後継者不在のシステム会社とIT企業が、地域を超えて即日に出会う【M&A成功事例】

  • 譲渡
    企業:株式会社ENCOM
    事業概要:ITシステム開発
    本社所在地:広島県
    従業員数:17名
    譲渡理由:後継者不在のため
    株式譲渡
    譲り受け
    企業:株式会社アイティエルホールディングス
    事業概要:IT企業(子会社10社を有する)
    本社所在地:東京都
    グループ従業員数合計:150名以上
    譲り受け理由:事業拡大のため

広島県に拠点を置くITシステム開発会社の株式会社ENCOMは、後継者不在という課題を抱えており、第三者への承継を検討して広島県事業引継ぎ支援センターに相談しました。しかし、地元の企業とのマッチングは叶わず、M&Aアドバイザリーのタナベ経営を紹介。タナベ経営がビズリーチ・サクシードにENCOMの情報を登録すると、即日に東京に本社を置く株式会社アイティエルホールディングスから連絡があり、コロナ禍でも約3ヶ月での成約につながりました。グループ会社として従業員の雇用を維持でき、広島県企業として存続できることになった今回の成約事例について、譲渡企業であるENCOM代表取締役社長 濱﨑 誠治氏、譲り受け企業であるアイティエルホールディングス代表取締役社長 佐々井 文吉氏、広島県事業引継ぎ支援センターの林 秀明氏とタナベ経営の小野 樹氏に話を伺いました。

 

地元企業とのマッチングには限界を感じた3年

――ENCOMは今回、どのような経緯でM&Aを検討されたのかを教えてください。

濱﨑(ENCOM) 私が高齢になり、これ以上経営を続けるのは難しいため後継者を探し始めました。私には息子がいるのですが、彼からは継がないという意思表示をされたので、外部から経営者候補を探して入社してもらいましたが、それもうまくいかなかったんですね。

そこで、今から約3年前に広島県事業引継ぎ支援センターにM&Aの相談に行きました。地元の企業から同業者を5社、異業者を4社紹介してもらったのですが、当時、当社の経営状態があまり良くなかったので結果的に同業者からはお断りされてしまうことに。

一方、異業者の場合は、その事業やカルチャーなどに当社の社員がうまく融合できるかどうかが大きな課題になります。提示された条件は良かったのですが、社員のことを考えて4社とも辞退したので、結局、譲り先企業は見つかりませんでした。

 

林(広島県事業引継ぎ支援センター) 広島県事業引継ぎ支援センターは、譲渡企業と譲り受け企業のマッチングを地元の企業同士で検討し、ENCOMの濱﨑社長には譲り受けたい企業からのいろいろな質問に丁寧にご対応いただいていたのですが、結局ご縁がありませんでした。

約2年半の時間が過ぎ、地元企業とのマッチングに限界を感じたので、従来からつながりのあったM&Aアドバイザリー会社のタナベ経営に力を貸していただこうとご相談しました。

 

――広島県事業引継ぎ支援センターから相談があって、タナベ経営の小野さんはENCOMの印象をどう感じましたか?

小野(タナベ経営) 広島県事業引継ぎ支援センターからENCOMの財務状況が芳しくないことは聞いていましたが、若い技術者が複数いらっしゃることを知って、ビズリーチ・サクシードを活用すれば間違いなくお相手が見つかると思いました。

そこですぐに広島に行って濱崎社長にお会いし、その後ビズリーチ・サクシードでの掲載を開始。すると即日、東京に本社を置くアイティエルホールディングスからのコンタクトがあり、翌週にはアイティエルホールディングスのM&A担当者と面談をして、その翌月には基本合意書締結前提でのトップ面談を実施しました。

同業者や異業者など10社近い問い合わせをいただき、複数社と面談を行いましたが、最終的にはアイティエルホールディングスとの個別交渉となりました。

 

さまざまなシナジーを出せるIT企業と3ヶ月で成

――アイティエルホールディングスはENCOMのどこに魅力を感じましたか?

佐々井(アイティエル) 募集ページに、「さまざまな分野のシステム・アプリ開発実績がある。勤続10年以上の経験豊富なエンジニアが多数在籍している」と書かれていることを当社のM&Aの担当者から報告され、この会社の社長は社員を大切にしていると感じてすぐにアプローチしました。

弊社はインフラ系のシステム開発会社が4社、さまざまな事業を展開する事業会社が6社の合計10社をグループ会社に持っています。ここにENCOMが加われば、その技術力の高さがインフラ系の会社とシナジーを生みますし、自社開発されているシステムを展開すれば事業会社も進化できます。

特に倉庫や流通系のソフトウエアの会社や、地方自治体のソフトウエア開発をしている会社とのシナジー効果は明確に描けましたし、10社のすべてと接点が持てると思いました。

何より勤続10年以上の技術者がたくさん在籍しているのは素晴らしいことで、ENCOMの文化を尊重したM&Aを実施したいと思いました。

 

――勤続10年以上の技術者が多数在籍しているのはすごいです。濱崎社長は人を大事にする経営をされてきたのでしょうか?

