らないリスクがあります。

 したがって、スモールM&Aに特化した仲介会社やマッチングサイトを利用するなどして、手数料の負担を軽減するのがおすすめです。

従業員が離職するリスクがある

スモールM&Aでは、事業用資産や株式だけでなく、従業員も引き継ぎの対象となるケースがあります。売り手の従業員にとっては、評価方法や業務プロセスなどが根本的に異なる会社で、ある日を境に働く事態となります。 

まったく異なる環境での労働によりストレスが溜まりやすくなる上に、買い手の従業員との間で対立が生じやすくなります。最悪の場合には、それが理由で売り手から引き継いだ従業員が大量に離職してしまう事態になり得ます。

買い手にとって売り手から引き継ぐ従業員は、優れたノウハウや技術を持つ戦力であり、収益の源泉です。大量に離職されてしまうと当初の目的を果たせなくなり、スモールM&Aに費やした費用や時間が無駄になりかねません。 

そのような事態を回避するためには、あらかじめ自社での働き方や評価制度を伝えておくことで、入社後の不満を減らしておくのがベストです。もしくは、前と同じような環境で働けるように制度設計し、ストレスを溜めにくくするのも効果的でしょう。

スモールM&Aの成功事例10選

最後に、スモールM&Aの成功事例を10つほど紹介します。実際にスモールM&Aを実施したいと考えている方は、ぜひ各事例からヒントを得ていただければと思います。 

※スモールM&Aのほとんどは非上場企業が関与している関係もあり、取引金額は公表されていないのでご注意ください。 

マルカキカイによる北九金物工業の買収

産業機械の専門商社であるマルカキカイ(現社名:マルカ)は、製造業工場向け機械工具などを販売する北九金物工業の全株式を取得し、子会社化しました。2017年に行われたこのスモールM&Aは、山口地域への販路拡大や海外展開を目的に行われました。[9]

当該M&Aを行った2017年以降、マルカキカイの売上高・営業利益は共に増加傾向となっています。あらゆる要因が絡むため一概には言えないものの、スモールM&Aによる販路拡大は一定以上の効果をもたらしていると考えられます。[10]

 

[9]北九金物工具株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ(マルカキカイ株式会社)
[10]2019年11月期決算説明会(株式会社マルカ) 

オーエム産業によるシンセーの買収

次に紹介するのは、電子部品や自動車部品などのめっき加工を行うオーエム産業によるスモールM&Aの事例です。岡山県に所在地を置く同社では、石川県に所在地がある同業会社「シンセー」を買収しました。 

こちらのスモールM&Aでは、定年退職を除いて売り手(シンセー)から引き継いだ従業員の離職者が1人も出ていない上に、営業基盤やノウハウの維持にも成功しています。M&A後の経営統合が成功した背景には、下記2つの理由があると考えられます。[11]

  •   シンセー社長に引き続き買い手の会長として残ってもらい、現場のバックアップをお願いした
  •   買い手(オーエム)社長からシンセー従業員に対して、これまでと変わらない形で仕事を続けてもらう旨を直接伝えた

つまり、買い手経営者が売り手経営者や従業員の考え方を尊重したことが、トラブルのないスモールM&Aを成功させた秘訣であると言えます。

 

[11]M&Aに取り組む中小企業の実態と課題 2 オーエム産業株式会社(日本政策金融公庫 総合研究所) 

株式会社Clearによる川勇商店の買収

次に、ベンチャー企業と老舗中小企業によるスモールM&Aの事例をご紹介します。

20187月に日本酒専用のメディアサイトを運営するClearは、1965年に創業された老舗酒屋である川勇商店の全株式を買収し、子会社化しました。このスモールM&Aは、売り手が持つ「酒類小売業免許」の取得を主な目的として行われました。

従来より、Clearは、酒造メーカーとのネットワークやお酒に関する深い知見を活かし、Eコマースを使った小売業への新規参入を検討していました。酒類小売業免許を持つ川勇商店を買収することで、同社は品目や地域などの制限なく、Eコマースで酒類を販売できるようになりました。

