金融システム開発会社が、非金融システム開発会社をM&Aし、事業拡大

  • 譲渡
    株式会社コウイクス
    事業概要:システム開発及びインフラ構築 
    本社所在地:東京都
    従業員数:11名
    譲渡理由:代表者の引退
    株式譲渡
    譲り受け
    株式会社SDアドバイザーズ
    事業概要:金融システム開発 
    本社所在地:東京都
    従業員数:14名
    譲り受け理由:売上・市場シェア拡大
  • 情報通信
  • 東京都
  • 金融

優れた技術や強みを持ちながらも、市場の縮小や後継者不在で存続が困難になっている中小企業が数多くあります。そんな中、システム開発の株式会社SDアドバイザーズは、複数の優れた会社をM&Aでグループ化し、各社のブランドを維持しつつ弱みを補完する仕組みを作ることで、グループ全体を強靭化、活性化することに成功しています。2020年7月には、同じシステム開発の株式会社コウイクスをM&Aし、グループはさらに未来に向けて発展することとなりました。その端緒となるマッチングでは、ビズリーチ・サクシードが重要な役割を果たしました。コロナ禍を生き残るためにM&A経営はどのような意味を持つのでしょうか? SDアドバイザーズ代表取締役の高木 栄児 氏と株式会社コウイクス代表取締役社長の小迫 清則 氏に話を聞きます。

 

高いメリット、シナジー効果が見込める同業種間のM&A

――システム開発という点では同業種間でのM&Aと言えますね。

SDアドバイザーズ 高木 SDアドバイザーズでは、証券会社のプロのディーラー向けのサービスなど主に金融に特化したシステム開発、支援を行っています。そのほかに、自社で企画・開発し、販売している金融サービスもあります。

 

コウイクス 小迫 私たちもシステム開発を主な業務としています。開発系とインフラ系がほぼ半々の割合です。

 

――2020年7月に事業承継及び資本業務提携を締結されました。

小迫 弊社は今年で創業37年になります。創業オーナー兼社長が高齢のため、5年ほど前から事業承継の話が前社長とナンバー2であった私との間で懸案となっていました。しかし前社長の引き継ぎのスタイルが口伝えだったため、経営における重要事項の引き継ぎがうまく進みませんでした。文書化が難しく、前社長が話をする様子をビデオで撮ったりもしていました。

 

高木 そこまでされていたのですね。いま初めて聞きました。

 

小迫 前社長の頭の中には会社のすべてが入っているのですが、私の理解がなかなかついていかない。それ以上に時間が圧倒的に足りませんでした。2年前には「この1年間は集中して引き継ぎをやる」と決めたのですが、今度は私の技術者としての取引先での仕事が忙しくなってしまって・・・。そうこうしているうちに、前社長の奥様が体調を崩され介護が必要になり、引き継ぎが中断してしまったんです。家庭も会社も大変。これ以上社内での事業承継は厳しいだろうという雰囲気になってきました。そんな時、前社長が友人から「M&Aという方法もあるよ」という話を耳にします。そこでM&Aが選択肢のひとつとして浮上してきました。

 

――小迫様はM&Aと聞いた時、納得されたのですか?

小迫 最初は拒否しました。本当にM&Aをしなければならない状況なのかという疑問があったからです。ほかのやりかたを模索しましたが、一方で前社長の家庭の状況は変わりません。「なんとかM&Aで解決したい」。前社長から強く依願され、3回目にようやく「わかりました」と承諾しました。3回目は断らないと決めていたんです。このままの状態で時間をかけても、会社が余計に悪い方向に流れていくだろうと気持ちを切り替えました。

 

――SDアドバイザーズがコウイクスを譲り受けたいと考えた理由を教えてください。

高木 「複数の会社の強みを融合させてグループ全体で成長させる」。私たちの経営戦略のひとつです。しかしいろいろな会社をM&Aすればいいというわけではありません。そこには束ねて強くするための軸が必要です。