濱崎(ENCOM) IT系の仕事は労働集約型なので、人を大切にしない会社がやるべきではないと考えて経営を続けてきました。

今回アイティエルホールディングスの佐々井社長とお会いして、さまざまな事業を展開されているグループ会社10社といろいろなシナジー効果を生み出せそうだと思いました。現在の仕事をそのまま継続するだけではなく、グループ会社とコラボレーションできれば当社の社員に夢を持たせることにつながります。

さらに、これまでは自社だけでは新しい人材の確保が難しかったのですが、アイティエルホールディングスの力を借りれば人員増大も実現できるのではないかと思いましたね。

 

――最初のコンタクトから成約までは2020年の7月中旬から10月の約3ヶ月と聞きました。スムーズに進んだように思いますが、難しかった点はありましたか?

小野(タナベ経営) 私が過去に経験したM&Aに比べると、かなりスムーズで特に難しい点はありませんでした。

スムーズに進めることができた要因の一つで、Webの活用が大きかったと思います。

私は大阪でアイティエルホールディングスのM&A担当者が福岡、ENCOMの濱﨑社長は広島と、各社の拠点に距離はありましたが、コロナ禍ということもありWeb会議などオンラインでのコミュニケーションを多用しました。

特に、M&Aという重要な話の場合、オンラインではなく面と向かって対話したいと言われる方が多いのですが、濱﨑社長の柔軟な対応が3ヶ月での成約につながりました。

 

広島県企業として存続しながらM&Aによる成長戦略を描

――ENCOMをグループ会社に迎え、アイティエルホールディングスは今後どのような展望を描いているのかを教えてください。

佐々井(アイティエル) 進めているのは、プラットフォーム構想です。グループ横断でさまざまなサービスや製品をプラットフォーム上に並べたいと考えているので、そこに参画いただく企業をM&Aで急速に増やしたいと考えています。

それを実現させるための戦略が連邦経営です。それぞれの会社が自治権を持って専門に特化し、我々はそのための支援をしていく。ENCOMも自治権を持って独自の文化を守りながら強みを発揮し、アイティエルホールディングスの資産を活用いただきたいと考えています。

濱﨑(ENCOM) 引退しようと思って3年が経ちましたが、安心できる譲り先が見つかって本当に良かったと思っています。アイティエルホールディングスの力強いバックアップがあれば拡大できると思いますし、何より自治権を持てるのは社員にとっても安心材料になるはずです。

 

 

 

――広島県事業引継ぎ支援センターは、今後どのような展開を考えていますか?

林(広島県事業引継ぎ支援センター) 広島県事業引き継ぎ支援センターは2014年に立ち上げて以来、黒字企業が廃業に陥らないよう、地元企業とのきめ細かなマッチングを実施してきました。

県外企業とのM&Aで吸収合併をすると、たとえば広島県の企業が東京の企業の支店になってしまい、従業員の配置異動などが発生する懸念がありました。でも今回、広島のENCOMが東京のアイティエルホールディングスのグループ会社になったことで、広島県企業として大きく体制を変えずに存続できることになりました。

こうした、ヒト・モノを維持したマッチングが県外企業と実現できる事例ができたので、今後は地元企業が難しければ、ビズリーチ・サクシードを活用して全国でマッチング先を見つけたいと考えています。

 

M&Aプラットフォームの活用は経営者の選択肢を増や

――最後に、タナベ経営の小野さんから、今後の見通しとM&Aを検討される企業へのメッセージをお願いします。

小野(タナベ経営) 今回の新型コロナウイルス感染症の影響は、中長期的な経営を考えるきっかけになるので、今後ますます買い手企業と売り手企業の双方が増えると思っています。そのとき、最適なM&Aを支えるのは、ビズリーチ・サクシードのような中立的なM&Aプラットフォームだと思うんですね。

というのも、M&Aアドバイザリー会社のビジネスモデルを考えると、まずは企業内で情報を独占したいので、相談を受けたアドバイザリー会社が持つ限定的なネットワーク内でのマッチングをしがちだからです。でも、M&Aプラットフォームを活用すれば、地域や事業などに縛られず、譲渡企業の選択肢を大幅に増やすことにつながります。

実際、タナベ経営とアイティエルホールディングスとの接点はありませんでしたが、ビズリーチ・サクシードを活用したことで出会えましたし、お話を聞くと濱﨑社長の考えや意向にとてもマッチしていました。

譲渡企業にとって選択肢を増やすのはとてもいいことなので、我々のようなM&Aアドバイザリー会社や広島県事業引継ぎ支援センターのような公的機関はもちろんのこと、自前でM&Aを検討されている企業もM&Aプラットフォームを活用したM&Aがスタンダードになればいいなと思っています。