マッチングプラットフォーム運営会社がWebメディアをM&A。事業成長のスピードを高める「M&A経営」が常識に

  • 譲渡
    株式会社GEAR
    事業概要:ウェブサイト・メディアの運営、SEO事業 
    本社所在地:東京都
    従業員数:10名
    譲渡理由:自社事業の選択と集中のため
    事業譲渡
    譲り受け
    株式会社ラグザス・クリエイト
    事業概要: マッチングプラットフォーム事業
    本社所在地: 大阪府
    従業員数:80名
    譲り受け理由:新規事業の開始、既存事業の拡大・強化
  • IT
  • 東京都
  • 大阪府
  • Webメディア

M&Aの認識が広まるにつれて経営者の意識も変わりつつあります。「M&Aされることは自社への高い評価の表れである」「自分で創った会社や事業の価値を高め譲渡することで利益をあげる」。今回ご紹介するのは、このようなM&Aに対する新たな思考をベースにして成功したITベンチャー同士の成約事例です。株式会社GEARが運営するウェブサイト売買プラットフォームに成長性を感じたのは、中古車売買のプラットフォーム「カーネクスト」で知られる株式会社ラグザス・クリエイトでした。魅力ある事業を早い段階で見つけ出しさらに成長させるM&Aは、双方にとって大きなプラスをもたらしました。株式会社ラグザス・クリエイト取締役COO 阿部薫氏と株式会GEAR代表取締役 有薗隼人氏に話を聞きます。

 

新規領域に向け速度感をもってM&Aを展

――今回は成長するITベンチャー同士のM&Aです。

ラグザス・クリエイト阿部 ラグザス・クリエイトの事業ミッションの一つが「業界構造を変える、新たなマーケットプレイスを!」です。メイン事業はインターネットでの中古車・廃車売買プラットフォーム「カーネクスト」です。自動車流通においてイノベーションを起こした事業です。その後、同様に音楽業界に新風を吹き込んだのが、音楽レッスンのマッチングプラットフォームです。他に車や音楽に関連するネットメディア事業を展開しています。

 

GEAR 有薗 弊社はウェブサイト・メディア運営が中心事業です。SEOやリスティング広告などネットでの集客を得意としています。複数のサイト・メディアを運営していますが、なかでもユーザーからの申し込み数が月間約1万件を得ている比較サイトが最大の事業になります。婚活メディアも好調で、その延長線上で結婚相談所も運営しています。

 

――ラグザス・クリエイト様は「M&A経営」を会社の大きな戦略に据えていますね。

阿部 事業領域の拡張のために積極的に「M&A経営」に取り組んでいます。M&Aは2年ほど前から始め、譲り受けは小規模の事業を含めすでに十数件の実績がありますが、対外的に大きくその方針を打ち出したのは半年前からです。これまで「カーネクスト」が当社の屋台骨でしたが、さらに会社を成長させるために、自動車領域・音楽領域・新規領域と全方位に向け速度感をもってM&Aを展開しています。

 

事業を成長させてくれる企業を見つけ積極的に譲

――「M&A経営」に確信を持った理由をお聞かせください。

阿部 これまでのM&Aで積み重ねた体験から、成功する案件や状況がわかってきたことがあります。二つのM&Aの成功体験をお話しします。一つ目が自動車総合プラットフォームの「KuruTown(クルタウン)」です。「カーネクスト」からの垂直展開です。車の売買の知見は持っていたわけですが、それ以外の車検や整備・修理、名義変更等の手続きなどの領域は未開拓でした。そこで車関連を一気通貫できるプラットフォームに注目し、それらを網羅的に扱っていた「KuruTown」を譲り受けさせていただきました。シナジー効果が高く、成功を導いてくれました。

もう一つは「OrientusNavi(オリエンタスナビ)」という音楽の総合プラットフォームの譲り受けです。「カーネクスト」でネットにおけるマッチング事業のノウハウを培ったことから、それを別の業界で横展開したものです。スピード感のある展開となりました。

 

 

 

――成長が見込める事業をGEAR様は譲渡しました。

有薗 ウェブサイト・メディア運営では、作るところから成長したものを譲渡するまでを業務としてきました。これまでの売買取引の実績は200件以上になります。ラグザス・クリエイト様に譲渡したM&Aプラットフォームは、実はもっと価値を高められるポテンシャルがありました。しかし運営する人員がまかなえず、「もったいないことをしている」という忸怩たる思いを抱いていました。「このサイトを成長させてくれる企業様があれば、手元に置いておくよりいい」と考え、事業譲渡を決めました。

自分たちの手で作り出したサイトは我が子のようなものです。価値が生み出せるはずなのに「できない」というのは、サイトに対して失礼だという気持ちがあります。一方、運営する金融系の比較サイトが好調なため、それを今後の成長計画の中心に置くことにしました。事業譲渡は選択と集中という観点からの判断でもありました。

 

ビズリーチが運営母体のビズリーチ・サクシードには信頼感があ

――ビズリーチ・サクシードのどこに魅力を感じられたのでしょうか?