エンジニア出身の私がまず2008年に創業したのが、金融に特化したシステム開発のSDアドバイザーズです。そこを起点として「システム開発の全領域を網羅する」という目標をたてました。システム開発では大きく、上流工程(要件定義と設計)と下流工程(開発とテスト)の二つに分かれます。その工程を縦軸としました。横軸には金融と非金融を位置付けました。SDアドバイザーズは上流工程から下流工程の金融の領域に含まれることになります。

次に図式の中の空白部分をM&Aで埋めていきます。まずコウイクスの前に譲り受けたのが、ITコンサルティングの株式会社オーシャン・コンサルティング(2016年)です。まさに上流を専門とする会社です。そうすると非金融の下流工程という領域が残ります。そのピースを埋めたいという思いがずっとありました。コウイクスがグループ入りしてくれたことで、全領域がようやく埋まったのです。創業に思い描いた風景が完成したという感慨があります。

 

――M&Aをする前に、まず自分たちで会社を作ってそのピースを埋めようとしたとうかがいました。

高木 うまくいきませんでした。一から作るのは相当に大変だということを実感しました。SDアドバイザーズはできたのですが、2社目はダメで潰してしまいました。オーシャン・コンサルティングという実績もあったので、M&Aという方法を選ぶことにしました。

 

ビズリーチ・サクシードは案件が豊富で質が高い。掲載企業の規模感も重要なポイン

――ビズリーチ・サクシードを利用した理由を教えてください。

高木 M&Aアドバイザーに声をかけたり、いくつかのM&Aプラットフォームを活用したり、ありとあらゆるものにアンテナを張っていました。そのうちのひとつがビズリーチ・サクシードだったんです。そこでコウイクスを見つけることができました。掲載された会社説明の文面を読んだ時、「まさに求めている会社だ!」と気分が高まったことを覚えています。うちの会社と雰囲気が似ている、これは相性がよさそうだと直感しました。

 

――ビズリーチ・サクシード利用のメリットは何ですか?

高木 案件が豊富で質が高い。この二つは群を抜いています。冷やかしみたいな会社は掲載されていません。一定のレベルをクリアした会社のみが厳選されている印象です。

もうひとつ大きいのは、私たちの会社の規模感にあっている点です。一口にM&Aと言っても、大企業やグローバル企業が行うものから個店のやりとりまで規模の大小があります。私たちのような中小企業が目指す案件がなければ意味がありません。身の丈を考えないと、いたずらに手間とお金がかかってしまいます。加えて、手数料が極めてリーズナブルです。大手のM&A仲介会社では最低でも千万円単位であることが多いですから、私たちの企業サイズとは相入れません。

 

――コウイクス様はなぜビズリーチ・サクシードを利用したのですか?

小迫 弊社の税務顧問をお願いしている会社からの紹介でした。時間と手間を勘案して、その会社に提出する資料もお任せしましたが、随時報告を受けていました。

 

――書類審査が通って、その後直接対面することになります。

高木 前社長のご家族がご病気だと聞いていましたので、大変そうだとすぐにわかりました。一方、次期社長の小迫さんは紳士だと感じました。一緒に仕事をする上でやはり人柄は重要です。すごく安心しました。

 

小迫 手を上げてくれたさまざまな会社の方と直接お会いして話をしました。単に技術者が欲しいということが透けて見える会社もありました。そのなかで、SDアドバイザーズがしっかりとした構想――会社を譲り受けて共に成長する――をお持ちであることを強く感じました。

 

PMI(経営統合作業)のポイントは、社員に安心してもらい、ゆっくり変えていくこ

――PMI(経営統合作業)が順調に進んでいるそうですね。

高木 PMIでは何が重要なのか? 1回目のM&Aで私だけでなくバックオフィスの社員も含めてそのノウハウを体得したことが大きかったです。今回、思った以上に早くうまくいったと思います。

 

――どんなところにポイントを置かれたのでしょうか。

高木 何よりもコウイクスの社員に安心してもらうことです。SDアドバイザーズの方針を無理やり押し付けるようなことはしません。これまでと特に何も変わらない、もし変える場合は必ず良い方向に改善することを伝えました。必要最小限のところから時間をかけて納得してもらいながらゆっくり変えていくことにしています。最終的には、グループ全体として会社の仕組みは同じにしたい。効率化しないといけないからです。けれども急ぐことはしません。

 

――改善する点は見えてきましたか?