 必要な経営資源の取得により、新規事業の立ち上げをスムーズに行えた点で、こちらのスモールM&Aはモデルケースともいえる成功事例でしょう。[12]

 

[12]日本酒ベンチャーの株式会社Clearが、創業50年超の老舗酒販店を買収。「高価格日本酒」に特化したEコマースで小売業に参入へ(PR TIMES) 

有村紙工によるベル・トップの買収

長年の取引先とスモールM&Aを行った事例として、有村紙工によるベル・トップの買収をご紹介します。買い手の有村紙工は、段ボールケースや紙器を製造する会社です。一方で売り手のベル・トップは、引越し用段ボールや引越し関連材料の販売を行う会社であり、有村紙工にとって長年の取引先でした。 

そんな両社がスモールM&Aを行ったのは、売り手経営者が病気にかかり、買い手に対して事業の引き継ぎを打診したことが理由です。両社の事業内容に関連性があったことで、買い手の営業ノウハウでも問題なく売り手の事業に対応できたとのことです。また、買い手から売り手企業に派遣した所長が30代と若かったおかげで、当初の想定以上に取引の拡大や組織の若返りを実現できました。

 こうしたメリットにより、ベル・トップの業績は大幅に改善し、3期目で債務超過を解消することに成功しました。[13]

 

[13]M&Aに取り組む中小企業の実態と課題 5 株式会社有村紙工(日本政策金融公庫 総合研究所) 

株式会社ミチによる丸井織物への事業譲渡

次に、一部の事業のみを売却した事例として、株式会社ミチと丸井織物のスモールM&Aの事例をご紹介します。

こちらのスモールM&Aでは、売り手である株式会社ミチが運営するネイルチップ販売サイト「ミチネイル」の事業が、合繊織物メーカーである丸井織物株式会社に譲渡されました。買い手である丸井織物は、自社が運営しているオリジナルTシャツ制作サービス事業と、ミチネイルの間でシナジー効果を得る目的でスモールM&Aの実施に踏み切りました。[14]

丸井織物による徹底的なコストカットが功を奏し、わずか2ヶ月で利益率が15%から40%にまで改善されました。一方で売り手のミチネイルとしても、事業規模が大きい丸井織物の傘下に入ったことで、豊富な経営資源の活用により、サービスの多角化や既存事業の拡大といった可能性が拡大したとのことです。[15]

まさに、売り手と買い手の双方にとってWin-WinであるスモールM&Aの事例と言えるでしょう。

 

[14]丸井織物株式会社、ネイルチップ販売サイト「ミチネイル」を事業譲受(丸井織物株式会社)
[15]シナジーを生むM&Aによって買い手企業と売り手企業の双方がWin-Winの関係に(BIZREACH SUCCEED) 

株式会社PoliPoliによる毎日新聞への事業譲渡

次に、大学生が大手企業へのスモールM&Aを果たした事例として、株式会社PoliPoliによる毎日新聞への事業譲渡をご紹介します。 

譲渡対象となったのは、売り手(PoliPoli)の代表伊藤氏が個人的に作っていた「俳句てふてふ」というサービスです。俳句てふてふは、俳句を気軽に投稿できるSNSであり、AppStoreで「俳句」と検索すると、最も上位に表示されるなど、当時から着実に拡大していたサービスでした。

 そんな同サービスがスモールM&Aに至った経緯は、偶然このサービスが毎日新聞の俳句事業担当者に発見されたことが発端でした。従来より毎日新聞は、「毎日俳壇」などの俳句に関係したコンテンツを長年提供しており、俳句界での人脈や資本を豊富に持っていました。そうした背景から同サービスを新規事業として進めたいと考えた毎日新聞と、他のサービスに集中したいと考えていたPoliPoliの思惑が合致したことから、見事スモールM&Aに至った形です。

たとえ大学生が個人開発した事業であっても、買い手のニーズを満たせばM&Aの実施を達成できる、ということが理解できる事例です。[16]

 