阿部 一番は信頼感です。譲渡する側も子どものように育てた事業を手放すわけですし、譲り受けする側も安くないお金を払って引き継ぎます。その間に入るM&Aプラットフォームは何よりも信頼感が大事です。ビズリーチが運営母体であるビズリーチ・サクシードには、ゆるぎのない安心感があります。

 

有薗 社会的信用のある会社が登録している。規模感のある買い手が登録している。その二つが最大の魅力です。ラグザス・クリエイト様に譲渡したのはウェブサイト・メディアのM&Aに特化したプラットフォームのため、私自身で直接、買い手や投資家と交渉することもできたと思います。しかし弊社のウェブサイト・メディアの売買では個人の方や2〜3人規模の小さな会社が多く、選択肢が狭くなる可能性がありました。

 

――契約成立まで1カ月もかからなかったそうですね。

阿部 M&Aプラットフォームのメリットの一つは速さです。やりとりのほとんどはビズリーチ・サクシード内のメッセージ機能で完結しました。有薗様とはオンライン面談のみで、直接お会いしていませんが、気になったことがあるとすぐに回答してくださったので全く不安はありませんでした。事業の全てを共有いただいたため、運営のイメージをすぐにつかむことができました。

 

有薗 譲渡事業はほぼ私一人で運営していたため、私がどれだけリソースを割くかで売上が変動したり、ソフト面で完璧にできていない部分もありましたが、隠さずにお伝えしました。事業を譲渡して終わりではなく、これを機に会社同士のおつきあいを深めさせていただく。そんな意識でお話をさせていただきました。

 

――事業譲渡を関係性強化のきっかけにしたとも言えますね。

有薗 虚偽や粉飾はいつか明るみになります。これまでにトラブルに発展した企業も見てきました。お互いに気持ちの良い契約にするために、すべてを正直にお伝えしました。

 

小さく育ててM&Aで大きく資金調達す

――引き継いだ事業を今後、どう発展させていきますか?

阿部 GEAR様が「もったいないことをしている」と考えていた箇所をすぐに最適化していく予定です。その後、中期的に当社のマッチングノウハウやマーケティングノウハウを加えて、シナジー効果を出していきます。

売り手、買い手ともにいかにWin-Winを提供するか、そこにマッチングプラットフォームの核心があります。サイトを売りたいユーザーがいないと何も始まりません。売りたい人へのアプローチをまず強化し、次に売り手と買い手が満足できる機能を追加していく予定です。

 

――M&A経営における次の一手を教えてください。

阿部 目指しているのは、業界構造を変える新たなマーケットプレイスの創造です。「車で一番になる」という方向性ではありません。従ってM&A経営の対象はオールジャンルになります。今回のようにご縁があれば、新規領域でも積極的にM&Aしていくつもりです。

 

 

 

――今回のようなM&Aは日本の中小企業を活性化させそうです。

有薗 弊社では数千万円規模の事業譲渡を何回か成立させてきました。「小さく育てて、M&Aで大きく資金調達する」。得た資金で次のビジネスを短期間で展開できるわけですから、時間を買うことと同じと言えます。M&Aは経営における有効な方法の一つだと考えてみてはいかがでしょうか。

 

――事業・会社譲渡に後ろ向きのイメージを持つ人もまだいますが、違うのですね。

有薗 それは古い考えです。ネガティブに考える要素はどこにもありません。事業を一人で創って6億円で売却した知人もいます。今やM&Aはウェブ業界ではスタンダードになっています。

 

阿部 とにかくスピード感が、現代のビジネスでは何よりも大切です。M&Aによって10年かかることを数カ月や数年で一気にできるのは、経営に大きなメリットをもたらします。有薗様がおっしゃるように「時間をお金で買う」という考え方がM&Aには非常に大切です。自分の想いと作り手の想いを大切にすれば、いいM&A案件に巡り会えるはずです。他社とコラボレーションするという感覚が、より大事な時代になっていくのではないでしょうか。