高木 正直に言うと、コウイクスでは非効率な部分が多く見受けられました。社内のIT環境がそんなに整備されていませんでした。コミュニケーションツールや勤怠管理、給与、経費などのバックオフィス的なところは、SDアドバイザーズの社内システムに参加してもらい、効率化を計っています。

 

――職人集団によくある「紺屋の白袴」ですね。

小迫 交通費の精算も手書きで提出し現金で支払っていました。ITという最先端の仕事をしながら、社内の仕組みはずっとアナログだったんです。それが今回のグループ入りでデジタル化され、社員からは「やっと普通の会社になれた」と喜ばれています。すごくよくなったと皆が実感しています。

 

――グループ入りしたことで社員にどんな良い影響が生まれたでしょうか。

小迫 まず社員の意識が向上したように感じています。これまでは「会社にいさえすれば仕事はある」という状況でした。その反面、自分のやりたいことが言い出せない雰囲気があったと思います。でもグループ入りして、社内の雰囲気が大きく変わりました。「自分もできるんじゃないか」という意識が芽生えています。仕事柄、お客様先に常駐していることが多いため、会社もそういった機会を作っていませんでした。でも今は自分が声に出せば、それを聞いてくれるという環境がある。これはやりがいにつながるはずです。

 

高木 「自発的にことを起こす」。その意識を持ってもらえる仕組みを作っていきたい。私はエンジニア出身なのでエンジニアの気持ちはよくわかります。彼らはいろいろと話を聞いてもらいたいのだと思います。自分も振り返ってそういう場があればいいなと思っていました。

 

コロナ禍で中小企業が生き残るための「M&A経営」:お互いの強みを生かしながら効率

――中小企業がどうやって生き残るのか? それがコロナ禍における日本の課題です。その解法のひとつがM&Aだと言われています。

高木 「私たちはクライアントに選ばれる理由を持たないといけない」。いつも社員に言っている言葉です。衰退傾向にある日本の産業の中で勝ち残るためには、わかりやすく明確な強みを持たなければならないのです。

私は「強みを持つ会社=中小企業」だと思っています。会社は往々にして大きくなると強みがぼやけてしまいがちです。シナジーのある強みを持った中小が集まってグループ化することで大きくなる――それが今の日本で成長できる決め手だと信じています。

中小企業は生産性が低いとよく言われます。特に間接部門が非効率になりがちです。しかしお互い強みを生かしながらグループ化するなかでバックオフィスを共通化できれば、効率化できる余地が生まれます。それが企業の生産性向上につなげられるのではないでしょうか。

 

――M&Aを検討している経営者の皆さんに伝えたいことはありますか。

高木 衰退する日本で中小企業が生き残るためには、ある程度の会社規模が必要です。M&Aはそのための有効な手立てです。ただし、規模の拡大を単純な足し算と考えないことです。強い部分を伸ばしながら非効率な部分を引き算していけば、本当の意味で「強い」企業として成長していけると思います。

 

小迫 「塵も積もれば山となる」という諺があります。しかし、塵が積もって山となるところを私は見たことはありません。噴火が起きて山ができるように、物事が変わる時には爆発的なエネルギーが必要です。今回のM&Aでは、最初のうちはすごく悩みましたが、とにかくやってみよう、なんでもやってみようと腹を決めました。噴火しないと山はできない。そこで生じるエネルギーこそが、会社にとって大事なのだと思います。