[16]PoliPoliが俳句のSNSアプリ「俳句てふてふ」を毎日新聞社に事業譲渡(PR TIMES) 

株式会社Choiseeによる事業譲渡

次に紹介する株式会社Choiseeによる事業譲渡は、1人で運営する情報サイトの売却を果たしたスモールM&Aの事例です。 

同社は、2016年から運営していたIT系オウンドメディアの売却に成功しました。スモールM&Aの決め手となったのは、ITのジャンルに特化していたサイトで専門性が高かったことです。案件の募集から2ヶ月足らずという早さで、リモートの交渉のみで、かつ納得いく値段によるM&Aを果たせたとのことです。 

リモートでの交渉でメディアサイトの売却に成功したこの事例は、1人でスモールM&Aを目指す上では非常に参考となるでしょう。[17]

 

[17]1人で運営していたIT系情報サイトの売却益を、新規事業の準備資金に。交渉から契約までリモートで完結(BIZREACH SUCCEED) 

株式会社LIGによるWebサービスの事業譲渡

次に紹介するのは、Webサイトやコンテンツ制作、英会話スクールなど、経営の多角化を図っている株式会社LIGによるスモールM&Aの事例です。

同社は、埼玉県のIT企業に対して事業者と旅行者をマッチングするWebサービスを売却しました。成長性が高い事業ではあったものの、運用できるだけのリソースが不足していたことから、スモールM&Aの実施に踏み切ったとのことです。

買い手がIT領域に関して豊富に知識を持っていたこと、偶然買い手の行いたい領域のサービスであったことなどが功を奏し、なんとわずか1時間の面談でスモールM&Aの実施が決まりました。

売り手と買い手の双方にとってメリットが大きい事例だったために、短時間での成約につながったと考えられます。[18]

 

[18]すぐ譲渡を考えていない企業も”活用しない理由はない”(BIZREACH SUCCEED) 

美容室3店舗の売却

珍しいケースとして、家業を継ぐ目的で自身が経営する事業を売却したスモールM&Aの事例をご紹介します。

元々売り手は、3店舗の美容室を経営しており、順調に利益を生み出していました。事業は順調にいっていたものの、父親から家業を継ぐように打診されたことで、プロ経営者に美容室事業の売却を行う選択肢を選んだとのことです。

 「新しい美容室を作ってもらいたい」という理念に共感を得られたことに加えて、事業が成長しているタイミングでスモールM&Aの実施に踏み切ったことが、売却に成功した最たる理由であると考えられます。

 

[19]父親の会社を継ぐために美容院を異業種の東証一部上場企業に譲渡 プロ経営者に引き継いだ想いとは(BIZREACH SUCCEED) 

廃業を機に和菓子製造会社が事業譲渡を行った事例

最後に、経営難と後継者不足を理由に廃業する予定だった会社が、無事に事業譲渡を果たしたスモールM&Aの事例をご紹介します。

売り手の木村製菓は、和菓子の製造を行っていた会社でした。M&Aの直前、同社は後継者不足や経営難(最盛期に1億円あった売上が半減していた)を理由に、廃業を検討していました。ところが、長い関係の取引先が「伝統ある会社の廃業は忍びない」と考え、事業の引き取りを表明してくれたとのことです。 

買い手の宮野食品工業所は、交渉過程から売り手経営者や社員とのコミュニケーションを積極的に行いました。その甲斐もあり、事業に対する考え方が異なる会社同士によるM&Aであったものの、無事買収後の経営統合を果たしました。また、和菓子を作る製造拠点や和菓子作りの技術など、希少な経営資源を獲得し、和菓子事業を軌道に載せることに成功したとのことです。

 一方で売り手としても、従業員の雇用を維持できた点や、伝統ある事業を残せた点でメリットが大きかったと推察できます。

 こちらの成功事例からは、後継者不足や経営難などの理由で廃業するような会社でも、スモールM&Aにより事業を存続できることが理解できるでしょう。[20]

 

[20]M&Aに取り組む中小企業の実態と課題 7 株式会社宮野食品工業所(日本政策金融公庫 総合研究所)

新着記事